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田中文部科学大臣の発言は正論である



1)新しい大学,短期大学,大学院大学を新設,2)既存の大学の新しい学部,大学院等の設置にあたっては,文部科学省に申請書を提出する。文部科学省では,同省に設けられた「大学設置・学校法人審議会・大学設置分科会」において審査が行われる。

大学設置分科会については,文部科学省の関連のウェブサイトに次のように記されている。

大学設置分科会における一般的な審査スケジュール は,1)の場合には,5月または7月の審査会で特段の意見がなければ早期認可を行う。2)の場合には,7月の審査会で特段の意見がなければ早期認可を行う。



忘れもしない。筆者がまだ大学で現役の頃である。平成4年(1992年)8月,文部省(当時)から大学設置・学校法人審議会専門委員 (大学設置分科会) を委嘱された。

委員会には,何人かの若手官僚(課長あるいは課長補佐?)が出席し,年長さんと見られる一人の官僚が議事進行にあたった。会は退屈きわまるものであり,どちらかというと辛抱強さに欠ける筆者はいらいらしながら座っていた。要するに,各委員の前に並べられた分厚い資料を棒読みしているだけであった。

長時間をかけて朗読した後,進行役の官僚が次のように宣った。

【ご出席の委員の先生方,いかがでございますか。・・・(寂として声なし)・・・ “特段のご意見” がございませんようでしたら,本日の議案はご了承いただいたものとして,これで散会とさせていただきたく存じます。】

この馬鹿丁寧な言葉使い,意味はわかるが,不気味な響きのある “特段のご意見” なる官僚言葉を耳にして,遂に堪忍袋の緒が切れた。

【あなたたちは,こんな下らないことで忙しい我々を集めたのか? 今日のような委員会なら,資料を郵送すればすむじゃないか。第一,このまま議案が認められないことになったら,困るのはそちらでしょ。】

会議室は一瞬奇妙な沈黙に包まれた。おそらく官僚にとっては,こんな短気な委員にぶつかったことなど,それまでに経験がなかったのではあるまいか。官僚は,筆者に向かって意味不明のことを大声でワーワー叫びながら,そのまま散会となった。

帰りの道すがら,顔見知りの先輩の委員が,

【寅さんじゃないけど,あんた,それ言っちゃ御仕舞よ。】

と,怒りの収まらない筆者に,慰めるような,諫めるような言葉をかけた。先輩は官僚との付き合いのプロであった。

想像するに,このあとは,組織の上へ上へと送られ,最終的には高等教育局長のハンコが押され,文部省の認可が決定されるのであろう。つまり,分科会で 2,3人の駆け出しの官僚によってすべてが決定され,そのまま国の決定になる。恐ろしいといえば恐ろしいことではないか。

要するに,審査も何もあったものではない。ことは審査の前に既に決まっているのである。申請する大学などは,認可を前提に,2,3年前から建物などの準備に入っている。

そういえば,申請している大学の学長が補佐役をつれて筆者の研究室を訪問された。”今回,***大学の 設置の認可を文部省に申請しましたので “よろしく” という趣旨の発言をされた。

考えてみると,いささか変である。筆者が分科会の委員の一人であることをどこで知ったのだろうか。答えは明瞭である。

要するに,こうして,官僚の意のままに大学が新設されている。日本中に大学が増えすぎ,レベルが下がり,卒業後の学生の就職が困難になるなどおかまいなしに!

大体,こんないい加減なやり方で日本の高等教育の成り立ちが決まってしまうのであれば,11月6日のブログ ”日本の科学技術政策” に書いた通り,日本の研究,教育に未来はない。

田中大臣はこの点を十分ご存じの上で,11月2日にあの発言をされたのであろう。確かに暴走する傾向を否定できない彼女の行動と発言は周りから反発を招いたが,発言の内容自体,筆者は正論であると思う。

田中大臣によれば,新しく委員会を立ち上げて新しく大学の設置を考えていくという。問題の本質に火を点けた田中大臣の志が生きることを望んでいる。
by yojiarata | 2012-11-09 23:28
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