2013年9月9日執筆
ご隠居さん, 今日の話題は李香蘭だというじゃあない。そんな古いことを書いても,だれも知りませんよ。 相変わらず,ごちゃごちゃ煩いね。古い話をリアリティをもって,つまり耳学問じゃなく語れるのは,後期高齢者の特権ですよ。それに,『ミュージカル李香蘭』 が,1991年から,毎年のように,劇団四季によって上演されているよ。 本筋とは関係ないんだけど,君は大辻司郎(1935-1973)って,知ってる。知らないでしょう。私は,彼氏の声をラジオで何度も聴いたし,彼氏が何故こんなに若くして亡くなったかも知っているよ。 李香蘭(り・こう・らん)に話をもどすよ。名前は中国人のようだけど,生粋の日本人です。 彼女の本名は山口淑子。1920年生まれ。奇しくも,諏訪根自子 と同じ年の生まれです。 満州撫順出身。父は中国語の教師をしていたんだけど,何故か,女学校時代に瀋陽銀行総裁,李際春の養女となり,北京の女学校を卒業。 日中戦争勃発後,満州映画協会(満映)に入社するんだけど,満映の理事長は甘粕正彦。大杉栄,同棲中の伊藤野枝,それに親戚の子供の3人が惨殺された「大杉事件」の首謀者(甘粕は当時,憲兵大尉)として軍事法廷で裁きを受け,広くその名を世間に知られることになるんだ。だけど,事件の真相は今も明確じゃないようだよ。 18歳で 初めて母国・日本の地を踏み,やがて 「日満親善」の象徴となり,東宝や松竹の映画に出演。 「支那の夜」,「蘇州の夜」では主題歌も大ヒット。慰問歌手として各地の戦地を訪ねています。 戦後,本名の山口淑子を名乗り,映画「暁の脱走」などで活躍,「夜来香」などのヒットを飛ばす。 ハリウッドに進出し,1950年,彫刻家イサム・ノグチと結婚 (4年余りで離婚)。その後,外交官の大鷹弘と結婚。ベトナム,パレスチナを取材し,PLOのアラファト議長,日本赤軍の重信房子最高幹部などの人々を取材,テレビに出演して,難民への熱い思いを伝えたんだ。 のちに政界に転じ,参議院議員・大鷹淑子として,1974年-1992年 にかけて活動した視野の広い人だね。 諏訪根自子のブログに書いたんだけど,私の父親は何でも新しいものが出ると,我慢できず買ってしまう困った性格で,近所のレコード屋さんが頻繁に出入りして,新しいレコードを黙っておいていくんです。レコードは,流行歌なんでも,浪曲,なかでも,二代目廣澤虎造のレコードを熱心に集めて,近所のおじさん,おばさんを招待して,新着の虎造を聴く会を開いては悦に入っていたのを覚えているよ。 私が小学生のくせに,流行歌と浪曲に詳しかったのはそのためなんだ。今残っていれは,歴史的価値があるものも入っていたと思うけど,昭和20年6月の岡山空襲でみんな灰になってしまいました。 先日,NHKラジオ深夜便で,李香蘭の特集が放送されました。澄んだソプラノで唄う 「荒城の月」,「宵待ち草」,それに加えて,「北京の子守唄」など,彼女の全盛期(昭和16年前後)の歌唱の素晴らしさに圧倒されたよ。 彼女は,コンサートの最初には,必ず「荒城の月」を唄い,終わった後に深々と頭を下げていたそうだよ。 映画 『暁の脱走』 のなかでも,「荒城の月」,「茶摘み」を唄っています。 だけど,考えてみるとちょっと変なんだよ。子供とはいえ,流行歌や浪花節をあれほど鮮明に覚えているのに,李香蘭の歌の記憶が全くないんだよ。父親の性格からいって,彼氏のコレクションに李香蘭が入っていないとは考えられないんだ。だとすればだよ,李香蘭の歌は,私のセンサーでは検出されなかったと結論せざるを得ないよ。 それと,李香蘭の場合だけじゃ,ないんだよ。 同じ頃,NHKのラジオ深夜便で放送された『異国の丘』 (竹山逸郎,中村耕造)は今でも鮮明に記憶しています。その時,NHKの番組では,同じ昭和23年に,伊藤久雄が唄った 『シベリア・エレジー』 が,『異国の丘』 と並んで,多くの日本人の心を捉えて大ヒットになったというんだ。ところが,私の記憶には何も残っていない。今聴いてみると,『シベリア・エレジー』 は心に響くとてもいい曲なのに,何だか変だなと感じたんだ。 李香蘭の場合とまったく同じでしょ。やはり,当たり前かもしれないけれど,唄を聴くセンサーは年齢と共に変わっているということだと感じた次第です。 李香蘭と佐藤しのぶの「荒城の月」がYouTube でならんでいるよ。李香蘭の「荒城の月」は,映画 『暁の脱走』 の一場面。 少なくとも日本的な情感の点では,第一級のプロ・佐藤しのぶよりも,李香蘭の方がはるかに素晴らしいよ。ぜひ聴いてみてください。
by yojiarata
| 2013-09-09 23:30
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