オカリーナ と オーボエ



あれは昭和30(1955)年前後の頃だった。

何事にもすぐに熱中して,(お金もないくせに)それを買いたくなる悪癖はわが父方の家系である。

ある時,ふと聴いた音楽(オーケストラ)のなかで,オーボエの響きに感動して取りつかれてしまった。

次の日には,銀座ヤマハ楽器店を訪れた筆者は現実を知らされる。自分が想像していた値段より2桁高価であった。今考えれば,当たり前のことである。

それでも,店を去り難く,未練がましくガラスの陳列ケースを覗きこんでいると,ふと,それまで見たこともないヘンテコリンな形のものが目にはいった。何だろうと思ってじっと覗きこみつづけていると,女性の店員さんが,手に取ってご覧になりますかと,取り出した。ちょうど掌に載る大きさの,陶器製の物体であった。

これは何でしょうかと問うと,南米で生まれた楽器でオカリーナと申しますという。簡単に吹けますよ,と説明書も取り出す。吹いて見ろとおっしゃるから,吹いてみた。その瞬間これはすごいと興奮した。何とも不思議な優しい音色である。

値段を聞くと,700円とのこと。直ちに購入。

買うには買ったが,もともと音痴の上,楽譜など読めないをあとで思い知る。1オクターブ半の音域であったが,とくに高音の方がいけない。筆者が吹くと間が抜けた音が出て,自分でも情けなくなる。それに,穴を半分手で塞いで出す半音がどうにもうまくいかない。

結局,『埴生の宿』の ド・レ・ミ・ファ・ソ・ソ・ミ ・・・・・  で,夢は終わった。

今から60年前にはいなかった 「オカリナ宗次郎」のオカリナを時々聴きながら,当たり前のことながら,やはりプロは素晴らしいと思う。

あの時,仮に経済的に余裕があってオーボエを買っていたら,もっと悲惨な思いをしたことだろうと,今になって安堵している。

余計なことだが,筆者が購入した頃は,オカ リナではなく,「オカ リーナ」とよんでいた。
by yojiarata | 2013-06-07 22:10 | Comments(0)
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