理化学研究所  その実像と虚像  巻の五






タンパク 3000プロジェクト  遺産と戦後処理




2007年のプロジェクト終了と共に,私が蛋白質 核酸 酵素 (2008年 4月号)の特集号に書いたように,このプロジェクトに雇われていた多くの優秀な研究者が,路頭に彷徨うホームレスになってしまいました。


理事長やプロジェクトのリーダーは,職がないのは,貴殿の才能が無いからだと開き直ることは容易に想像できます。だけど,職探しがいかに大変か。大学などの公募では,1件当たり 最低100人の応募があるといいますからね。

  

NMR御殿は,プロジェクトの進行当時は,門外不出,関係者以外の者が手を出しそうになると,装置に触るなとすごまれていました。装置の部屋に行ってみると,何もしていない装置も少なくなかった記憶があります。


インドなどの発展途上国なども,共同研究に強い興味をもっていましたけれど,みんな断わられたようです。そのため,理研の御殿は,外国では,ジョークの材料にされました。私も,この場にいて,恥ずかしい思いをした記憶があります。



ついでに言うと,最近,日本版 N I H なる詞を新聞で見かけるようになりました。創薬について研究すると言えば,役人への殺し文句になります。こんなことを言いだした役人,官僚たちは,あの世界に冠たる N I H のことを何も知らないんじゃないでしょうか。


創薬のための研究所は,四,五年前に,名古屋大学の附置研究所としてスタートしています。それに,今度のN I Hの一件はどうつながっているんでしょうね。管轄の省庁が違うのでしょうか?


創薬,創薬と言うけど,言うこととそれを実行することは,全く別物ですからね。


以前, 大手製薬会社の元・副社長との対談記事 をこのブログに書きましたから,よかったら読んでください。


とにかく,如何にも,旧態依然としたわが日本に起こっている珍事の一つではないでしょうか。



湯水のように金を使う もったいないの概念の欠如


汲々として研究費を集めなくてよいぶん,お金の有難さが分らないんですよ。オフィッスを移転する時,家具でもなんでも廃棄処分にするんです。これには驚きましたね。無論,理事長以下の理研の重鎮方は何もご存じないことです。

だけど あれもこれもれも国民の税金ですからね。怒り心頭です。



ノア の箱舟・症候群


終りに付け加えておきたいことがあります。最近の若手研究者は,Nature などの有名国際誌に論文を載せることに熱中しているね。これこそが,自分を世界で認めさせる道だと信じきっているんです。つまり,切磋琢磨して自分を磨くのではなく,有名誌こそが, ノア の 箱舟 だと信じているんでしょうね。[ ⇒ 旧約聖書 創世記 第6章 ]


発想の順序が逆なんですよ。良い仕事だから Nature に載るのであって,載ったからといって良い仕事は限らないのです。小保方事件がよい例ですよ。


ちなみに,南方熊楠は,Nature に50件iを超える数の論文を掲載しています。100年も前のことですけどね。南方熊楠が遺した著作を読むと,真の国際化とは何かが分りますよ。南方熊楠 のことは,以前,このブログに詳しく書きましたから,ぜひ読んで下さい。



夢のあとに



タンパク 3000プロジェクトは,その後,どうなったか


現在,次のような組織に生まれ変わっています。



国立研究開発法人 理化学研究所


ライフサイエンス技術基盤研究センター

構造・合成生物学部門 NMR施設

施設長 前田秀明




国立研究開発法人 理化学研究所(理研)横浜キャンパスのNMR施設は,平成9年に稼働を開始した大型放射光施設 SPring-8 との連携による,我が国における構造生物学研究の中核的研究拠点(COE)としての「構造生物学研究センター」 構築のもとに建設・整備が進められ,平成12年に開設されました。現在では,900MHz をはじめとした高性能NMR装置10台を共用する世界最大規模のNMR 集積施設となっています。


本施設では,これらのNMR装置群と関連機器・設備を有機的に連携させ,タンパク質の試料の調製から立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン」を整備してきました。


平成19年度からは,これらの成果とそれを達成する過程で蓄積された経験・知識・ノウハウを広く社会に還元していくため,理化学研究所以外の利用者にも本施設を開放し,利用していただくことになりました。


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よかったですね。あの頃は門外不出であった” 箱入り娘 ” は,今や,使用料さえ払えば,だれでも利用できるようになり,大変,役に立っているようです。多少なりとも,日本の研究者に恩返しが出来ますからね。



追記

「大型放射光施設 SPring-8」  に関しては,2011年7月のブログに,宮野雅司さんとの対談記事を掲載しましたので,興味のある方は参照して下さい。SPring-8 は,国内外の研究者に広く利用されています。



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2011年の秋に,横浜で国際会議が開かれました。私は,その冒頭で,それまでに日本のNMR研究の要約する講演をするよう,招待を受けました。

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その時,この話題を抜きにしては,講演を終わることが出来ないと述べ,次の画像を使いました。NMRのセンターは,外観が何とも美しいので,私は ” NMR御殿 ” とよんでいました。ご覧いただければ,私の意図を理解していただけると思います。


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NMR御殿 と 松尾芭蕉







つづく

by yojiarata | 2015-04-18 23:52
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