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薬学部6年制 Ⅵ


自問自答する

6年制薬学について,先輩,友人諸氏と面談を重ね,必要な資料を集めてきた。6年制薬学を理解するためである。しかし,筆者の現在の心境を一言でいえば,あたかも“迷宮”に迷い込んだように困惑している。何が議論の前提で,何が結論なのか,はじめに結論と思っていたことが,気が付けば前提であったことが分かるなど,視界が全く開けてこない。

そのため,自分としては,どのように問題を捉えるに至ったかを自問自答形式にして記述する。ただし,ここの記述は,あくまでも,筆者自身の個人的見解であることをお断りしておく。

薬学部は何故6年制でなければならなかったのか?

大義名分

医学部,歯学部,獣医学部は6年制である。薬学部も6年制にして打って出なければ,社会における薬学の地位は何時までも現在のままの状況が続く。看板を新しくしようではないか! それに,西欧諸国を見渡しても,6年制でないのは日本だけである。世の中はグローバル化の時代である!

看板に書かれたことば
患者さんに必要とされ,患者さんの役に立つ薬剤師の養成を目指す。6年かけて4年制の薬剤師には十分でなかった数々の経験をして,医師とともに新しい時代の高度医療に貢献する。

社団法人・日本私学薬学大学協会の思惑

それぞれの私立大学には,文部科学省から私立大学等経常費補助金が支出されるが,財源は基本的には学生に依存する。4年制を6年制に移行すれば,入学試験,授業料などからの収入は,単純計算で50%の増加が見込める。

日本薬剤師会のロビー活動

調剤薬局の集まりである日本薬剤師連盟は,国会議員を擁立して長年にわたってロビー活動を行った。昭和47年(1972年)7月10日に開催された自由民主党薬剤師問題議員懇談会は,薬剤師教育検討チームの設置を決定した。構成メンバーのトップに据えられたのは,橋本龍太郎・第82代,第83代・内閣総理大臣(第52代・厚生大臣),森喜朗・第85代,第86代・内閣総理大臣の時代であった。これによって,厚生労働省,文部科学省に対する圧力団体が誕生した。この時の志は,日本薬剤師会に引き継がれ,今日に至っている。

6年制薬学部を創ってはみたけれど

6年制薬学部の誕生とともに,私立薬科大学の数は57校となった。これに,国立14校,県立1校,市立2校を加えると,薬科大学の数は全国で74校に達する。

薬学部の卒業生は,4年制の時代には年間6000人程度であったが,6年制に移行したあとは,約12,000人に達するものと推測されている。これは,やがて,同世代の若者の100人に1人は薬学出身者という計算になる驚くべき数である。

一体これだけの数の薬剤師を日本社会は必要としているのだろうか? 恐らくそうではあるまい。さらに重要な点は,12,000人もの学生が全て,薬剤師の国家試験に合格することなどありえない。6年制に移行することによって,国家試験の問題は,従来の240問から345問に増加し,個々の問題自身も難しくなる。そうなれば,多くの薬剤師浪人が巷に溢れることになり,これは大きな社会問題である。50%増しの教育費を負担している学生の家族にも,申し開きが立たない事態になる。

6年制になれば薬剤師としての社会評価も上がり,医師と密接に連携することができる高度な医療を支えることが可能になるという“謳い文句”が宙に浮いてしまうことになりはしないか。

では,6年制だけが悪いのか?

6年制という制度だけの問題ではない。これまでにも,4年制の薬学部の出身者が研鑽を積み,医師とともに高度医療に係っている薬剤師も医師も少なくないと聞く。要は,6年制であろうが,4年制であろうが,努力に努力を重ねた学生は,高い峰に到達できるのである。努力なしには何事も達成できないのは,なにも,薬剤師に限ったことではない。


つづく

by yojiarata | 2011-05-07 00:10
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