南方熊楠の著作を,今回ほど細かに読んだのは初めてである。 この世に二人という熊楠の類稀な天才ぶりについては,本文で繰り返し書いた。ここでは,何度も読み返す間に,私が感じた熊楠について書いておきたい。 まず,熊楠の思考過程は極めて定量的である。我々は,理系の人であるか,文系の人であるかを区別して考える傾向がある。 最近では,「リケジョ」なる珍妙な表現が用いられている。驚いたことに,リケジョ( RIKEJO )は,株式会社講談社の登録商標である(登録番号第5304310号)。 話をもとに戻す。熊楠は数字を大切にする。日付の記録,論文の中の数字は,言うまでもなく,理系の文章を書くにあたっての絶対の条件である。 同時に,熊楠は,この定量的な文体を,極めて柔軟に操る。その結果,熊楠の文章は,理系とは無縁の人の頭にも抵抗なく入る。いうなれば,熊楠の書く文章は,理系のものとも言えるし,文系のものとも言える。要するに,熊楠の柔軟性は,実に心地よく,読者の頭に入ってくる。理系とは無縁の文章であっても,実に論理的,筋が通っているので心地よい。 屋外の森の中では裸で過ごしたという(多くの写真が残っている)熊楠の文章は,途轍もなく面白い。しかし,熊楠自身も書いているように,内容が“尾籠,猥雑”にわたる部分が少なくない。大爆笑もので,私も大いに楽しんだが,ブログに書き残すにはいささかためらわれる。熊楠の人間像をよりよく知るためには,読者諸氏ご自身で,「全集」に,何処からでもよいから,目を通していただきたい。 資料の整理と執筆は,桜に始まって,気が付いてみると,雨と紫陽花の季節まで続いたが,実に楽しい作業でした。天国の熊楠のオッチャンに心から感謝したいと思います。 平成26年7月末日 荒田洋治
by yojiarata
| 2014-07-20 21:23
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