ご隠居さん 最高裁だなんて,急にどうしたの。 「急にどうしたの」 どころの騒ぎじゃないでしょう。 昨日,国民が注目していた ”1票の格差” に関する最高裁判所の判決をテレビでみたんだ。君は見なかったの? 目(耳)を疑ったね。判決の内容は,情けないことに ”十年一日のごとし” だったよ。残念を通り越して,涙が出たよ。 テレビで見ると,最高裁判所の大法廷に,ボスを中心に,大勢の裁判官が,横1列に,もっともらしい顔をして並んでいたよ。だけど,もっともらしいのは外見だけじゃないのかね。全員,むかしは立派な経歴の秀才だったんだろうけれどね。 司法,行政,立法が独立の三権分離が民主主義の基本であることぐらい,学校で教わったよ。 だけど,現実は,結果においてそうなっていないんじゃないですか。少なくとも,日本では,最高裁の判決で,世の中がひっくり返ったなんて話は,聞いたことがないからね。今回の判決も例外じゃないよ。” 阿吽の呼吸 ” というものがあるでしょう。ともあれ,政権与党にとっては,大喜びの ”祝杯もの” だったろうね。 こんなことを考えているうちに,怒りとともに,むかし観た映画 『真昼の暗黒』 (今井正監督,橋本忍脚本,1956年公開)を思い出したんだ。 原作は,「八海事件」 を題材にしたノンフィクション正木ひろし『裁判官-人の命は権力で奪えるものか』。映画タイトルは,ソ連での自白強要と粛清の惨状を詳述したアーサー・ケストラーの同名小説からとられたそうです。 アーサー・ケストラー『真昼の暗黒』(1940,中島賢二訳,岩波文庫) 映画 『真昼の暗黒』 は,1951年に実際に起きた冤罪事件を描いた日本映画史に残る傑作だよ。 「キネマ旬報」日本映画監督賞・ベストテン1位,「毎日映画コンクール」日本映画賞・脚本賞,「ブルーリボン賞」作品賞・脚本賞・ベストテン1位など。 映画の最後の場面で,死刑判決を受けた主人公(草薙幸二郎)が,後ろ髪を引かれる思いで拘置所の面会室を去る母(飯田蝶子)に,二人を隔てる鉄格子を掴んで,「母さん,まだ最高裁があるんだ!」と叫んだところで映画は突然終わるんだ。このラストシーンは,観客に強烈な印象を残したよ。 インターネットでみると,「まだ最高裁があるんだ!」 は1956年の流行語にもなったそうだよ。 一般庶民は,これほど最高裁の存在を頼りにしているんだよ。 森繁久彌,淡島千景が主演した『夫婦善哉』 (1955)を思い出したよ。 グータラ亭主 (森繁久彌)が,嫁さんの淡島千景に何度も言うセリフ。 ”頼りにしてまっせ” 不肖・荒田洋治のお願い:最高裁のひな壇に並んでおられる大勢のおじさま,おばさま。 ”頼りにしてまっせ” 『真昼の暗黒』 のラストシーンにそっくりな場面をそれから7年後に見たよ。黒澤明演出の 『天国と地獄』 です。 犯人・竹内(山崎務)の死刑が確定し,誘拐事件の被害者・権藤(三船敏郎)は,竹内の希望により面会することになる。最初こそ不敵な笑みを浮かべながら語る竹内が,そのうちに体の震えが止まらなくなり,ついには金網に掴みかかり,何やら喚くんだ。竹内は刑務官に取り押さえられて連行され,2人の間に,『真昼の暗黒』 と全く同じように,突然,シャッターが下ろされ映画は終わるんだ。 黒澤は,7年前の映画を観たんだろうか。大変興味があるね。観ていないはずはないと思うんだけど。 【追記】 最高裁判所について,ウェブをみると,こんなことが書いてあるよ。 1) その長たる最高裁判所長官1名と最高裁判所判事14名からなる 2) 最高裁判所長官は内閣の指名に基づき天皇が任命,最高裁判所判事の任命は内閣が行い,天皇が認証する 3) 1964年1月31日以降は,判事全員が60歳以上から選ばれていて,定年は70歳 つまり,世の中の常識では,最高裁の判事は,仕事を終えた高齢の ”有識者”,”学識経験者” ということになるよ。だけど,”有識者”, ”学識経験者” は,内閣が指名,任命するんだよ。 困りましたね。どうしよう? 君も経験したと思うけど,最高裁判所裁判官は,任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査(国民審査)に付されるよ。我々としては,何もデータが無いんだから,判断のしようがないよ。こんな滑稽な茶番劇は,情けないとしか言いようがありません。我々は,怒って,何もか書かずに投票箱に投げ入れたり,×を付けてるでしょ。しかし,あれはあれで,実は大変重要な ”儀式” だったんだよ。分るでしょ。困ったことだけどね。
by yojiarata
| 2013-11-22 20:12
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