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ピエール・ロチをめぐって  江藤淳 芥川龍之介 仲間たち




ご隠居さん どうしたの。江藤淳とか芥川龍之介とか。頭の方は大丈夫?化学が専門じゃなかったの。

仰る通りです。だけど,化学が文学に意見を述べるのは,おかしいですか。

頭の方は,少なくとも現時点では,全く正常です(と思っています)。


おかしいといえば,” 御上” の方じゃないでしょうか。自衛隊の観艦式で,連合艦隊司令長官になったような演説をしてみたり,アメリカの原子力空母・ロナルドレーガンにオスプレーに乗っで飛んで行って,操縦席で,操作のまねごとをしてみたり,大体,日本の総理大臣がこんなことをしてキャッキャと喜んでみたりするのは,初めてだというじゃないの。噴飯ものというか。落涙止まずですよ。


それに,この点は,このブログを書くことにしたことと,無縁ではないのです。


それはどう有意味ですか。


これから書くので,読んでみてください。


***



君はとっくに忘れていると思うけど,小生は,2013年の5月25日のブログに,


ピエール・ロチが見た近代日本の夜明け  鹿鳴館からの出発


を書きました。西洋を模倣して始まった我が日本の近代化について,私見を詳しく述べました。

この点については,拙書 『自分をつたえる,岩波ジュニア新書,2002』 ( 自分を表現する原点:   世界の中の日本を考える 文明開化,鹿鳴館からの出発,西欧の土俵で相撲をとる,日本の伝統と美 103-119ページ)に文献を調べ,徹底的に議論しました。


***



つい最近,ふとしたことから,北村薫 『太宰治の辞書』 (新潮社,2015年)を図書館で借りてきて,パラパラとめくっていたら,【火花】 という最初の章に,驚くべきことが書いてあるのを目にしたんだ。


北村薫 によれば,渡辺一夫は,高校生の頃,ピエール・ロチの 『アフリカ騎兵』 に大きな影響を受けたんだそうだよ。のちの東大仏文の教師で,大江健三郎が師事した方です。私は,大学に入りたての頃,NHKラジオで放送されていた渡辺一夫のフランス語講座を聴いていた記憶があります。

北村の本をめくっていると,私の寓居の近くにある新潮社のことが書いてありました。同氏は,新潮社と親しいみたいですね。


北村の本(14ページ )には,「ピエルロチ  日本印象記(全) 高瀬俊郎訳」 を読んだあとで,【火花】 を書いたとあります。

何しろ,百年前に出版された本ですから,閲覧は容易ではありません。推察するに,北村は,新潮社でこの本を読んだのでしょうね。


こうゆう時は,私なら国会図書館です。検索してみました。さすがは国会図書館,ちゃんとこの本を所蔵しています。

国立国会図書館 所蔵
新潮文庫(1914)


***



私自身は,2013年の5月25日のブログを書くにあたって,インターネットの古書情報を通じて,これまでに日本で出版された『お菊さん』(野上豊一郎訳,岩波文庫,第22刷,1988),『秋の日本』(村上菊一郎,吉永清訳,角川文庫,五版,1988),『ロチのニッポン日記・お菊さんとの奇妙な生活』 (船岡末利編訳,有隣新書,第一刷,1979)をすべて入手しました。ここに,全部がそろっています。無理して,100年前の古色蒼然とした文章と装丁の本をさがして,読む必要などありませんよ。


【 ・・・・・ で私にとっては,彼の代表作が何であれ,この 『日本印象記』 こそ記憶に残るベストワン。なぜかといえば,これを元に芥川龍之介が,代表作のひとつを書いているからだ。
 

・・・・・ 江藤淳が最も愛する芥川の作品としてあげていたのが,これなのだ。はっきり覚えている。



芥川は,ロチの書いた「江戸の舞踏会」をそっくりコピーしたような「舞踏会」を書いています。江藤が感激したのは,まさに,この「舞踏会」です。


北村の著書には,次のように始まる江藤淳の文章が引用されています。

江藤淳 『芥川龍之介』 より。



【 「舞踏会」は,

明治十九年十一月三日の夜であった。

・・・・・

「舞踏会」という作品は,短編というよりむしろ掌篇といったほうがいい小品である。しかし,私は,おそらく百に余る芥川龍之介の作品の中で,この作品に最も愛着を覚える。ここには,初期の「鼻」や「芋粥」の軽妙な諧謔はない。晩年の「玄鶴山房」や「蜃気楼」の鬼気もない。いわんや遺稿として自殺の後に発表された「或阿呆の一生」や「歯車」の裡にひそむ追いつめられた作者の痛切な悲鳴もきこえない。なぜ私はこの作品が好きなのだろうか?

多分私は,鹿鳴館の夜空にきらめいて消える花火が好きなのである。

・・・・・ 

「仏蘭西 フランス の海軍将校」が,「教えるような調子」でいう,

「私は花火の事をかんがえてゐたのです。我々の生 ヴィ のやうな花火の事を」

・・・・・ 




江藤が,芥川の最高の作品と賛美する 「舞踏会」 も もちろん読みました。私自身は,そのあまりの子供ぽさに,ただ呆れるばかりでした。芥川は,「江戸の舞踏会」 のコ ピー のような短編 「舞踏会」 を発表したのです。


江藤淳は,本気でこの文章を書いたんでしょうかね。もしそうなら,化学から見ると,文学はあまりにも子供っぽいですね。江藤は,がん死した愛妻の後を追って,自死 (享年 66) したのですが,漱石の評論などで,一目も二目も置かれていた人ですよね。その江藤がね???


こんなことを言っては失礼この上もないかも知れないけど,文学というのは,植木等じゃないけど,” ♪ 気楽な稼業ときたもんだ!” ですね。これは,もちろん,一般論ではありませんので,誤解しないでください。





おしまい

by yojiarata | 2015-10-26 21:25 | Comments(0)

生命 と ミネラル   亜鉛の役割を例として考える




今回も,政治とは無縁の,真面目な話をします。


私の手元に,友人の原口紘炁 ひろき 博士が執筆された『生命と金属の世界』(日本放送出版協会,放送大学教材 1869299-1-0511,2008年2月20日,第3刷)があります。


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原口紘炁博士が,放送大学(ラジオ)で講義をされた時のテキストで,大変な力作です。

今回は,私が,私なりに理解した点のうち,その一部をこのブログで,原口紘炁博士との対談に再編集して,ここに掲載します。



***





荒田


初めに,人間と金属のかかわりについて,ごく簡単にお話しいただけませんか。


原口


人間は,生活の中で,さまざまな金属を利用してきました。石器文明の後に青銅器文明,鉄器文明とよばれる文明が誕生し,武器や農耕器具,生活用品に利用されました。古くから,金,銀,銅などは装飾品に用いられてきました。


荒田


歴史とともに,金属が辿った変遷について,まとめてください。


原口


図1は,ギリシャ時代(A)と中世の錬金術の時代(B)に使われていた元素の記号です。


【図1】

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荒田


カワイイというか,面白いですね。



原口


続いて,元素が発見された年代をまとめておきます。


【表1】

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原口



人間は古代から,金(Au),銀(Ag),銅(Cu),水銀(Hg),鉛(Pb),鉄(Fe),亜鉛(Zn)などの金属を利用していました。


荒田


次に,人間の体内にある元素についてお話しいたけますか。


原口


人体に多く存在する元素を,常量元素とよびます。正確に言えば,「常量元素」とは,人体中の存在量が 0.01% より多い元素です。


【表2】

【常量元素の体内存在量と機能】

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荒田


ヒトの健康には,金属元素が深く関わっていると理解しています。この点について,説明をお願いします。

とくに,ここでは,亜鉛について詳しく知りたいのですが。


原口



元素の過剰症と欠乏症




生命活動を円滑に保つには,体内に元素が,過不足なく,バランスよく,分布していなければなりません。


【表3】 に,元素の機能と,欠乏症および過剰症の例を示します。

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荒田


それでは,亜鉛欠乏症について,詳しくお話し下さいませんか。


原口


微量の亜鉛の存在が,人の健康な生命活動にいかに重要であるかを説明します。


【表4】 には,亜鉛の働きと欠乏症についてまとめてあります。


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生体内亜鉛の働きと欠乏症について


代表的な機能は,酵素活性の補因子として,タンパク質代謝,脂質代謝,糖代謝,核酸の代謝(DNA合成,RNA合成),細胞分裂の制御(細胞代謝)といったように,生体内の物質の合成,代謝,そして機能発現のほとんどに深くかかわっていることです。


欠乏症の典型的な例としては,味覚障害があります。味覚障害は,舌の表面にある味覚センサーである(みらい)の細胞代謝の問題です。すなわち,亜鉛欠乏になると,細胞代謝機能が低下し,味蕾細胞の新陳代謝が起こりにくくなり,いつまでも古い味蕾細胞で味を感じますので,味覚に対する感度が悪くなり,味に対する感覚が弱くなるのです。


DNA,RNAの合成酵素は,亜鉛酵素です。すなわち,生体内に亜鉛が欠乏すると,遺伝子レベルで致命的な障害を生じる可能性があります。また,亜鉛欠乏は易感染症(病原性細菌やウイルスによる病気に感染し易い)も引き起こすといわれています。その他,亜鉛欠乏症として矮小発育症(小人症),腸性肢端皮膚炎,脱毛症などが挙げられます。


医学部のある先生の話では,東京都内のある女子大の学生の食事を調べたところ,亜鉛の一日摂取量が7-8ミリグラムであったとのことです。亜鉛の一日摂取量の基準は15ミリグラムですから,これでは明らかに亜鉛欠乏症になってしまいます。ダイエットしていると,知らず知らずのうちに亜鉛欠乏症になるのではないでしょうか。


若い間は何とか体力を維持できても,歳をとってからの健康が心配です。最近,若年性の子宮内膜症が増えていると聞きます。子宮内膜症も細胞代謝の問題ですから,もしかすると,亜鉛欠乏と関係があるかもしれません。



荒田


ご協力,誠に有難うございました。





未完

by yojiarata | 2015-10-18 17:21 | Comments(0)

TPP交渉   薬価 と 新薬開発




このブログは,本年8月4日に執筆,掲載した記事に,新しいデータを加えた加筆改訂版です。



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以下は,今年の夏に書いたブログの記事 です。


最近の新聞には,TPPのことが毎日のように話題になっているよね。


たとえば,7月25日の記事


環太平洋経済連携協定(TPP)の参加12カ国による首席交渉官会合が7月24日(米国時間),米ハワイ州のマウイ島で始まった。4日間の日程で難航する分野を中心に話し合い,28~31日の閣僚会合での全体合意をめざして,詰めの協議を進める。


実務者同士で話し合う首席会合では,知的財産権の保護や国有企業の優遇措置などが主なテーマ。知財分野では,新薬のデータの保護期間をめぐり,新薬メーカーを抱えなるべく長くしたい米国と,安価な後発薬の利用が多く,期間を短くしたいオーストラリアや新興国などとの対立が続く。


また,今秋に総選挙を控えるカナダが,乳製品や鶏肉の市場開放で態度を硬化させ,他国との交渉に与える影響が懸念されている。


主要国である日米の協議では,日本が輸入するコメ の扱いが焦点だ。日本側は関税をゼロか低くする新たな優先輸入枠をつくることを検討しているが,両国の主張には隔たりが残る。


今朝 (8月2日)の新聞には,

TPP,月内にも再会合

合意見送り 新薬・乳製品で溝


とあります。



***




前回の記事に,新しい資料を付け加えました。  



10月5日,アメリカアトランタで合意を祝う拍手と共に,TPPが,5年半もの長い交渉をへて,ようやく大筋合意しました。ノーベル賞のニュースと時期的に重なったため,TPP交渉が妥結したという重要な問題がいささかかすんだ感じでした。



*



アメリカでは,薬価を決める連中が,ひどく権力を持っていると聞いています。薬価とTPPの関連の問題は,知らない人があまりに多すぎます。そして,知らないで済ますには,事は余りにも重大すぎます。


日本ではどうなのかを含めて,出来るだけ大勢の先輩,友人に話を聞いてみました。

その結果を私なりに編集して,以下に収載います。


今回のTPP交渉は医薬品の特許で保護される期間の交渉が問題になっているのだと新聞記事から判断されます。


特許解禁期間が短くなれば価格の安いジェネリック品がでまわり新薬創出国のアメリカは損をすることになり,オーストラリアと新興国は得をすることになるからです。しかし,今回のTPP交渉ではアメリカと他の国との薬価差は議論対象になっていないと私は推測しています。


現実的には別の意味で日本の厚労省は超高薬価のアメリカ製の薬の日本での発売をすぐには認めない態度を最近はとっています(日本流のpending)。


理由は単純でこれらを科学的根拠に基ずいて許可すると日本の医療費がパンクして日本の健康保険制度が崩壊するからです。以上の理由で今回のTPP交渉とアメリカの超高価薬(スカイロケット薬)は全く別項目として取り扱うべきと思います。


アメリカでは,億万長者,アメリカの中流以上でかなり高額の民間健康保険に入っている人しか使用できません。「1年の延命で1500万円?」の表現を目にします。制がん剤に限定した表現で,ご存じのように,がんは早期発見手術以外は薬での効果は 20-30 % ぐらいしか期待できないからです。それも中期以降のがんでは薬での完治はむずかしいにもかかわらずこれだけの高額の費用がかかるからです。


日本での薬価は製薬会社が開発にかかった費用と希望するもうけの費用の合計を申請しこれがあまりにも高額の場合は差し戻しとなり協議・交渉となります。アメリカでは製薬企業が申請する費用がそのまま認められることが多いので,スカイロケットとなる訳です。アメリカの自由主義は民間会社の製品の値段に政府が介入することは許されません。値段が高すぎれば売れないだけと判断されます。


現在のところ,新薬の開発では,アメリカが独走態勢にありますからね。

今後は,大金持ちがお金で命を買う事態と,お金がなく,死ぬとわかって,死を待つ事態に分かれていくのかもしれません。


アメリカでの薬価が日本での常識では考えられないくらい高額です。参考として国際開発薬事コンサルタントの羽石達生氏による「国際医薬品情報 2015年9月28日号(通巻第1042号)の8ぺーじから始まる記事の中に表が公開されています。




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いずれにしても年間コストはスカイロケットそのもので米国での民間保険に入っていなければ支払不可能と思われます。私も,連れ合いがアメリカで出産を経験していますので,米国でのオバマケアとか民間の健康保険制度をもう少し知りたいと思っています。



この記事の執筆に当たっては,平岡哲夫博士に資料など,提供いただきました。記して感謝の意を表します。






未完

by yojiarata | 2015-10-10 18:09 | Comments(0)