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創薬 日本の現状と将来 Ⅵ


世界の中の日本


荒田

先ほど BBC Worldの番組 (Horizons Switzerland) に言及しましたが,Novaltis のCEOが,世界の製薬企業の10年後について,次のように話していました。

(1) 言うまでも無く,高齢化社会への対応が必要である。

(2) 今後は,製薬企業も,医療を取り込んだ形のものに変貌するであろう。

(3) 貧しい国の人々のための,感染症予防対策にさらに力を入れるべきである。

(4) それぞれの患者に対応する Personalized 医療が重要になる。

是非ともコメントをいただきたいのですが。

平岡

(1) 高齢化社会の対応は必要性が益々増大してゆくと思いますが製薬企業が関与できる面は全体の3割ぐらいではないでしょうか。そこの中での抗痴呆薬,抗がん剤の開発はここまでも述べましたが簡単ではなく長い時間がかかると推測されます。

老人介護施設の充実,高齢者医療保険の問題,病院の充実等政府の政策面での問題も非常に重要です。

(2)「製薬企業も医療を取り込んだ形」については各国の事情により差がでるのではないでしょうか。日本では純製薬企業よりも富士フイルム,テルモ,帝人など,後から薬の分野に参入してきた企業を中心に事業が展開されていくものと思われます。

(3) 貧しい国の人々のための感染症対策は世界的にみると対アフリカがメインです。日本ではその必要性と重要性はかなり広く理解されていますが,現実の行動という段階になると力の入れ方はそれほど大きくないと思います。日本でも現在抗マラリア剤の研究は行われていますが人数と研究場所は微々たるものです。いいにくいことですが抗マラリア剤開発に力を入れている国は軍隊をアフリカに派遣しているとか,天然資源取得関係で自国人が多くアフリカに在住している国です。またキリスト教関係者は宗教上の理由でこれを推進しています。

現在,先進国での死亡原因の1位はがんですが世界的には感染症がトップです。それはアフリカでの人口が多いのでそのような結果になります。日本ではあまり知られていませんが北里大学の大村智教授(北里研究所・所長)が微生物生産物から発見したアベルメクチンがアフリカで多く発生するオンコセルカ症(オンコセルカという回施糸状虫の感染によって発病,ブユが媒介)の特効薬として失明防止に貢献しています(米国メルク社発売)。このようなケースを除き,貧しい国の人々の感染症防止に貢献できるのは日本の場合,赤十字かOECDへの資金提供になると思われます。

(4) Personalized 医療については既に述べました。

荒田

最後にうかがいます。

基本的には,日本でなければという考えを捨てて,国際的な創薬研究コンソーシアムとでもいえるものに入って仕事をすることになるということでしょうか。そうなると,日本の製薬企業のアイデンティティーはどこに求めればよいのでしょうか。

天才児の生まれる確率は,日本も西欧も変わりはないのではないかと思います。そうなると,天地を揺るがすような創薬のアイディアがにほんでうまれることがありえるのでしょうが,この場合の日本の製薬企業,天才的な研究者はどうなるのでしょうか。

平岡

国際的な創薬研究コンソーシアムが出来る可能性は非常に低いと思います。しかし,例えば発がん機構に関する基礎研究で NIH と日本の大学が共同研究をするような可能性はあります。

普通細胞には寿命がある上,何か変なことが起これば自然に自殺遺伝子が働いて死滅するようになっています(アポトーシス機構)。がん細胞が無限増殖するのはこのアポトーシス機構が壊れて働かなくなっていると現在説明されています。しかし宇宙でさえも寿命があり,私は生物といわれるものにはすべて寿命があると思っています。なぜがん細胞のみが永遠に生きられるのかは(現在そういわれているだけで永遠に生きられるとの証明はない)不明です。天才が現われてそれを解明すればそれは画期的制がん剤の開発につながるかもしれません。物理学では粒子が非常に小さくなると粒と波の両方の性質を持つことが解明されています。たとえば光そのものである「光子」がそれです。これらと同時に「宇宙は曲がっている」などという説明は常識的感覚では理解できません。がん細胞も現在の分子生物学では理解できない,我々のもっている現在の学問と感覚では説明できない何かがあるはずです。これにつきNatureの解説記事の中に「がん細胞を進化論的に考える必要があるのではないか」との記事がありました。

ここで天才の出現が期待されているのです。日本でも感覚的には理解不可能で驚天動地の iPS細胞 が初めて作製されたのです。従ってがん細胞の分子生物学で日本でも天才が現れ,その特効薬開発に貢献する可能性は十分にあります。生物学の世界でアインシュタインのような天才が現れたとしたら,その人は会社の研究所では生きて行けず自然に大学へ移動するでしょう。

荒田

長期間にわたって丁寧に対応していただきまして,誠に有難うございました。





by yojiarata | 2011-06-30 13:05
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