2013年4月29日,NHKニュースウォッチ9 (特別版,21:00-23:00) 当日行われた安倍晋三総理大臣とV.V.プーチン大統領の会談の要約が,両首脳によって日本語とロシア語で報道陣に公表され,世界中に生中継された。以下,国民の大きな期待を集めた北方4島の領土返還問題に絞って,事の推移をまとめる。 歴史的経緯 第2次世界大戦末期の1945年8月9日。当時のソ連が,日ソ不可侵条約を破って対日参戦し,日本領だった千島列島と北方四島を9月初めまでに占領した。 ロシア首脳の動き ロシアのメドベージェフ首相が2012年7月3日,国後島を訪問した。ロシア側は公式には,通常の国内視察であり,特別な政治的意味はないと説明している。しかし現地で同首相は,北方領土について「これは古来のロシアの土地だ。一寸たりとも渡さない」と,日本を意識したきわめて露骨な政治発言をした。また,日本人の神経を逆なでするのを承知で,「私はまた訪問するし,諸閣僚も続く」と挑戦的な言葉を述べた。 メドベージェフ首相は,悪天候にもかかわらず,島に行くことに特別にこだわった。当初は択捉だった行き先を国後に変えてまで,2時間の訪問を強行した。つまり択捉でなくても,北方領土であればどこでもよかったのだ。これも,通常の国内視察ではなく,北方領土の政治性を特別に意識していた証である。 異様な雰囲気 TBS の記者が,北方領土交渉をどのように進めるかと次のように質問した。 北方領土ではロシア政府によるインフラ整備が進み,実効支配が強まっているいる現実がある。領土交渉への影響をどう考えるか。 安倍 ご指摘のような状況は,たしかに日本の立場と相いれないが,今回の共同声明で「双方の立場の隔たりを克服し」とあるように,問題を根本的に解消するために,北方領土問題を解決するしかない。 プーチン この質問に接した時のプーチン大統領の態度は異様としか言いようがなかった。元・秘密警察のボスの顔を曝け出し,牙を剥き,次のようにわめきたてた。 あなたは,原稿を読んでいた。自身の考えた質問ではないだろう。あとで,あなたに質問させた人間に伝えてほしい。 この問題はわれわれがつくったものではなく,過去からの遺産だ。・・・・・ 受け入れ可能な形で解決したい。この地域には,ロシアの他の地域と同じロシア国籍がある人たちが住んでいる。われわれはこの人たちの生活を考えねばならないし,生活水準を考えねばならない。 要するに,北方4島はロシアのものであり,返す気持ちなど全くない。 (筆者注) 安倍 「(経済協力の)成果を重ねることで交渉が加速することを期待する。双方の立場の隔たりが大きいのは事実だが,腰を据えて取り組む」と発言。 腰を据えようと,据えまいと,結果はすでに決まっているではありませんか。 (筆者注) プーチン 「経済協力が最もいい役割を果たす。明日解決することはあり得ないが,両国にとって重要な問題を解決することを期待する」 北方領土の返還 日ロ首脳会談は,2003年の小泉純一郎氏以来10年ぶり。共同声明も,四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することをプーチン大統領との間で確認した「日ロ行動計画」以来である。 それ以来,何の進展もない。それどころか,最初に述べたように,メドベージェフ大統領(当時)が二度にわたって国後島を訪れるなど,ロシア側には何の誠意も感じられない。 今回もそうだ。経済がどうとか言っているうちに,領土問題は再び雲散霧消することになった。 北方4島に関して言えば,ロシアの主張が見事に繰り返えされるだけの結果となった。ともあれ,国民の期待を集めて10年ぶりに開かれた日ロ首脳会談は,日本の惨敗に終わった。 今後,首脳レベルの会談に加えて,外相レベルの会談を続けていくという。領土問題に関しては,何の期待ももてない。結果は決まっているのだから。 安倍氏は,会談後,ニコニコしながら成果を記者団に強調していたが,総理も総理なら,テレビで遥々モスクワから放送する記者も記者である。もう少し踏み込んだ ”日本の意見” を述べることができなかったのだろうか。 日ロ会談の場合も,先の日米会談アメリカの場合も,公開されることのない ”膝突き合わせた1対1の対決” で,我らが首相はどこまで,堂々と日本を主張したのであろうか。 これは今に始まったことではない。今回の日ロ首脳会談は,開国以来日本の近代化の流れの中で,日本のリーダーたちが苦しんできた歴史の一コマといえなくもない。50年先,100年先の日本を考えるとき,たとえそれが歴史の一コマであっても,今回の日ロ会談のもつ意味は計り知れないと思う。
by yojiarata
| 2013-05-01 21:48
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