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八十八夜の別れ霜



本日5月1日は,八十八夜である。小学生の頃,

♪ 夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る ・・・・・ ♪

と歌った 『茶摘み』 を思い出す。

大阪から東京に向かう新幹線が静岡県を通過するとき,左側に広がる茶畑に,背の高い扇風機が並んでいるのに気が付かれたことがあると思う。この扇風機は,茶畑を霜の被害(霜害)から守るためのものである。

五月でも,晴れた寒い日には,放射冷却によって地表の温度が奪われて,地表近くの温度が氷点下になることがある。水は,‘芯’になるものがなければ,0 ℃に近い氷点下では,凍結することはない。水の過冷却状態である。ところがなぜか,五月の,夏も近づく八十八夜の頃,茶畑に霜が下りて,茶畑が全滅することさえある。この現象は,古来,「八十八夜の別れ霜」とよばれてきた。『岩波広辞苑』には,

八十八夜の頃に降りる霜。この頃が最後の霜でこれ以後は降りないといわれる。茶や桑に害を与える。

とある。茶畑の場合,何が‘芯’になって,過冷却状態の水が凍結するかは,長い間の疑問であった。

同様な霜害に悩んでいたアメリカの研究者が,霜害を受けた落ち葉の中から,氷核細菌とよばれるバクテリアを見つけたのは,今から40年ほど前のことである。氷核細菌は,「氷核活性物質」とよばれるタンパク質を自分の背中に背負っている。このタンパク質が”芯”になってお茶の葉っぱに氷が成長するのである。茶畑の扇風機は,冷たい地表と地表から離れた高さの暖かいの空気とをかき混ぜて,お茶の葉の温度が下がるのを防いでいるのである。

過冷却状態にある水から,氷が成長する過程は,雨を降らせるために散布されるヨウ化銀の働きとまったく同様である。
by yojiarata | 2012-05-01 21:00
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