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死の商人



本箱から,60年近く前,大学に入学したばかりの頃に購入した本を探し出した。切っ掛けは,次の新聞記事を目にしたことである。

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岡倉古志郎 『死の商人』 (岩波新書,第7刷,1953)


原発 海外輸出に活路
三菱重連合,トルコの4基受注へ


三菱重工業の企業連合が,トルコで原発4基の建設の受注を固めた。国内での新設は難しくなり,原発メーカーは海外に活路を求めている。インフラ輸出を成長戦略の柱にすえる政府も前のめりだ。

トルコが黒海沿岸のシノップに建設を予定する原発4基は,事業費が220億ドル(約2兆円)以上。 ・・・・・

三菱重工業は ・・・・・ 東京電力福島第一原発の事故後,国内での新建設は難しくなり,海外でも原発の安全に対する信頼性が揺らいでいた。トルコの案件を受注できれば,原子力事業の立て直しに大きな一歩となる。

安倍政権は ・・・・・ ベトナムやサウジアラビアに対し,将来の原発輸出を視野に原子力分野の協力を申し出た。3月にはインフラ輸出を支援するため,閣僚による「経協インフラ戦略会議」を設けた。

(朝日新聞 2013年4月5日 朝刊7面)

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岡倉の新書(10ページ)には,次の記述がある。

【・・・・・ 「死の商人」というのは,無数の罪のない人間に不慮の死をもたらす大量殺戮兵器を生産し販売する人々のことである。かれらは,単に兵器をあきなうだけでなしに,それをみずから生産もする。生産し,販売するのは,むろん,大砲だけではない。大砲も,機関銃も,弾丸も,爆弾も,火薬も,戦車も,飛行機も,軍艦も,さらに,こんにちでは原子爆弾も,およそ大量殺戮の手段となり,戦争の道具となるほどのものならば,すべて「死の商人」の取扱う品物のリストにのぼる。】

冒頭に次の詩が引用されている。

右手に陣取るは外国製の大砲

左手に陣取るは外国製の大砲

前方の敵陣からこちらを向くのも外国製の大砲

いっせいに火ぶた切り,天地とどろく

― クリミヤ戦争をうたった詩から ―


他にも,次の引用がある。

【(自由主義的政治家にとっては)デュポンは,今もなお,古くからの<火薬トラスト>であり,<戦争成金>であり,<死の商人>である。】

(ニューズ・ウィーク,1949年5月2日号)

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日本にも,兵器を製造し,輸出して,商売をしている企業があることは周知の事実である。群を抜いているのが三菱重工業,続いて三菱電機,川崎重工,NEC。

三菱重工業は太平洋戦争の遂行に当たり,日本が軍事力を強化していく中で,兵器(艦船、航空機)の製造を中心として発展,日本海軍の戦艦武蔵の建造,ゼロ戦を設計・製造した。軍艦建造トン数は10倍以上,戦車の製造台数は200 倍以上,資本金は20 倍以上に成長したという。下世話な表現をお許しいただけるなら,戦争によって大儲けしたのである。

現在,三菱重工業の主力製品は、船舶・エネルギー関連機器・産業機械・航空機・ロケットエンジンなどであるが,兵器製造の分野では旧防衛庁(現在は防衛省)への納入実績第一位の企業であり,戦闘機・ヘリコプター・イージス艦を含む護衛艦・戦車などを製造している。 

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武器輸出には,法律上は,次の三原則等がある。

1.武器輸出三原則 (1967.4.21)

武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策をいう。

(1) 共産圏諸国向けの場合

(2) 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合

(3 )国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

[佐藤総理(当時)が衆院決算委(1967.4.21)における答弁で表明]


2.武器輸出に関する政府統一見解(1976.2.27)

「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から,それによって国際紛争等を助長することを回避するため,政府としては,従来から慎重に対処しており,今後とも,次の方針により処理するものとし,その輸出を促進することはしない。

(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。

(2)三原則対象地域以外の地域については,憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり,「武器」の輸出を慎むものとする。

(3)武器製造関連設備の輸出については,「武器」に準じて取り扱うものとする。
[三木総理(当時)が衆院予算委(1976.2.27)における答弁において「武器輸出に関する政府統一見解」として表明]

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安倍首相は,福島第一原発の悲劇を承知の上で,しかも問題が全く解決していない現状で,” もし外国で同じような事故が起きたら” と考えないのだろうか。乱暴な言い方になるが,商売のためというなら,他人の迷惑など忘れて商売する「死の商人」の発想と何も変わりがないではないか。

輸出された武器が,宗教間の対立などの軋轢で,一般市民の殺戮に用いられないなどと保証はできない。何に使うか知らないけれど,武器を購入することは,殺戮のため,戦争のため以外にありえないからだ。


追記

筆者がブログで引用する記事がいつも朝日新聞であることに全く意味はない。とくに良い新聞だと思っているわけでもない。最初の勧誘で講読を決めて以来,別の新聞に変えるのが面倒だから購入し続けているというのが唯一の理由である。






by yojiarata | 2013-04-07 23:59
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