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うぐひす 二話



あれから60年近くになる。筆者が大学院に進学した昭和32(1957)年だった。

先輩のT 氏に誘われて,神田共立講堂に行った。ソ連(当時)から来日したアラ・ソレンコワ(コ ロラトゥーラ・ソプラノ)のリサイタルを聴くためである。 ロシア民謡 『うぐいす』 を歌う彼女の素晴らしさに圧倒された。

あれから50年余り,神田神保町の「高山本店」ビルの最上階に在るレコード売り場で,偶然にも,彼女のCDが復刻されていることを知る。彼女は来日の折,録音を残していたのである。飛び上がらんばかりに驚き,早速購入して聴いてみる。あの時の『うぐいす』 がそこにあった。
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彼女は,この録音ののちの数年後に現役を退いたという。

早坂文雄が佐藤春夫の詩のために作曲した『うぐひす』の存在を初めて知ったのは,比較的最近のことである。正確に言えば,先月,NHK のラジオ深夜便で耳に挟んだキーを低くしたメゾソプラノの『花の街』,歌手は青山恵子。早速,青山恵子名歌集『紡ぎゆく歌ものがたり』(青山音楽事務所)を購入した。無伴奏で朗々と歌われる早坂文雄の 『うぐひす』は素晴らしい。予てから,ソプラノのキャーという高音に恐れをいだいていたが,キーを低くしたメゾソプラノの歌は,心安らかに響く。

その直後,米良美一(めら よしかず)が録音した『うぐひす』 の存在を知った。障害(先天性骨形成不全症)をもって生まれたが,数々の社会的,精神的障害を乗り越え,努力のかいあって神奈川県の洗足学園音楽大学へ進学。在学中に,テノールから女声の音域を歌うカウンターテナーに転向する。1994年 大学を首席で卒業したあと,5月に第8回古楽コンクール最高位を獲得。1990年代後半に次々に録音を発表,これによって,米良は国内外で高く評価され,広く知られることになる。

『Bridge ベスト・オブ・米良美一』 (キング・レコード,2000)には,当時録音された代表的な作品が収録されている。『うぐひす』を含め,いずれも素晴らしい出来栄えである。

早坂文雄は,『羅生門』で印象深く響くボレロに始まり,終生,黒澤作品の音楽を担当した。この点については,昭和平成春夏秋冬のなかの『黒澤明と早坂文雄 感動と興奮』で述べた。 
by yojiarata | 2012-05-01 20:13
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