裁きは終わりぬ



ご隠居さん 今日は裁判を話題にするの。


何でも西洋の真似をする日本では,5年前に,裁判員制度による裁判が始まったよ。



***



裁判といえば,アンドレ・カイヤット ( Andre Cayatte ) 監督による1950年のフランス映画(英語版)


『裁きは終りぬ』 (Justice est faite)


が印象深いね。


カイヤット (1909-1989) は,フランスにおける裁判の問題に取り組み続けていた元弁護士で,多くの社会派作品を残しているよ。フランスでは,裁判といえば,陪審員制度による裁判を指すんだ。古くからおこなわれているよ。


陪審員制度と安楽死という二つの重い問題を描くこの作品は,ヴェネツィア国際映画祭,ベルリン国際映画祭でともにグランプリを受賞しているよ。




物語の粗筋



薬学研究所の所長代理であるエルザ は,所長であり彼女の愛人であったヴォードレモンが喉頭癌に苦しむのを見るに忍びなく,毒殺するんだ。


彼女を裁く安楽死の裁判。


選ばれた7名の陪審員は,それぞれ,家族の問題や男女関係などでまざまな個人的な問題を抱えている。それぞれの人物を,カイヤットは見事に描いているよ。そして,これら7名の陪審員と,被告エルザの間のやりとりを軸に,物語が緊迫した雰囲気の法廷で展開する。実際には,陪審員の個人的な事情と環境を最優先して,評決が下される結果になるんだ。


裁判で,エルザはヴォードレモンのたっての願いにより彼に安楽死の注射を打ったこと,しかし,エルザは,巨額の遺産を手にすることが分ったんだ。


そして評決。無罪3,有罪4のきわどい結果となり,エルザは5年の刑を受けることになる。


遺産獲得のための殺人なら軽すぎ,自由を犠牲にしても約束を守った安楽致死なら重すぎる。陪審員の決定は正しかったか。カイヤットは,人は人を裁けるのかと問いかけるよ。


“ ともあれ 裁きは終った ”


という,男性のナレーションとともに,エルザが法廷を後にするラスト・シーンは印象的だったよ。学生の頃,渋谷で見たんだけど,今に至るも忘れがたい映画だね。




*



裁判といえば, O.J.シンプソン の ストーカー殺人事件 を思い出すよ。


この事件では,陪審員の選定が,裁判の結果を左右したんだ。陪審員は,黒人8,中南米2,白人1,白人とインディアンの混血1の計12名。白人が優位のサンタ・モニカを避け,ロス・アンジェルスのダウンタウンにある裁判所が選ばれたそうです。こんなことが出来るんだね。


その結果,陪審員の全員一致で,無罪の評決がでたんだ。


しかし,その後,被害者の遺族が起こした民事裁判で,シンプソン氏はおそろしく高額の賠償金の支払いを命じられ,ビバリー・ヒルの豪邸などを失い,破産状態になったんだ。この時の陪審員は,白人9,黒人1,中南米1,黒人とアジアの混血1の12名です。

不思議だね。


*



裁判の例をもう一つ。こんどは,南アフリカの法廷です。


ロンドンのパラ リンピックで金メダルをとったピストりウス (南アフリカ) が,ガール・フレンドを射殺したとして裁判にかけられた裁判については,日本ではほとんで報じられていないようだけれど,西欧諸国では,人々の多大の関心を惹いているよ。ワイド・ショウ的と言えなくもないけど。

昨日の9月11日,高等裁判所で,判決が下されました。

その結果,

義足ランナーの ピストリウス被告,殺人では無罪

AFP=時事 9月11日(木) 21時16分配信

というニュースが流れ始めたよ。

この殺人では無罪 という件が重要なので覚えておいてください。


【AFP=時事】は,次のように伝えているよ。


南アフリカの首都プレトリアの高等裁判所で,判決文が読み上げられるのを涙を流しながら聞く両足義足のランナー,オスカー・ピストリウス被告 (2014年9月11日撮影)。


南アフリカで両足義足のランナー,オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告(27)が,恋人だった女性を射殺したとされる裁判の判決公判が11日,プレトリア(Pretoria)の裁判所で始まり,トコジール・マシパ(Thokozile Masipa)判事は最も重い殺人罪について無罪の判断を示した。


このうちの殺人罪について,マシパ判事は「状況は被告を計画的殺人で有罪とすることに合理的に疑いがないと明確に証明していない」と述べ,「総合的に証拠を考慮したうえで,被告に被害者を意図的に殺害する必要性は認めらない。故意の殺人についても同様だ」と無罪の理由を語った。


なお,ピストリウス被告は昨年2月,交際相手だったリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さん(当時29)を射殺したとして殺人罪1件と銃器取扱い違反の罪 3件で起訴されている。


裁判では引き続き,その他のより軽い罪状についての判決が言い渡される予定。ピストリウス被告は過失致死で有罪となる可能性も残っており,執行猶予付き判決,長期の禁錮刑などの量刑が言い渡されるか,無罪釈放もあり得る。


となっているんだ。裁判はまだ終わっていないんだよ。分りにくいね。


それと,” 野次馬” の私から見ると,常識的に考えてもいささか変なんだ。彼女は,お風呂場で撃たれて命を落としているんだよ。


9月13日のCNNの報道:


ピストリウス被告は有罪。罪名:culpable homicide 。


何のことか,分る? 辞書を引いてみてください。外国で裁判にかけられたら,全くお手上げだね。

この判決の結果,ピストリウス被告が実際にどのような刑を科せられるのは,まだ決まっていないんだよ。10月中には,量刑が言い渡されるそうだよ。



それともう一つ。裁判が,今回のように節目を迎えるたびに,テレビ (例えば,CNN) によって,中継されるんだ。今回も,CNNは,予定されていたすべての番組をキャンセルして,"Breaking News" として,延々と実況放送してました。ただし,ピストリウス被告と検察側,弁護側とのやりとりは,声だけで,姿は映っていません。


日本人の私から見ると,さまざま不思議な光景が画面に流されるよ。


日本では,法廷に傍聴に行かない限り,人が動いて,かつ音声が聞こえる裁判の様子なんて見ることができないからね。



*



1970年代の初め,アメリカ(カリフォルニア州)のスタンフォード大学に仕事で滞在していたんだけど,見るもの,聞くものの全てが珍しく,そうでなくても好奇心で走り回りやすい性格の私は,色んな人から,それはそれは沢山のことを教わりました。アメリカの裁判にも興味があり,聞きまわっていたところ,研究室のノーマさんが,ちょうど陪審員に選ばれて裁判に参加した後だったので,その時の資料をいただきました。



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陪審員に配布された小冊子





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最初のページの初めに書かれていること:

陪審員としての重要な職を務めることを,あなたに要請します。

陪審員に選ばれたあなたは,この州の裁判制度の一翼を担うことになります。

陪審員としての役割は,裁判官と同様に重要です。

・・・・・

法廷における被告,原告のやり取りに耳を傾け,裁判官の指示に従って,個人的な偏見を排し,評決してください。




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法の下における正義





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ノーマさんに送られてきた厳かな出頭要請書。この要請に従わない場合には,法律によって罰せられると書かれている。


西欧諸国では,裁判は,よくも悪くも,大人と大人の対決の場という印象があるよ。


裁判員裁判は,日本では裁判のうちのごく一部。今後どうなるんだろうね。







by yojiarata | 2014-09-12 22:55
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