生命 と ミネラル   亜鉛の役割を例として考える




今回も,政治とは無縁の,真面目な話をします。


私の手元に,友人の原口紘炁 ひろき 博士が執筆された『生命と金属の世界』(日本放送出版協会,放送大学教材 1869299-1-0511,2008年2月20日,第3刷)があります。


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原口紘炁博士が,放送大学(ラジオ)で講義をされた時のテキストで,大変な力作です。

今回は,私が,私なりに理解した点のうち,その一部をこのブログで,原口紘炁博士との対談に再編集して,ここに掲載します。



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荒田


初めに,人間と金属のかかわりについて,ごく簡単にお話しいただけませんか。


原口


人間は,生活の中で,さまざまな金属を利用してきました。石器文明の後に青銅器文明,鉄器文明とよばれる文明が誕生し,武器や農耕器具,生活用品に利用されました。古くから,金,銀,銅などは装飾品に用いられてきました。


荒田


歴史とともに,金属が辿った変遷について,まとめてください。


原口


図1は,ギリシャ時代(A)と中世の錬金術の時代(B)に使われていた元素の記号です。


【図1】

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荒田


カワイイというか,面白いですね。



原口


続いて,元素が発見された年代をまとめておきます。


【表1】

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原口



人間は古代から,金(Au),銀(Ag),銅(Cu),水銀(Hg),鉛(Pb),鉄(Fe),亜鉛(Zn)などの金属を利用していました。


荒田


次に,人間の体内にある元素についてお話しいたけますか。


原口


人体に多く存在する元素を,常量元素とよびます。正確に言えば,「常量元素」とは,人体中の存在量が 0.01% より多い元素です。


【表2】

【常量元素の体内存在量と機能】

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荒田


ヒトの健康には,金属元素が深く関わっていると理解しています。この点について,説明をお願いします。

とくに,ここでは,亜鉛について詳しく知りたいのですが。


原口



元素の過剰症と欠乏症




生命活動を円滑に保つには,体内に元素が,過不足なく,バランスよく,分布していなければなりません。


【表3】 に,元素の機能と,欠乏症および過剰症の例を示します。

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荒田


それでは,亜鉛欠乏症について,詳しくお話し下さいませんか。


原口


微量の亜鉛の存在が,人の健康な生命活動にいかに重要であるかを説明します。


【表4】 には,亜鉛の働きと欠乏症についてまとめてあります。


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生体内亜鉛の働きと欠乏症について


代表的な機能は,酵素活性の補因子として,タンパク質代謝,脂質代謝,糖代謝,核酸の代謝(DNA合成,RNA合成),細胞分裂の制御(細胞代謝)といったように,生体内の物質の合成,代謝,そして機能発現のほとんどに深くかかわっていることです。


欠乏症の典型的な例としては,味覚障害があります。味覚障害は,舌の表面にある味覚センサーである(みらい)の細胞代謝の問題です。すなわち,亜鉛欠乏になると,細胞代謝機能が低下し,味蕾細胞の新陳代謝が起こりにくくなり,いつまでも古い味蕾細胞で味を感じますので,味覚に対する感度が悪くなり,味に対する感覚が弱くなるのです。


DNA,RNAの合成酵素は,亜鉛酵素です。すなわち,生体内に亜鉛が欠乏すると,遺伝子レベルで致命的な障害を生じる可能性があります。また,亜鉛欠乏は易感染症(病原性細菌やウイルスによる病気に感染し易い)も引き起こすといわれています。その他,亜鉛欠乏症として矮小発育症(小人症),腸性肢端皮膚炎,脱毛症などが挙げられます。


医学部のある先生の話では,東京都内のある女子大の学生の食事を調べたところ,亜鉛の一日摂取量が7-8ミリグラムであったとのことです。亜鉛の一日摂取量の基準は15ミリグラムですから,これでは明らかに亜鉛欠乏症になってしまいます。ダイエットしていると,知らず知らずのうちに亜鉛欠乏症になるのではないでしょうか。


若い間は何とか体力を維持できても,歳をとってからの健康が心配です。最近,若年性の子宮内膜症が増えていると聞きます。子宮内膜症も細胞代謝の問題ですから,もしかすると,亜鉛欠乏と関係があるかもしれません。



荒田


ご協力,誠に有難うございました。





未完

by yojiarata | 2015-10-18 17:21
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