ロッキード事件  田中角栄 と アメリカの対ソ軍事戦略 (つづき)



つづき



§9 丸紅とロッキード社と21億円



丸紅の航空機課長補佐(当時,逮捕された大久保利春社長の意を受けて,コーチャンとの交渉にあたっていた)坂篁一(こういち)は,次のような重要な発言をしている。坂は,これまでの40年間,口を閉ざして何も語らなかったが,この度,NHKの取材に応じて重い口を開いた。

国産では,丸紅にはひとつも口銭(仲介の手数料)が入らない。丸紅を通せば,巨万の富がはいる。1兆円の取引だから。

田中にわたったとされた5億円は,丸紅自身が提案したことによる。

即ち,5億円は,P3C の導入のためだった。


田中角栄に渡ったとされた5億円には,P3C売り込みの目的があったと初めて証言した坂篁一は,

巨額の金が飛び交う軍用機ビジネスの不条理な世界を次のように語っている。



森の中のオバケ対策をしながら活動をするというのはくたびれる。

決まりかけが一番怖い。魑魅魍魎・オバケが暴れだすのは決まりかけだ。
 


蛇足ながら:


ちみ‐もうりょう【魑魅魍魎】

山の怪物や川の怪物。さまざまのばけもの。
[岩波広辞苑第六版]








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アメリカの砂漠地帯にある軍用機の墓場。

役目を終えた200機を超すP3C が放置されている。この部分の画像は,なんとも不気味である。



§10 疑獄事件に対する日本政府の対応



海部俊樹(当時,三木内閣の副官房長官,後に総理大臣)の証言



三木首相は,徹底的に真相を究明して,国民の前に疑惑を明らかにしようとしていた。成功すれば,国民の人気が得られる絶好の機会だったからね。

そこまでやらんでもいいという意見が多かったけども,先輩議員が心配して俺のところに飛んできて,「俊チャン 親父さん(三木首相)に言いなさい。外国の資料までもらって国内の悪を見せる必要はない。

捜査を止める 「指揮権」 を発動すればそれで終わりじゃないか,それをヤレ。



ひどい話だね。


蛇足ながら

しき‐けん【指揮権】
法務大臣が,検察事務および犯罪捜査について検察官を一般に指揮監督する権限。個々の事件の取調べまたは処分については,検事総長を通じてのみ行使できる。「― 発動」
[岩波広辞苑第六版]



インターネットで見ると,造船疑獄事件について,次のように書かれているよ。


造船疑獄(ぞうせんぎごく)とは,第二次世界大戦後の日本における計画造船における利子軽減のための「外航船建造利子補給法」制定請願をめぐる贈収賄事件。1954年1月に強制捜査が開始された。政界・財界・官僚の被疑者多数が逮捕され,当時の吉田茂内閣が倒れる発端となった事件の一つ。


東京地検特捜部による海運,造船業界幹部の逮捕から始まった捜査は政界・官僚におよび,捜査主任検事の河井信太郎による大野伴睦の取り調べからはじまり有田二郎ら国会議員4名の逮捕などを経てさらに発展する気配をみせた。

同年4月20日、検察庁は当時与党自由党幹事長であった佐藤栄作を収賄容疑により逮捕する方針を決定した。

しかし,翌4月21日,犬養健法務大臣は重要法案(防衛庁設置法案と自衛隊法案)の審議中を理由に検察庁法第14条による指揮権を発動し,佐藤藤佐検事総長に逮捕中止と任意捜査を指示し,直後に法務大臣は辞任した。後任法務大臣の加藤鐐五郎は「4月21日の法相指示は国会閉会とももに自然消滅する」と佐藤検事総長に通知している。


佐藤栄作日記によると佐藤栄作は当初は指揮権発動を中々行わない犬養法相を罷免にして,新法相に指揮権発動させるよう吉田首相に要求していたという。

後に犬養は『文藝春秋』1960年5月号に,「指揮権発動により法務・検察幹部を軒並み引責辞任させ,意中の男を検事総長に据えようという某政治家と検察幹部の思惑があった」とする手記を寄せている。




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情けないことに,今も昔も,何も変わってないね。


佐藤栄作は,当時,エイチャン とよばれたいなんて言っていたんだ。孤独な男だったんだね。

その佐藤が,1974年,ノーベル平和賞を受賞するんだ。平和外交への貢献が評価されてね。ところが間違いだということが後でわかったんだ。ことの顛末については,前にブログ ノルウエー・オスロへの道 2016年ノーベル平和賞の行方 に書いたから読んで下さい。



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海部の証言に戻るよ。

解明が出来なかったことが多かったのは残念だと思っています。

軍用機まで関連が持たれると,(事件の)質が変わるから,はっきりいうと我々の手の及ばない所だった







§11 アメリカの軍事戦略と巨大な金の闇


駐日アメリカ大使 ジェームス・ホッジソンがワシントンに送った極秘文書の一部:


疑惑の政府高官名や証拠を探る情報戦の舞台は,今ワシントンに移っている。ワシントンでこれ以上の情報が発覚しなければ,この問題をすぐに沈静化させることは可能だ。このままうまくけば,ダメージは日本側の閣僚ら数人の辞任だけで済むだろう。

日本の検察の捜査がこれ以上進めば,ロッキード事件によってこれまで進めてきた P3C の導入がすべて台無しになってしまう。深刻な事態だ。今の時点でとり得る最善の方針は,P3C に関して極力目立たないようにしていくことだ。

アメリカ政府にはこの件に関して,慎重に考えることを望みたい。我々の考えでは,名前が公表されれば,日本の政界は大騒動になり,我々はその状態を制御できなくなるだろう。

最善の方法は,アメリカ政府が,疑惑の政府高官名が入った資料の引き渡しを可能な限り遅らせることだ。

・・・・・

もし三木首相の求めに応じて資料をすべて渡していれば,政治的な同盟さえも失っていたかもしれない




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NHKの番組は,次の言葉で締めくくられている。

この軍用機をめぐる日米の思惑の端に,ロッキード事件の知られざる真実が横たわっていた。田中角栄逮捕という熱狂の陰に埋もれていった軍事と金の巨大な闇,そこから浮かび上がってきたのは,真実を覆い隠していく国家の姿だった。


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これまで書いてきたことを,一言でまとめると,要するに,アメリカさんにやりたい放題にやられたということですよ。今に始まったことではないけどね。

日本は,「有志連合」の一員として,アメリカにノコノコ付いていっていると,いつの間にか,金どころか,人命から何から何まで,アメリカにむしりとられるよ。河童がお尻から手を突っ込んで,何もかも抜き取ってしまうようにね。

安倍総理大臣に,お考えを聞きたいもんだね。ついでに,先人の言葉も思い出してほしいね。



子曰 温故而知新 可以為師矣      
論語 為政第二 ー 十一


子曰 学而不思則罔 思而不学則殆
論語 為政第二 ー 十五





§12 付言



 NHKの番組では,田中角栄の他に,複数存在するとみられる政府高官の名前が,故意に(?)に伏せられている。ご存命の方々に対する配慮かもしれない。

例えば,ロッキード・グラマン事件に関する証言:

田中角栄の名前記されているが,角栄以外の個所に「ぼかし」が入っている。


 重要な証言については,必ず,別の情報源を挙げている。それによって,番組で使われている資料の信憑性が高まると思う。

 この記事に出てくる金額は,すべて,1970年代の初めの額である点に留意してほしい。





未完

by yojiarata | 2016-08-23 22:10 | Comments(0)
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