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日本の製薬業界における人材の育成について



荒田

製薬会社ではこれからも,優秀な人材を確保していかねばならないと思いますが,会社のほうで考えておられる優秀な人材とはどのような人々ですか?

平岡

企業の研究者としては自分の研究結果を正しく英語で書ける能力さえあれば秀才である必要はありません。くだけた表現をすれば企業はエジソン型の人を望んでおり,アインシュタイン型の人物を求めている訳ではありません。研究所以外の部署でも学校秀才の半分は落第だと判断されるでしょう。昔から「運,鈍,根」が重要だと言われますが,私はこれに「想,転,勇」を付け加えたいと思います。すなわち,「アイディア,ダメな場合の転換,勇気」です。勿論学校で優秀で目立った人でも,企業ではその才能を生かせず,つまらない人生を送った人が少なくないのはご存じの通りです。

荒田

日本,外国の製薬企業では,ポスドクをどのように活用するお考えでしょうか。

平岡

現在,日本の研究費(研究助成金)は実験機器だけでなくポストドク採用の費用への使用も許されているはずです。問題は優秀な外国人は日本にポスドクとして来ないのが現状です。日本人の場合にも,博士課程を修了した後,良いポジションがないので仕方がなくポスドクになっているのが現状ではないでしょうか。

日本の製薬企業の研究所では,日本がアジアの小国ですので,1-2年は武者修行(将来の良い研究をするための見聞を広める)として外国でのポスドク生活を体験することが必要と考えています。そのため,私が現役の頃は最高の人材を求めるため,日本の大学の大学院を卒業して外国でポスドクをしている人を最優先で採用していました(勿論この条件に合う人は少ないですが)。

現在の研究所ではポスドクとしての経験が無くても自社の外国・子会社研究所でしばらく勤務することが可能になってきていますので事情は変わりつつあると思います。

外国の研究所では研究員の何%かは入社時にすでにポスドクを経験していますし,また自分で会社を変わることが頻繁に行われているので,会社としてポスドクを推奨するところは無いと思います。

荒田

女性の研究者の進出が目覚ましいのですが,好むと,好まざるにかかわらず,出産,子育てという自然現象とのかかわりを,企業としてどのように考えておられるのでしょうか。

平岡

企業はすでに企業にとって必要とする女性社員はウエルカムと割り切っていると思います。従って政府による保育園などの充実が非常に望まれています。自社の建物内に保育園を併設している会社もあるくらいです。国際化の世の中ですから,今以上の女性の進出をはかっていかなければ日本は後進国とみなされます。外国では1か月単位の休暇とか7年に1度のサバティカルイヤーもある訳ですから女性が出産で3-6か月休暇をとっても毎年連続ではありませんので何ら支障はないはずです(ただし大企業と一部の中小企業のみ)。

荒田

この対話のために貴重な時間を割いていただき,誠に有難うございました。





by yojiarata | 2012-12-14 20:00
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