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第十六話  エコロジー




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熊楠は,明治の終わりころには,今でこそ,どこにも見かける詞 エコロジ- のもつ重要性に気が付いていたんだね。




「全集 7」
526 ページ

川村竹治宛
明治四十四年十一月十九日夜


・・・・・ 御承知ごとく,殖産用に栽培せる森林と異(かわ)り,千百年来斧斤(ふきん)をいれざりし神林は,諸草木相互の関係はなはだ密接錯綜致し,近ごろはエコロギーと申し,この相互の関係を研究する特殊専門さえ出で来たりおることに御座候。しかるを,今無知私欲の徒が,単に伐採既得権云々を口実とし,是非にかかる稀覯(きこう)の神林を,一部分なりとも伐り去らんとするは,内外学者に取りても,史蹟名地のためにも,はなはだ惜しまるることに有之。・・・・・



「全集 8」
58-59ページ

柳田国男宛
明治四十四年八月六日夜二時(すなわち七日午前二時)

・・・・・ 当国第一の珍植物多き神島(かしま)(西牟婁郡新庄大字鳥巣(とりのす)の沿海の小島,周囲五町ばかり)は,昨年九月濫伐せんとせしを,小生どもおよび鳥巣および田辺湾辺の諸漁民一同,魚つきを失うを憂え,県知事へ具申し伐木を止めしに,また客月下旬より下草(したくさ)をとると称し伐木しおり,よって小生より郡役所より吏を派ししらべしに,小学校建築の用途に充つるとて,下草を昨年冬(十一月ごろ)同村大字跡浦(あとのうら)の民に三百円にて売り渡しおわり銭はすでに受け取り,昨年中遣(つか)いおわれりとのこと。小島の下草などにとても三百円の価値あるはずなければ実は怪しきことと,小生人を派し見せしみしに,大分大きなる木を刈りおり候。

この島には,本邦にこの島ばかりと称する彎珠(わんじゅ)あり(斉藤拙堂の記行にも見え候。また,ようやく客月三十日東京発状にて牧野富太郎氏より通知ありたるキシュウスゲのごときは,最初,松村任三氏当国黒島で発見せしも,その標品は海外へ贈り去られ,大学にも標品なく,松村先生自身も,その『植物名艦』にこれを九州の薩摩莎(さつますげ)と同一品と見なしおりたるを(黒島には絶滅),小生四年前,件の神島で見出だし,今度牧野氏の調べにて,いよいよサツマスゲと別たることを知るのみならず,一層精確なる標品記載を畢(お)えたるものにて,四年前にはなかなか多かりしも,人民が下草など盗むより,今年春見しに十三,四株しかなし。・・・・・






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全集2
詛言について

163ページ

ペルシャ人は,毎歳マホメットの外孫フッサインが殺された当日追弔を修する前夜,彼を殺したオマー等の像を広場で焼きながら,詛言を吐く。けだし回教にシアとスンニの二大派あって,ペルシャ等シア派徒はアリとその子フッサインを正統の回主とするに,トルコ,アフリカ等のスンニ派はアリ父子の敵だったオマー等を奉崇す。よってペルシャ人はオマーを,トルコ人はアリ父子を魔のごとく忌み,ペルシャ人悪人を訕(そし)るに彼はオマーだなど言い,祈禱の終りに必ずオマーを詛い,オマーを一口詛うは徹夜の誦経に勝るとし,スンニ派よりシア派に改宗する者に,アリの敵アブベックルとオスマンとオマー三人を詛わしむ。
by yojiarata | 2014-07-20 08:52
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