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水 優雅な舞の巻



ご隠居さん。何が始まるの。水といえば,HOでしょう。それ以上,何を話そうというんだい。


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そういうだろうと思ったよ。だけど,そんな簡単な話じゃないんだよ。

水は,確かに君の言うように,HOだよ。水素原子Hが2個,酸素原子Oが1個,すなわち,わずかに3個の原子から構成されています。だけどね,わずか3個の原子からできているこの分子は,現在知られている何百万種類の分子の中で,最も複雑な性質を示す分子なんだ。

その原因は,HO 分子の水素原子が,周りにある別のHO 分子の酸素原子と相互作用する(引き合っている)ことなんだ。引き合うこの力を,化学では,水素結合というよ。

水素結合のことは,中学か高校の理科で教わるはずだよ。だって,ワトソン・クリックの2重らせん・モデルも水素結合によって出来上がっているんだから。

わずかにに3個の原子からできている水分子の驚異的に複雑な性質の原因は,一言でいえば,水素原子と酸素原子の懸け橋となる水素結合なんだよ。

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まず,寺田寅彦の『茶碗の湯』の冒頭の文を読んでみてよ。

ここに茶碗が一つあります。中には熱い湯が一ぱい這入っております。

ただそれだけではなんの面白味もなく不思議もないようですが,

よく気をつけて見ていると,だんだんに色々の微細なことが目につき,

さまざまの疑問が起って来るはずです。

ただ一ぱいのこの湯でも,

自然の現象を観察し研究することの好きな人には,

なかなか面白い見物です。


寺田寅彦全集第二巻,岩波書店(1997)


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水は自然界において,気体,液体,固体の三態を豊富にみることのできる唯一の物質なんだ。雨,雲,雪,霧,霙,霰,雹,靄,霜,霜柱など,水に関わる漢字の多さは,水と人間生活の深い関わりを示しているよ。

水については,『水の書』(共立出版,1998),『水を知ろう』(岩波ジュニア新書,2001)に詳しく書いたし,このブログにも,「水の変容 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」(2011年5月)を掲載したから,読み直してちょうだい。

だから,詳しいことはこれでオシマイ。

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今回と次回,幾つかのトピックについて,水を語るつもりだよ。くどいようだけど,基本は水素原子と酸素原子の間の水素結合だからね。忘れちゃダメだよ。

今回は,HO 分子が,水(液体)中で舞っている姿のシミュレーションをお見せします。

私が大学を定年退職した後で勤務した機能水研究所で,藤井和久,岸本敏始両君が,HO 分子の動きのシミュレーションの計算してくれたんだ。だけど,そのままではいささか味気ないので,当時品川にあったソニーグループのCDI ビデオセンターの古川淳・制作課長に全面的に協力いただいて,バックグランド・ミュージックを付けたんだ。出来上がったビデオを目(耳)にして子供のように喜んでいる私を,” いい年のおじさん(おじいさん)が ” というような顔つきで眺めていた古川さんの顔が忘れられません。

「水の変容」(2011)でも使ったんだけど,ここに再度掲載するよ。では, をクリックして,ご覧ください。

[⇒] 酸素原子を白い大きな玉,水素原子を赤い小さな玉で表示。

歌はエリザベート・シュワルツコップ,ピアノ伴奏はエドウィン・フィッシャーという最高の組み合わせで録音されたシューベルトの「水の上にて歌える」です。


1個のHO の水素原子が,近くにある別のHO分子の酸素原子に近づいて水素結合をした次の瞬間には離れて,別のHO分子に近づいていくでしょう。離合集散を不規則に繰り返す ”水の姿” を眺めていると,方丈記を思い出さないかな。

ゆく河のながれはたえずして,しかもゝとの水にあらず。

よどみにうかぶうたかたはかつきえかつむすびて,

ひさしくとどまる事なし。

世中にある,人と栖と又またかくのごとし。


方丈記(岩波文庫)による




つづく

by yojiarata | 2013-10-01 20:58
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