ご隠居さん。此の所,ご隠居さんのブログを見てなんだけど,どうなっているの?高齢化が進んで,やる気がなくなってきたの。書くの止めるの。 ブログを止めるなんて,とんでもない。これぞ超後期高齢者の生きがいの一つですよ。私は私なりのやり方で書くから,一週間や二週間では終わらないことが多いんだよ。変に,凝るからね。 情報収集のため,連れ合いを国会図書館に派遣したり,いろいろ,時間がかかるんですよ。 それで,今回は何が始まるの? これまでに書いたブログの記事のコピーを眺めているうちに,何やら,怒りのようなものがこみ上げてきたんだ。 ここで取り上げるのは,ロッキード事件です。もう40年も前のことだから,君は実感がないだろうと思うけど。 国のあり方を金の問題から議論できる題材だから,君にも是非読んで,考えてほしいのです。 §1 戦争と金 砂糖に群がる蟻のような 死の商人 テレビのおかげで,戦争ご画像として捉えられる時代になったよね。 例えば,中東の戦争を見ると,物凄い勢いで,大砲を打っているでしょう。兵隊が,弾を取り出しては,大砲につめて,撃っているよ。 あの弾は,一個,幾らくらいするんだろうと考え始めたんだ。まさか,1個100円てことはないよね。見たところ,大変立派だから,10万円くらいはするような気がするよ。そうすると,何分かの間に,大砲一台で何百万円くらいはかかる勘定になるよ。 戦争は,お金がかかるね。逆に言えば,金儲けのために 死の商人 が ウヨウヨ集まってくるよ。 蛇足になるかも知れないけど,辞書には次のように書いてあるよ。 し‐の‐しょうにん【死の商人】 軍需品を製造・販売して巨利を得る大資本を指していう語。 [岩波広辞苑第六版] ところで,元祖・死の商人は,君は誰だと思う? 19世紀の末にダイナマイトを発明して巨万の富を得たスエーデンのアルフレッド・ノーベル(1833-1896)ですよ。様々な大規模工事に使われたため,社会的に大変な貢献をしたんだけど,その後,戦争に大々的に使われることになり,第1次世界大戦で数えられない数を命が失われたんだ。ノーベル賞は,一種の贖罪のような気もするね。 これまで,死の商人については,このブログに何度も書いてきたよ。君も覚えているでしょう? その中の一つを挙げておくよ。安全保障関連法案と死の商人を,念入りに読んで下さい。 1976年7月27日,元内閣総理大臣・田中角栄が逮捕されてから,はや40年が経過したけど,今,田中角栄のカリスマ性を再評価する声が高まり,空前の角栄ブームだそうだね。 今年だけでも,22冊も出版されているそうだよ。 石原慎太郎『天才』(幻冬舎,2016) は,100万部に達する大ベストセラーだと聞くよ。幻冬舎の取締役社長の見城 徹(けんじょう とおる)によると,角栄の本は,どう転んでも,必ず売れるんだそうだよ。 地方で中小企業を経営している人たちの中に「今,角栄がいれば,自分たちの地方はこんなに疲弊することはなかったはずだ。アベノミックスは駄目だ」と言っている人たちが少なくないようだよ。 角栄は,良くも悪くも面白い男だからね。 石原慎太郎の『天才』などの著書の他に,角栄に関する評論のような記事もたくさん発行されているよ。 私がこれまでに目にした最近の関連の記事を2,3編 拾い出してみるよ。 ● 週刊朝日8月5日,18-23ページ(2016) ロッキード事件から40年 米極秘公文書でわかった今太閤の「評価」 米国に嫌われた宰相 田中角栄の孤独 ● 朝日新聞 DIGITAL 新ポリティカにっぽん なぜ今? 『角栄ブーム』8月2日(2016) 1976年当時は非公開だった米国政府の内部文書も,ここ十数年で随分と秘密指定が解除された。それらを見ると,米国の高官が田中さんをとても嫌ったいたことはよく分かる。日本への対応を話し合う内部の会議で「信じられないウソだ」「一貫した政策がない」などと非難した記録が残っている。 ● 朝日新聞・朝刊第2面 2016年8月15日,8月16日 文体,ルビなどからいって,中学生,高校生向け? いちからわかる! 8月15日 ロッキード事件で逮捕 田中角栄元首相って? 米航空機メーカーから賄賂。40年の節目に人気が復活 8月16日 ロッキード事件40年 何か分かってきたの? 「田中首相はウソつき」。米高官の発言などが明らかに §2 ロッキード事件の闇 40年目のスクープ 角栄の最大の汚点であるロッキード事件は,真相が解明されないまま,多くの謎を残して,闇の中に消えたんだ。 2016年7月22日,23日,24日の3日連続で,NHKは,【未解決事件シリーズ】の一環として,ロッキード事件を放送しました。特に,第3話は,粘り強い取材を重ねた力作です。ご存命の100名を超える日米の関係者に新たに取材したそうだよ。 この番組を見て,日本の政界・財界をめぐる金をめぐる様々な出来事について,是非とも書いておきたくなったんだ。 §3 日米間の死の商人の鬩ぎ合い ロッキード事件に関していえば,闘いは,1970年に始まり,1972年にピークを迎えたんだ。田中角栄逮捕のずっと前のことだよ。時間を追って整理しておくよ。 1970年 佐藤栄作総理(当時)の指示により,対潜水艦哨戒機の国産化計画 1972年7月 田中角栄内閣誕生 田中内閣の誕生は,奇しくも,ロッキード社による対潜水艦哨戒機 P3C , 早期哨戒機 E3C の日本への売り込み工作の始まった時期なんだ。 対潜水艦哨戒機 P3C , 早期哨戒機 E3C 何れも1機 100億円もする極めて高価な航空機です。 8月 丸紅商事 田中邸を訪問 1976年7月27日 ロッキード事件で田中角栄・元首相逮捕 ロッキード社から5億円を賄賂として受け取ったとして,田中角栄・元首相が逮捕されたのは,1976年のことだから,政界・財界の連中がロッキード社から受け取った金の分配に現を抜かしていた頃から,随分日が経っていたけどね。 §4 東京地検特捜部の捜査 東京地検特捜部の主任検事・吉永祐介の下で動いた検事たちは,3本のルートを追っていたんだ。 ① 田中角栄逮捕の罪状は,民間航空機トライスターの購入を丸紅商事経由で購入するにあたって,5億円を賄賂として受け取ったこと(丸紅ルート) ② 全日空がトライスターの購入をきめ,その結果,2億円が複数の政府高官にばらまかれた(全日空ルート) ③ 別に,21億円の金の行方が未解明のまま終わった。(児玉誉士夫ルート) 児玉誉士夫ルートには,大きな謎が残されたまま,疑惑の解明に至らなかった。 1972年 児玉誉士夫もさる者,自らが関与した事件の関連書類を秘書に命じて償却,証拠隠滅を図っている。 1976年7月27年,田中角栄が逮捕されたとき,私は偶々テレビを見ていたんだ。当時の防衛大臣・中曽根康弘の顔が忘れられないんだ。政治家の顔は,あとで編集して,テレビで見るものだけど,その時は,何故か,現場の顔が映っていたんだ。驚いたというようなものじゃなかったね。顔がその瞬間,ゆがんで青ざめたんじゃないかね。40年たった今でも,田中逮捕というと,中曽根の顔を思い出すんだ。田中と中曽根がどんな関係にあったかは,わたしにはわからないよ。 ただし,テレビの映像に映った三木内閣の閣議の映像を見ると,三木総理のすぐ左側に,中曽根が座っているよ。当時から重鎮だったんだね。 田中は逮捕された1972年には,総理の座を三木武夫に譲っていたんだけど,民間航空機・トライスターの導入にあたって,丸紅商事から,5億円の賄賂を受けたことが罪状だったんだ。総理大臣が逮捕されるのは,日本の憲政史上初めてのことだよ。1審,2審を経て,田中総理の有罪が確定した。 §5 航空機の日本への売り込み ロッキード社は,当時,ニクソン大統領が政治的地盤とするカリフォルニアに本社を置き,ニクソンはロッキード社から巨額の政治献金を受けていたんだ。 もう一つ重要な点は,ベトナム戦争の終結により, 死の商人 としてのロッキード社は赤字経営に陥り,経済的存亡の危機の直面することになり,困り果てたロッキード社が,ニクソンに泣きついて,起死回生の一手として,P3C を日本を売り込むことになった。 売り込み先の最大のターゲットとして,日本はロッキード社にとって最重要な商売相手だったからね。 ところが,日本では,当時,対潜水艦哨戒機の国産化のために10億1千万円が,計上されていたんだ。 その時点で,アメリカは強引な手を打ってきたよ。 当時のアメリカ大統領ニクソンは,1972年8月31日,ハワイで田中と会談し,日本が対潜水艦哨戒機 P3C を購入するように迫ったんだ。東西冷戦のため,世界の海に,ソ連(当時)の潜水艦が頻繁に出没していたんだ。なにしろ,アメリカ,ソ連の冷戦の最中だからね 対潜水艦哨戒機 P3C は,ソ連の潜水艦を探索するためにロッキード社が開発した軍用機です。後で書くけど,日本はこれまでに100機を購入し続け,1兆円を支払ったんだからね。 P3C 対潜水艦哨戒機 ロッキード・マーティン社(当時は,ロッキード社) ロッキード・マーチン社は,アメリカ屈指の軍事産業(死の商人)であり,彼らにとって,P3C の売り込みの相手として,日本が最も重要だったんだ。 日本への売り込みは,ロッキード社長のアーチボールド・コーチャン自らが担当していた。NHKが取材を始めたときには,コーチャンはすでに他界していたため,直接の証言はとれていないんだけれど,事件を追っていた東京地検特捜部の主任検事・吉永祐介が保管していた秘密メモに,コーチャンが P3C について語った文書が残されている。 コーチャンの嘱託尋問にあたった特捜部検事の 堀田力(82)は,次のように語っている。 【 ロッキード事件の核心は,P3Cではなかったかと,今でも考えている。しかし,すべては深い闇の中に消えた。 事件の核心は物凄い深い闇だと感じている。 国民のために,事件の全容の全容解明に至らなかったのは悔しい。 ただし,日本の大きな政治・経済の背後で,蠢く闇に1本の光が入ったことは間違いない。】 これに加えて,日本からの依頼を受けたアメリカ議会の嘱託尋問が行われた公聴会の記録も残されている。 そこに,児玉誉士夫の役割は,P3C の導入を,日本政府に働きかけることであるとの記述がある。ただし,この事実はアメリカでは事件化されなかったので,一部の人にしか知られていない。 §6 アメリカの本音 ニクソンは,P3C,E2C を日本に売るべきだと強く主張している。具体的には, 8月31日 ニクソン,田中の両者が,ハワイで直接会談したんだ。テレビの映像をみると,ニクソン自身が空港に出迎えているよ。これは,いささか異例のことじゃないだろうかね。アメリカの意図が垣間見えるよ。そこには,コーチャンが夫人とともに映っているよ。(これは,同夫人のドレスの色と柄から見た小生の推測です。) 10月 角栄・ニクソンのハワイ会談の直後,田中角栄は帰国と共に,対潜水艦哨戒機の国産化計画は白紙に戻すと発表された。 これには,日本の航空産業界は驚愕したよ。 国産機の航空機装備開発を担当していた海上自衛隊の中島又雄(92)は,その驚きを次のように語っている。 【 角栄がハワイから帰ったら,途端にこれ(国産化中止)だったでしょう。 「えっ」と思ったわけです。 我々はもう本当頭の中ぶん殴られたというか面目なかった。白紙還元になれば今まで何のために金使ったんだという 開発中のやつをやめさせるということは一国の宰相しかできません。防衛大臣くらいじゃできないと思う。】 ニクソン政権の動き ニクソン政権で国防長官を務めていたメルビン・レアードがNHKの電話取材に応じているよ。彼は,防衛長官の中曽根にアメリカから軍用機を購入するよう迫ったというんだ。結局,中曽根とは,話が付かなかったようだけど。 日本に売る機種の選定に関しては,国家安全保障担当補佐官(当時)リチャード・アレンの証言がある。 ニクソン政権の中枢にあったリチャード・アレンのインタビューの声と映像が時間をかけて再現されています。テレビの映像をみると,でっぷり太った貫禄十分の男だね。 彼は,ニクソン,キッシンジャー補佐官に助言する立場にあり,両者の会談の席に居合わせていた。1972年,毎日,ノートを書き,ニクソンとキッシンジャーの密談を克明に書き残している。 アレンの証言。 【 日本の金で我々の軍事力を増大することが一番の狙いでした。】 あとで,アレンの証言をもっと詳しく書くけれど,その前に,児玉誉士夫(こだま よしお)のことを書いておかねばならない。 児玉誉士夫は,日本の右翼運動家。CIAエージェントであったという。暴力団・錦政会顧問。「昭和の妖怪」,「政財界の黒幕」,「フィクサー」と呼ばれた。1960年、生前葬を行う。河野一郎や大野伴睦といった大物政治家が児玉のための葬儀に集まり,焼香したという。 児玉誉士夫 京城商業専門学校,日本大学皇道学院卒業(1911年2月18日 - 1984年1月17日(享年73) 児玉誉士夫の役割は,ロッキード社の秘密代理人として,P3C の日本への導入を政府関係者に働きかけることだった。 1970年の初頭には,すでに,田中に対する賄賂は,民間航空機トライスターではなく,対潜水艦哨戒機 P3C であるとする疑惑が持ち上がっていたんだ。 ところが,日本からの要請により,アメリカから渡された資料には,P3Cに関する記述は全くなかったんだ。 §7 ロッキード社社長 アーチボールド・コーチャンと児玉誉士夫 コーチャンは,日本への工作を児玉誉士夫に託していた。 児玉誉士夫を通じて情報工作を行っていたコーチャンは,次のように語っている。 児玉は私の【 国務省 】でした。 児玉の役割は,P3Cの導入を政府関係者に働き掛けることだった。 ここで,話はちょっと飛ぶんだけど,日本の政界,財界の金をめぐる動きについて,ダグラス・グラマン事件のことを書いておくよ。 §8 ダグラス・グラマン事件 1978年 特捜部は,E2C(早期警戒機,ダグラス・グラマン社)の購入についても重大な関心を持って捜査していた。 特捜部・宗像紀夫(元検事)は,日商岩井常務の島田三敬(みつひろ)の取り調べにあたった。取り調べを受けていた島田は,明日はもっと具体的なことを証言すると言い残して,その夜,ビルから飛び降り,命を絶った。宗像検事宛に遺書が残されていた。 遺書には,日本の大きな政治・経済の背後に金が飛び交う政界と財界に対する激しい憤りが綴られていたという。 田中の後を継いだ三木総理のメモが見つかっているよ。 その中に, 田中 確 の一行がある。三木総理は知っていたんだね。三木はまた,田中と P3C に関する資料を,アメリカ側に熱心に請求していたんだ。田中と違って,政治基盤の脆弱だった三木にとって,自らの力を国民に誇示する絶好の機会だったんだ。 ロッキード事件にアメリカ政府の軍事戦略が関係していることを明らかにしたリチャード・アレンの証言 【 日本が我々の軍用機を購入すれば,私たちは,懐を痛めることなく,日本の金で我々の軍事力を増大することができます。加えて,私たちが望んでいた日本の軍事的役割の強化にもつながるのです。】 さらに,田中と何度となく交渉し,田中を知り尽くしているアレンは次のように語る。 【 田中は,日本語で言うしたたか者,英語で言えば,タフガイ でした。】 ● 駐日大使ジェームス・ホッジソン 彼は大使として日本に着任する直前まで,ロッキード社の副社長だったそうだよ。何だか変だね。変というか,無茶苦茶な人事だね。大使の決定にあたっては,外務省が「アグレマン」なるものを出すはずだけどね。つまり,この人事は,日本政府が同意していたことになるよ。 ● 航空機の墓場 1977年から2016年までの間に,P3C100機が導入された。総額1兆円をロッキード社に支払い,世界第2位のP3C保有国になったんだけど,・・・ アメリカは今や,P3Cの代わりに新しい機種を導入し,日本は世界第一位のP3C保有国になったようだよ。何だか変だね。要するに,アメリカに良いように利用されているだけなんだよ。番組の最後に出る「航空機の墓場」のシーンは,ショッキングですよ。
by yojiarata
| 2016-08-23 22:13
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