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播磨の森にある大型放射光施設スプリング-8  Ⅶ


第Ⅶ話 SPring-8の世界的な位置付け


荒田

ヨーロッパ,アメリカなどを念頭に置いた場合,SPring-8はどのように位置付けられますか。

宮野

SPring-8と同じ大型放射光とよばれる大きな放射光施設が世界の三極に1箇所づつあります。つまり,日本,アメリカ,ヨーロッパですが,アメリカはシカゴ郊外にあるアルゴンヌ国立研究所にあるAPS(Advanced Photon Source)とよばれ,ヨーロッパは,フランスのグルノーブルにあるESRF(European Synchrotron Radiation Facility)とよばれています。

もしかしたら,その名前が愛称として親しみやすいものとなっているのが,SPring-8です。SPring-8を計画して造った人たちの気持ちの入れ込み方の表れかもしれません。ちなみに,最初に作られたESRFは6 GeVで,つぎにできたAPSは7 GeVで運転されています。

荒田

大勢の研究者(外国を含めて)がSPring-8を利用していると聞きましたが,今でもそうですか。

宮野

産業利用などの分野拡大努力、材料科学の解析の隆盛など
ユーザーは増え続けています。
実際、東大(東京大学放射光アウトステーション物質科学)、豊田中研(トヨタグループ)など日本の中核学術機関、企業が専用ビームラインをもつようになって来たことでもわかる様に、その利用分野自体が拡大しています。粉末X線回折のようにより一般化して、利用課題が増えすぎ採択率が低すぎるとの意見もで始めるほど分野によっては、ビームタイムが飽和しつつあります。ですが、一般の外国研究機関からの利用は特別な支援システムがないこともあって多いとはいえません。

とくに,民間企業による産業利用がSPring-8では2割を超えて,ほかの放射光施設のお手本となってきたようです。SPring-8 に、豊田中研などの企業が触媒のその場観察などを目指した独自の豊田ビームラインを作っていて,環境に優しい太陽光電池などエネルギー素子開発のための建設中のビームライン(先端触媒構造反応リアルタイム計測ビームライン)ができています。

ライフサイエンスは,トップサイエンスを除けば,PFと2分しているといえるかもしれません。結晶構造解析には,SPring-8はもったいないと言い張る人もいるようです。私はSPring-8の主要な成果がタンパク質構造からも多いことからも、世界の趨勢からもわかるように大型放射光施設での重要な研究分野であって、決してもったいないなどということはないと信じています。

残念ながら,外国のユーザーは多くありません。

ただし,現在
東日本大震災の影響
でPFが使えないのでそのユーザーを引き受けているように,韓国の現在、改修のため止まっている放射光施設PLS(Pohang Light Source)のユーザーを両者の協力協定に従って引き受けています。これは,将来,SPring-8が改修で止まるときにはこちらがお願いしますという互恵関係です。

こうした協力関係は世界の放射光施設で進んでいます。

荒田

製薬会社関係では,20社が,それぞれ費用2000万円を負担して,ビームラインを借り切っていると,ある製薬会社の主任研究員の方から聞きました。

宮野

これは,「専用ビームライン」というシステムで,各企業がお金を出して,ビームライン(光を加工する光学ハッチから,実際に実験する装置のはいった実験ハッチまでのこと)の建設をして,10年間そのビームラインを運用するものです。

10年ごとに評価があり,継続すべきか審査されます。これらを審査する組織ができています。豊田中研なども同じ手続きでできており,東大のビームラインも同じことになります。もし,成果を公表(使った実験の内容)すれば費用を支払う必要がないことが法律により,定められています。

もし,公表しないで専有化するときはそのためのビーム使用料を支払う必要があります。この料金は,国際競争となっており,これらを勘案して決められています。PFとの最大の違いは,民間に対するものでしたが,国際競争環境の中で,それぞれの施設とって必要と考えられることは次々と取り入れられています。ですから放射光施設も協力と競争の中で運営されています。

荒田

ビームラインを多いほど,上等であるということになるのですか。

宮野

元々の高エネルギー物理学は,たぶん重力のよってくるところを担う素粒子を探すのが今の一番の課題でしょう。しかし,一度アメリカテキサスに建設される予定だったSSC (Superconducting Super Collider) が中止になったように,コストと実用性との狭間で問題が生じるほどに大きな装置となってきています。庶民の科学を支えられるビームラインがたくさんできるということは一本あたりの価格を安く抑えることができるということになります。

これに対して,XFELは同時には当面1本だけしか使えないので圧倒的にビームタイムが制限されます。行うべき科学の質も対象も自ずと変わらざるを得ないと思います。


つづく

by yojiarata | 2011-07-28 17:25
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