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たそがれ迫る 庭の隅  巻の3



前回の続きです。

信じられないようなことが書いてあるから,しっかり読んでちょうだい。それにしても,内務官僚というのは怖ろしいね。もちろん,受け持ち分担があるから,官僚たちは,それぞれの分野で “活躍” しておられるよ。一言でいえば,国を動かしているんだ。


以下に掲載する記事は,すべて, 『 昭和史全記録 1926 ~ 1989 (毎日新聞社,1989年3月15日第2刷)からの引用です。

掲載誌は,各項目に明記,記載のない記事は,すべて,毎日新聞からの引用。


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恐ろしいでしょう。怖いでしょう。だけど,そんなことはむかしの悪い夢だ。忘れればいいんだ,と仰るかもしれないけれど,そうはいかないんだ。” 特定秘密保護法” の制定など,現政権は狂っているからね。衆議院も参議院も多数を占めている,やり放題の独裁政権だからね。むかしの夢だなんて,呑気に構えていられないんだよ。

信じられないというべきか,滑稽,噴飯ものというべきか,恐ろしい時代だったんだね。例えば,広重の「阿波鳴門」発禁の件など,一旦狂った連中は何を言い出すかわからないということがよくわかるよ。

何度も言うけど,単なる悪夢として忘れ去ることができない世の中になりつつあるんだよ。



言論弾圧増加

1930年(昭和5年)
12月12日(時事新報)



「明るい政治」を目指し昨年七月組閣された現内閣は,最近原論文章に対する弾圧が著しく増加してゐる傾向があり,同十月までに新聞紙法及び出版法により,以下の物を発売頒布の禁止にした。

◇ 安寧秩序を紊乱するもの
1 単行本               40 件
1 雑誌                 19 件
1 ビラ                398 件

◇ 風俗を紊するもの
1 単行本 31 件
1 雑誌 17 件


に過ぎなかったものが本年1月から10月迄の同様処分は著しく増加し,

◇ 安寧秩序を紊乱するもの
1 単行本               125 件
1 雑誌                 36 件
1 ビラ                1,206 件

◇ 風俗を紊するもの
1 単行本   39 件
1 雑誌  12 件



「源氏物語」上演禁止

1933年(昭和8年)
11月22日


二十六日から四日間新歌舞伎座で上演予定の劇団「新劇場」によるわが国古典文学の粋「源氏物語」が,突如警視庁保安部から劇全体として社会の風致を害するとの漠然たる理由で上演禁止命令が発せられた。新劇場は紫式部会の名で長文の声明書を発表した同部会会長藤村作博士は,以下のように談話した。

「折角の画期的な企てを放棄しなければならなくなったことは非常に残念です。どの部分が悪いからこれを削除しろといわれるならまだしも全体がいけないとなってはどうにも仕方がありません。」



エノケンらアドリブご法度

1934年(昭和9年)
3月6日


浅草松竹座の榎本健一,柳田貞一,中村是公の三人は,エノケン座上演の「街のターザン」に脚本以外の台詞をはさんで「余計な演出」をやっているのを係官に見つけられ,警視庁興業係に呼び出され叱られた。



レコード検閲

1934年(昭和9年)
8月1日(報知新聞)


懸案となっていた内務省のレコード検閲は一日から開店した。むづかしくいへば改正出版法施行日である。

正面玄関横の検問事務室には菅検閲主任事務官,小川主任外係員数名が待機の姿勢で新レコードの到着を待った。 ・・・・・

名古屋のアサヒレコード会社の新レコード四十枚,ビクター会社の百四十種七十枚など,すべて検閲を通過した。「検閲するというだけで,大抵あぶなかしいものは持って来ないようだ」と, ・・・・・ 中々内務省の検閲官は寛大だ。 



謡曲「蟬丸」禁止か

1934年(昭和9年)
11月7日


日本精神協会(会長菊池夫男)理事の森清人氏が,内務省に中里図書課長を訪問し,謡曲「蟬丸」の内容が史実に反し,皇室の尊厳を傷つけるとして,廃曲にしてもらいたいと陳情。内務省でも思案し,近く各家元とも正式に交渉し,「蟬丸」上演を永久に禁止たい意向で調査を進める。



広重の「阿波鳴門」発禁

1935年(昭和10年)
5月(読売)



三審美書院出版の広重画「鳴門阿波」が鳴門海峡のはげしい渦巻と共に点々する島,山,その風景が仮令遠望とはいへさすが大家のものだけに巧緻真に迫るものがあり,現在の要塞地帯を察知するに足るものであると云う点が要塞地帯法に触れると和歌山憲兵隊に摘発され,東京憲兵隊の調べを受けた。結局複製の木版刷残品を押収され,今後の出版を禁じられてケリがついたが,浮世に居ない筆者の意向をたゞす訳にも行かない。



時平の冠,不敬

1937年(昭和12年)
1月14日(読売)



歌舞伎座で中村歌右衛門丈が上演中の「天神記二枚錦絵」の藤原時平公の冠が,むかし天皇,皇族方に限って御使用になったとおなじ「立纓」とわかり,警視庁保安課らは注意を与へると同時に,内務省に報告,歌右衛門丈も恐懼して早速纓の垂れた冠と取り替へて出演した。内務省では早速衣冠束帯をつけた人物の出る芝居を厳重に取締る方針である。




未完

by yojiarata | 2014-04-27 21:17
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