理化学研究所  その実像と虚像  巻の六



ご隠居さん この「巻の六」は,何が載っているのでしょうか。


野依良治・理化学研究所・理事長(当時)宛ての書簡です。簡易書留で送りましたので,ゴミ箱に行く前に,チラッとは眺めていただいたんじゃないでしょうか。勿論,お返事は戴いていません。

いま讀みかえしてみても,数字の間違いなど散見されるものの,私の考えは現在も全く変わりません。

ここでは,基本的には,原文のまま再現します。ただし,読みやすいように,何か所かを青色・太字にしました。



野依良治・理化学研究所・理事長 宛ての書簡

2014年3月25日





理化学研究所理事長
野依良治先生




和田昭允・ゲノム科学センター所長の「アドバイザー」を務めていました荒田洋治です。


タンパク3000プロジェクト


タンパク3000プロジェクトの最中に,先生のオフィッスを訪れ,私見を述べさせていただきました。お忙しい先生は,きっと迷惑されたことと,今になって反省しています。

タンパク3000については,小生は次のように理解しています。


1) 10年以上に亘って,1000億円近い予算が投じられたこと。


2) 新しい成果は,何も出なかったこと。


3) 和田所長に,何度もこの点を指摘いたしましたが,答えはいつも 同じでした。和田所長はこうおっしゃいました。


自分は,タンパク質のNMRが全くわからない。

横山の運転する自動車が,

壁に激突して止まるのを見ているしかないのだよ。



*****

筆者後記 (平成27年4月16日)

赤木圭一郎やジェームズ・ディーンみたいですねと,茶茶を入れまししたが,話は通じませんでした。下下のことには,無関心のようでした,

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小生は,7年に亘って 和田昭允先生のアドバイザーを勤めましたので,理研における研究体制について,つぶさに観察することができました。


タンパク3000は,プロジェクトリーダー(横山博士),何人かの何人かのチームリーダーにすべてを任せるという形で研究が進行していました。形の上では,ノーベル賞受賞者であるビュートリッヒ博士を委員長とする「国際審査委員会」なるものをおいて,一年に一度,討論していました。小生も委員として出席して意見を述べる立場にいました。


ところが,ビュートリッヒ博士は,良くも悪くも,日本人の心情に通じ,また,和田所長との親交もあり,この委員会で,多くの委員が否定的な意見を述べたにもかかわらず,和田所長は,タンパク3000プロジェクトを可としました。あとで,個人的にビュートリッヒ博士に,どうして,思っていることを率直に話してくれなかったのだといったところ,和田のことも,理研の内部事情もよくわかっているからと,ニヤッと笑っていました。


このセンターには,当時最新鋭の装置が10台以上稼働し,高磁場装置を持たない国内外の研究者の垂涎の的でしたが,横山・プロジェクト・リーダーは,プロジェクトを最優先したいと全ての外部依頼を断ってしまいました。


鶴見のNMRセンターを訪れていただければ,巨費を投じた「兵どもが夢の跡」を御覧になれます。文科省から,適正に活用するように迫られているようですが,進歩の速いNMRのことですので,十年を経たNMRの利用に苦労しているようです。



ゲノム科学研究センター会議


週に一回,和田所長を議長とするGSC会議(小生も出席しました)では,研究とは無縁の,例えば,キャンパス内の自動車の制限速度を守るなど,サイエンスとは無関係のことが主な議題でした。


よく言えば,研究の独立性の重視,悪くいえば,暴走を止められないという体質の一端をつぶさに経験しました。


予算があまりにも潤沢でした。椅子でも何でも,オフィッスが引っ越すときなどには,廃棄するのには驚きました。



理研の研究体制に関する私見


結論を率直に申し上げます。個々の研究者がグループリーダー単位で,行動している研究の内容が,周りには,全くといってよいほど伝わっていません。多額の金額を投じて研究を行うには,組織の成り立ちがあまりにも脆弱です。それは,タンパク3000プロジェクトも含めて,その他の超高額の投資を伴う巨大プロジェクトに共通に言えるのではないでしょうか。STAP細胞のプロジェクトの場合には,世の中の大学などでは,常識的には,到底考えられない,億の単位の予算を使っておられたと理解しています。



*




STAP細胞に関する理研の中間報告のテレビで,理事長自ら出席され,深々と頭を下げておられるのを拝見し,いささか悲しくなりました。その時,理事長がおっしゃった言葉,「すべてを徹底的に鍛え直す」 をうかがい,光明を見出す思いがしました


ここまで書いてくると,思い出されるのは 勝海舟 の言葉です。


【・・・ おれが始めて亜米利加へ行って帰朝した時に,御老中から,「その方は一種の眼光を具えた人物であるから,さだめて異国へ渡りてから,何か目をつけたことあろう。つまびらかに言上せよ」 とのことであった。・・・・・ 再三再四問われるから,おれも,「さよう,少し目につきましたのは,亜米利加では,政府でも民間でも,およそ人の上に立つものは,皆その地位相応に怜悧でございます。この点ばかりは,全くわが国と反対のように思いまする」と言ったら,御老中が目を丸くして,「この無礼者控えおろう」 と叱ったっけ。ハハハハハ。】

高野澄(編訳)『勝海舟文言抄』(徳間書店,1974,238ページ)



個々の研究者,グループリーダー,チームリーダー,そして事務部の官僚に受け止めてほしい言葉です。


お忙しい先生と知りつつ,つい書いてしまいました。つまらない戯言とお感じの場合は,どうかご放念ください。


頓首再拝





荒田洋治



2008年,共立出版より,蛋白質 核酸 酵素 『タンパク 3000 プロジェクトの産んだもの』 と題する特集号が出版されました。小生は,第Ⅱ部 「プロジェクトに対するコメント」 に執筆を依頼されました。その部分のコ ピーを同封させていただきます。お読みいただけますと幸いです。







つづく
















































































by yojiarata | 2015-04-18 23:51 | Comments(0)
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