ご隠居さん 今日は魚の話が始まるの。魚なんて,ちょっと退屈そうだね。 退屈どころか,大変に面白い話だから,よく聴いてほしいんだ。 「魚なんて」というところをみると,君は肉ばかり食べているんじゃないの。もしそうだったら,次のニュースが参考になるよ。 厚生労働省の研究班(代表・三浦克之滋賀医科大教授)が,日本人を対象に24年間にわたって追跡調査した結果,魚介類を多く取る和食文化で脳卒中や心臓病を予防できる可能性が示された。 (2014年2月2日,朝日新聞朝刊) 動物には目玉が必ず二つあるよね。そして,上から見ると,左右対称で,左と右に目玉は一個ずつあります。ところが,「例外のない規則はない」の言葉の通り,実に面白い例外があるんだ。 フラウンダーという総称でよばれる一群の魚がいます。 生物の分類に使われる言葉でいえば,フラウンダーは カレイ目 (もく) の魚の総称です。砂や泥の海底に生息し,海底に潜むのに適した平たい体をしています。目玉が魚の左側の面か,右側の面のどちらかに,二つともある特徴的な形態をしているよ。 海底付近であまり遊泳せずに暮らす 底生魚 のグループであり,水底で 有眼側 (目のある方の意味)が上になるように横倒しになって,砂や泥に潜るなどして暮らしているんだ。泳いでいるときも,有眼側が上,無眼側 が下となっています。一般的に両眼は大きく体側面から突出しており,体を砂地に潜らせた状態でも周囲を見渡すことができるんだ。 二つの目玉のある側は黒褐色から褐色。この体色は体表にたくさん散らばっている色素細胞の大きさを変えることにより,周囲の環境に合わせて変えることができ,保護色となる。目玉の無い側は白色。こちらの面を上にして寝転がるのは,目立つから危険なんだよ。 板の面に裏と表があって,かたちも卓球のラケットみたいで愉快だね。 ![]() 体の右側に眼があると 右側眼,左側に目があると 左側眼 とよぶ慣わしです。 カレイ目の魚は,2 亜目14 科134 属で構成され,カレイ,ヒラメ,ウシノシタなど,海底で暮らす底生性の魚類を中心に678種が記載されています。ごく薄い扁平な体と,左右どちらか一方に偏った両眼を特徴とし,水産資源として重要な食用魚が多数含まれています。 俗に, 左ヒラメ に 右カレイ と言われているんだけど,ヒラメとカレイ類では有眼側が左右逆になっていることが多いよ。すなわち,一般的にカレイ類は体の右側に眼がある右側眼,ヒラメは左側に目がある左側眼です。 大雑把にいえば,両眼が右側に付いているのがカレイ,左側 に付いているのが ヒラメ なんだけど,例外も多いよ。例えば,日本産のヌマガレイ (カレイ科) は左側眼であり,ボウズガレイ科の仲間は左右まちまちなんだよ。 カレイ と ヒラメ の決定的な違いは食性と口の形であります。 カレイの仲間は砂の中の小さな虫を食べるため,口は小さく,ヒラメ は小魚やエビなどを捕食するため,口は大きく,鋭い歯が生えているよ。 カレイ と ヒラメ の例を見てください。 ![]() ![]() 「カレイ」 と 「ヒラメ」 は,『岩波書店 広辞苑第六版)』 には,次のように説明されています。 かれい 【鰈】 カレヒ (カラエイの転)カレイ科の硬骨魚の総称。体は扁平で卵形,頭部はねじれて,眼は普通,体の右側に集まる(ヒラメでは,眼は左側)。眼のある側は褐色で海底の色に似,眼のない側は白色。砂底に生息。多くの種類がある。食用。 ひらめ 【比目魚・平目・鮃】 ヒラメ科の硬骨魚の総称。また,その一種。体は楕円形で著しく平たく,両眼とも左側にある。口は大きく,歯は鋭い。眼のある側は暗褐色で反対側は白色。全長は80センチメートル に及ぶ。近海の砂底に横臥する。冬季から早春にかけて美味。 カレイは,白身が美味で,日本では,刺身,寿司,煮付け,焼き物,揚げ物などさまざまな料理に用いられます。また,冬のカレイ,特に産卵前の時期のメスは大きな卵巣をもっており,子持ちガレイとよばれ,甘辛く煮付けたものが日本の冬の味覚として好まれるよ。 ヒラメは,刺身,寿司ネタに用いられる高級食材で,フラウンダー類の中では最も高値で取引されているんだ。連れ合いは,昔はそうでもなかったけれど,値段が張るので今は買わないといっているよ。 魚の頭を左に向けて出す日本料理の古来の仕来りでは,両目が左に付いている ヒラメ の場合はいいんだけど,両目が右に付いていることの多い カレイ の場合には,当惑すべき結果になるよね。目玉を見えるようにお皿におけば,日本古来の仕来りを破ることになるよね。そうかといって,頭を左に盛り付けると,目玉の無いカレイ を食することになるでしょ。連れ合いは,その場合は,自分なら,魚を切り身にして出すと言っているよ。 ところが,よくしたもので,日本で食されているカレイは,両目が左側に付いているんだ。 我々が日本で食しているのは,両眼が左側に付いている左側眼のヌマガレイです。ヌマガレイは,カレイ目・カレイ科に分類される魚の一種。別名「イシガレイ」,「カワガレイ」,「タカノハガレイ」,「ツキリガレイ」など。 ヌマガレイの話をする時には,驚くべき統計データについて語らなければならないんだ。 ![]() アメリカ西海岸から日本にかけて生息するヌマガレイを捕獲し,目玉がどちらに付いているか,つまり,左側眼か,右側眼かを調査した統計データがあるんだ。 こんなことがあっていいんだろうか! アメリカの西海岸で採取すると: 左側眼 50% 右側眼 50% アメリカと日本の中間 (アラスカ沖) で採取すると: 左側眼 70% 右側眼 30% 日本近海で採取すると: 左側眼 ほぼ 100% 右側眼 ほぼ 0% 面白いね。不思議だね。どうしてなんだろうね。君はどう思う? まとめると,こういうことになるよ。つまり,日本で食しているカレイは,ヌマガレイとよばれているフラウンダーで,両目が体の左側に付いているカレイなんだ。左側といっても,ヒラメとは違うよ。 幼生は目が普通の魚と同様に左右に分かれて付いており,体も平たくない。成長とともに変態し,目がだんだんと 左側か,右側のどちらかに移動していき,体が平たくなり,また浮き袋がなくなり底生の成体となるんだ。この図では,左側眼になる様子が描かれています。 ![]() 君は,最初,「魚なんて」といっていたけれど,魚も奥が深いと思わないかい。 ヌマガレイに関する統計データなどは,サイエンティフィック・アメリカン(1982年5月号)の記事 「フラウンダーの非対称性」 に記載されています。両眼が成長とともに移動する有様を模式的に描いた図は,同誌からの転用です。
by yojiarata
| 2014-02-10 17:57
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