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理化学研究所  その実像と虚像   巻の一



ご隠居さん 理研のことを書く気になったの。

小保方事件 は,潮が引くように,人々の記憶から消えてしまったんだけど。



***




【 国立研究開発法人・理研 】



平成27年4月1日をもって誕生した!



理研が引き起こした問題は単純ではなく,小保方事件は,氷山の一角で,起こるべくして起こったのです。


理研(理化学研究所)は,平成27年4月1日から,「国立研究開発法人」になりました。4月1日付で,松本絃・元京都大学総長が,新しく理事長に就任されました。専門は超高層電波の研究だそうです。ちなみに,野依良治・前理事長は,有機化学が専門です。


順に,ゆっくり,詳しく,徹底的に書きますが,この 国立研究開発法人 というのが ” 味噌 ” です。最近,理研が総力を挙げて取り組んでいたのが,国立研究開発法人の地位を得ることだったのですからね。それには,Nature などの ” 有名国際誌 ” への多くの論文の掲載,ノーベル賞級の業績が不可欠です。文部科学省の官僚たちにとっては,内容はどうでもよくて (というより,分らないので),数と評判が途轍もなく重要なのです。


*



筆者訂正追記 (平成27年4月21日)

関係者の方から頂いた下記のコメントをもとに,記事を一部訂正しました。


この4月1日で「国立研究開発法人」となった機関は 31 機関。文科省関係だけでも 8 機関あります。独立行政法人が 3つ に類型分けされ,そのうちの一つが 「国立研究開発法人」 です.

理研はその業務が 「研究開発」 なので,文科省関係では,JAXA, NIMS などと一緒にこの類型に入りました。
この法人の説明は ウェブに掲載された資料 が参考になると思います。


*





私の推測になるのですが,小保方事件を含めてこれまでの不思議な出来事は,どれもこれも,” 国立研究開発法人の地位を得る” というこの一点で焦点を結びます。


現在の理研内部における行政的な流れは,日本の科学行政の過去,現在,そして未来を色濃く映し出しているような気がします。 


以上の理由で,ここらで,理研に関する 詳細な解剖結果 を,是非とも書きたい(書かねばならない)と決めたのです。


時間が少々かかりましたが,少々頭の整理が付いてきましたし,資料も,十分とは言えないまでも,必要な情報が私の手元に揃ってきました。



*



このブログ 理化学研究所 その実像と虚像  は,次の八話で構成されています。


「巻の二」 からあとの七話には,それぞれリンクが張ってありますから,ここで ざっと目を通していただくこともできます。



巻の一
理研の組織と大学の組織 


巻の二
巨大国家プロジェクトの成り立ちと日本の科学行政


巻の三
巨大国家プロジェクトの一つである 「タンパク 3000」 が生み出した研究成果の評価


巻の四
理研の理事長の交代,理研の運営管理


巻の五
「タンパク 3000」 が遺した遺産とその戦後処理


巻の六
野依良治・理化学研究所・理事長(当時)宛ての筆者の書簡


巻の七
「タンパク 3000」 に関する情報開示請求


巻の八
理研への ”応援歌”



*


理研とは如何なる組織か



はじめに,

理研のウェブ・ページ

を見てください。理研の 資料 に掲載されている 図の中から7 枚を追加します。


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要するに,理研はその膨大な予算が,国民の懐から湧き出す税金によって運営されている巨大な組織です。

なお,おわり (7番目)の図は,「巻の二」以後の議論の最大のポイントになりますで,とくに注意して,覚えておいてください。現在の理研が抱えている様々な問題の源流は,広い意味でのコミュニケーションの欠如ですから。



理研に所属する人員 は,平成26年4月1日の時点で,役員8名を含めて,3502名です。

理研では,ポスドク (博士研究員)を含め,事務職の職員のほかは,全てのスタッフが,原理的には,研究に専心する人たちです。この後,大学と比較しますが,大学では,4年間 (医学部では6年間) の学生時代がありますから,人員の数で,大学とは比較できません。学生の教育という点を除くと,理研は,大きな国立大学とほぼ同程度の規模です。

つまり,理研は,日本では他に比べるもののない,潤沢な予算に恵まれた研究の ユートピア と言えるのではないでしょうか。


*



国立大学・学校法人との比較




比較のために,全国の国立大学・学校法人のなかで最大規模の 東京大学 の例を引用します。



理研と比べるために,このウェブ・ページの中から,図と表を切り取って掲載します。



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東京大学 学部,研究科,附置研究所


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私と理研との接点



ここで,責任の所在を明確にするため,私が理研と係わりをもつことになった経緯を略記しておきます。


2000年 ― 2005年 の間,理化学研究所・研究顧問 として,和田昭允・ゲノム科学総合研究センター(GSC)所長(当時) のアドバイザーを務めました。理研では,総額・数百億円を投じた巨大プロジェクト タンパク3000 が進行中でした。


私は,一貫して,このプロジェクトに批判的であると和田所長に進言しました。野依理事長のオフィッスにも2回参上して,”このままではまずいのではないでしょうか” と,私の考えを伝えました。

結局,私は何のお役にも立たないまま,プロジェクトは終了しました。


「巻の二」 に進む前に,以上の内容に繰り返し目を通して,貴殿の頭を整理しておいてください。





つづく

by yojiarata | 2015-04-18 23:56 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像   巻の二



それでは,ご隠居さん自身のお考えを聞かせてください。


***



タンパク 3000プロジェクト に見る

国家プロジェクトの成り立ちと問題点



文部科学省は,自らの管轄下にある理研で,極めて広い分野にわたって,様々な 国家プロジェクトを立ち上げ,巨額の予算を注ぎ込んでいます。

ところが,この国家プロジェクトなるものが,日本の国公立・私立大学などの研究組織などには見られない,理研独自の世にも不思議なものです。


話を具体的にするために,2002年4月から2007年3月までの5年間実施された タンパク 3000 プロジェクト を取り上げます。


様々な切り口で,この巨大プロジェクトを徹底的に分析すれば,プロジェクトの実像,延いては,プロジェクトの舞台となった理研の 「実像と虚像」 が浮かび上がってくるはずです。


何故,タンパク 3000 プロジェクトを取り上げるのか。


研究分野が私自身のそれに近いこと,プロジェクトの進行当時,不肖・私がプロジェクトの総責任者である和田昭允・ゲノム科学総合研究センター(GSC)所長のアドバイザーを務めていたのがその理由です。




このプロジェクトの研究費の大半は,NMR分光計の購入に使われる


I T 技術などの進歩によって,実験科学の分野の研究法が大きく変化,進歩してきました。そのうちの一つが,実験に使う高性能の高額機器の導入です。


タンパク 3000 プロジェクトの特徴は,研究費の大半を,高額の 核磁気共鳴(NMR)分光計 が占めていることです。NMR分光計は,(種類にもよりますが),当時の価格で,1台につき1億円と考えておいてください。


ちなみに,私が現役の頃の1900年代に終わり頃には,装置は未だ十分に進歩していなくて,価格が1台数千万円でした。我々研究者にとって,そのための予算を獲得するのが夢でした。当時は,特別推進研究を申請し,一生に一度の機会を生かすべく努力したものです。私も,大阪大学薬学部の冨田謙吉教授(故人)と共同で,当時の最高機種であった600MHz分光計を申請しました。ヒアリングの場で,申請した研究の必要性を熱烈に訴えましたが,敢え無く落選しました。


その時の審査委員長は長倉三郎・東大名誉教授,2名の審査員のうちの一人が,野依良治・名古屋大学教授(当時)でした。今にして思うと,因縁を感じます。非常勤顧問として理研に存在していた頃,野依良治・理事長(当時)のオフィッスを,両三度訪ねて,愚見を申し述べましたが(後述),理事長は,あの時の私の 「熱演・討ち死」 の顛末をよく覚えておられました。


あの頃に比べますと,タンパク 3000 プロジェクトにおける研究費のモンスター化に驚くばかりです。


聞いたところでは,後にこのプロジェクトのプロジェクト・リーダーとなる彼の人は,理研の理事会で,NMR分光計を100台導入するという,奇想天外な案を提出し,熱弁を振るった結果,理事会の承認を得たということです。和田昭允・GSC所長(当時)も,あの厳しい理事会を突破したのだからスゴイと感心しておられました。

「栴檀は双葉より芳し」 といいますが,この詞は,彼の人のためにあるようなものです。


内閣府(後述),文部科学省もさすがに驚いたらしく,結局,台数は10分の1に削られました。それにしても,当時の常識から言って,物凄い偉業だったのです。


*



現在,化学や生物化学で利用されている NMR は,戦後すぐの頃,アメリカで誕生しました。NMRはその後,読者がよく御存じの MRI に変身し,医療の現場に革命を起こしました。


NMR,MRIの研究によって,何人もの研究者がノーベル賞を受賞しています。ここで話題にしているプロジェクトの国際評価委員会のメンバーにはその内の一人 Kurt Wüthrich 博士 (2002年ノーベル化学賞受賞)が加わっています。


ここで議論の対象となる一大国家プロジェクトは,3000 種のタンパク質の立体構造を,NMRを用いて決定するのが目標です。


タンパク質の立体構造を決定する手段としては,X線結晶解析法が,古く1950年代に確立しています。これに加えて,Wüthrich 博士によって確立されたNMRを用いる方法があります。この方法では,水溶液中のタンパク質の構造を決めることが出来ます。



何故 3000 なのか?



「タンパク 3000 プロジェクトの産んだもの」 (蛋白質 核酸 酵素 2008年 4月号)の冒頭の記事 中村春木・月原冨武 特集にあたって の 597ページ から 引用します。


このプロジェクトは,2001年9月に総合科学技術会議が研究開発目標のひとつとして定めた” 蛋白質構造・機能解析 ” を具体化し,30% 以上の配列相同性をもつ 蛋白質集団として定義される ” ファミリー ” の代表構造(当時は,ファミリーの総数は1万個程度と推定されていた)を国際協力によって決定するため,その3割程度の寄与 (1万個の3割で3000個の構造決定を行なう)を努力目標とした国家プロジェクトである。



しかし,NMRには限界があります。タンパク質分子が大きくなるにつれて,NMRによる解析が困難になるのです。他にも,数々の問題点があるのですが,この点については,この記事の後半で,徹底的に議論します。

以上の諸点を念頭に置いて,次に進んで下さい。


*




まず,すぐ上に紹介した「特集号」から始めましょう。プロジェクトの成果が,プロジェクトに参加した研究者全員によって書かれています。


特集 月原冨武・中村春木
 
タンパク 3000 プロジェクトの産んだもの

蛋白質 核酸 酵素 2008年 4月号 (共立出版)



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不肖 私も,一文を寄稿 しました。そこの書いた私の考えは,今に至るも全く変わっていません。

私が執筆した 647 ページを御覧ください。


報告書(筆者注:今や,この世に存在しません,後述)を読む限り,プロジェクトとはおよそ縁のなさそうな研究室が少なからず含まれているのが気になる。ある大学教授はつぎのように語ったという。


「研究費を確保できるので,違和感を覚えつつ多くの研究者が参加した。皆で 毒まんじゅう を食べた」

(2007年9月28日付,日経産業新聞 朝刊10面




この特集号を子細に見ると,子供のおもちゃ箱のようです。いろいろ書いてあるけれど,理研で行われた研究を除くと,このプロジェクトに直接つながる研究はごく僅かで,このプロジェクトに参加させてもらって,研究費の恩恵に浴した研究者が大半を占めます。率直に言わせていただければ。



研究成果の報告書が,ネット上から消えた


プロジェクトの終了後,2007年9月に,理研からの報告に基づいて,文科省が早々と作成した 492ページにおよぶ長大な報告書がウェブに掲載されました。


http://www.mext-life.jp/protein/evaluate2007/


このサイトは消去されていて,今やこの世に存在しません。こういう重要な報告書は,速報性を重んじ,すぐに消すことの可能なウェブに加えて,何らかの方法でアクセスできるようにしてもらわないと困ります。

やったら,やりっぱなし,これでやれやれ安心と胸を撫で下ろす人もいれば,温故知新,日本の将来に思いを馳せる人もおられるに違いありません。それに忘れてはならないのが ” 無関心層 ” の存在です。選挙の時と同じです。自分には関係ない,どうでもよいというわけです。

このブログ全体を通じて私が伝えたいのは,理研においては,その組織と予算を適正に生かすには,柔軟なコ ミュニケーションの体制を創り上げることが本質的に重要であるにもかかわらず,現実はそれとはほど遠いものであったということです。

誰の責任かと問えば,社会の常識では,理研の理事長 ということになるのでしょう。しかし,実際には,問題はそれほど単純ではありません。


*



筆者追記(平成27年4月20日)


理研の情報公開窓口の方から,文科省が消してしまった報告書を,ウェブで読むことができる ことを知らせていただきました。


*




現時点で,私が手にしている情報はこれだけです。


以上述べた点を考慮し,このプロジェクトのそもそもの成り立ちに立ち戻って議論する必要かあると,私は判断しました。巨額の税金が使われているんだから,国民にとっても,無関心で済ますことができない,大問題ですからね。





日本の科学行政とタンパク 3000プロジェクト




以下,私の知る限りのことをもとに,議論を進めます。理研側の資料が必要なので,現在,プロジェクトの立案からプロジェクトの終了に至るまでの研究の流れ,研究の成果,評価について プロジェクト・リーダー,理研の理事長,理事をはじめ執行部によって,どのように記録しているのかについての情報公開を申請しています。資料が送られて来たら 「巻の七」 に掲載します。




巨大プロジェクトのスタート



総額 535億円が投じられたこのプロジェクトは,2001年9月,内閣府によって運営されている総合科学技術会議(座長,内閣総理大臣)が,研究開発目標のひとつとして定めた” 蛋白質構造・機能解析” を具体化するための方策の一つとして,この世に生まれたものです。

この会議で一体何が議論され,何が,どのように決まるのかに疑問をもった私は,内閣府がウェブ・ページに公開している資料を徹底的に調べました。その結果は,拙書


荒田洋治 『日本の科学行政を問う 官僚と総合科学技術会議』 (薬事日報社,2010)


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に詳述しました。


私の率直な感想を述べれば,これは,官僚の用意した「書類」を囲む 政治家と官僚たちの雑談の会です。凡そ,真面目なサイエンスの議論とは言えません。これが日本のサイエンスを動かしている組織かと思うと,暗澹たる気持ちになりました。


タンパク 3000 プロジェクトが,このような土壌から生まれたことを強調したうえで,これからの私の議論を読んで下さい。以下の記述は,私が理研で非常勤顧問を勤めていた 2000-2005年 に見聞したことが基になっています。



巨大プロジェクトはどのように進行したか




①  文部科学省の認可がおり,理研でプロジェクトが始まった後は,プロジェクト・リーダーが,実質的にすべてを取り仕切る。


➁  プロジェクト・リーダーは,何名かのグループ・リーダーを配下に置く。グループ・リーダー達は,プロジェクト・リーダーに指示された筋書きに従って研究を行う。


③  プロジェクトの状況については,ひと月に一回開かれるGSCの全体会合(座長,和田昭允GSCセンター長)に報告される。この会は,GSCに関するすべてが話題にされる。この会には,アドバイザーの私も出席するように求められが,何が決まるという代物ではなく,例えば,研究所内の自動車の速度制限なども話題になる,雑談の会。


④  別に,GSCのすべてのプログラム・リーダーの会があるようです。この会には,私は,無論出席していませんから,何が議論されているかは知りません。これは,私の推測ですが,自分のプロジェクト以外の研究については,おたがいに口出しはしない慣わしのようです。


⑤  お金をどのように使ったかは,それぞれのプロジェクト・リーダーから,理研・事務部を通じて,文部科学省に報告されます。



一言でまとめると,それぞれのプロジェクトは,完全な独立国家で,やろうと思えば,予算の範囲であれは,プロジェクト・リーダーの意のままに如何なることも実行可能です。



突拍子もない喩えになるのですが,安倍内閣の政治のようなものです。手続きはちゃんと踏まれているから,外から文句のつけようがないし,絶対多数の独裁政権だから,その気になれば,自衛隊の海外派遣でも,戦争でも,何でもできるのです。


理研のことを考えていると,ふと,現在の安倍政権のことが頭に浮かぶことがあります。「巻の三」から後も,突然脱線するかもしれませんが,驚かないで下さい。






つづく

by yojiarata | 2015-04-18 23:55 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像  巻の三







プロジェクトが生み出した成果をどう評価するか





再び,「タンパク 3000 プロジェクトの産んだもの」 (蛋白質 核酸 酵素 2008年 4月号)の冒頭の記事,中村春木・月原冨武 特集にあたって  の597ページから引用します。


解析された蛋白質の構造数は,報告書 (筆者注:上記のウェブ・ページ,現在,消滅) によると4500をこえており,PDBデータベースに登録されたものだけでも3000をこえるとされている。この中には,生物学的にきわめて重要な新規の蛋白質構造や核酸などとの複合体もあれば,機能解析のために重要であるが新規な構造とは言いがたい変異体の構造も含まれている。


ここに書かれたコメントは,私の考えでは,慎重かつ大変に控え目です。



*



筆者の意見


ここで,私自身のコメントを,ストレートに書かせていただきます。次の譬え話を読んで下さい。



大相撲で,優勝したお相撲さんが,取れ立ての巨大な鯛をぶらさげて写真撮影に応じるのが恒例になっています。


① タンパク質のことを知りたければ,生きたままの鯛を対象としなければなりません。


➁ ところが,この鯛を食するためには,包丁で切り刻むことになります。目玉を含む頭を御汁にして楽しむ,胴体を刺身にして賞味するなどです。料理の対象としては,これが常道です。


③ ところが,タンパク質の構造解析では,こんなことをやってはなりません。切り刻んでしまっては,鯛としての実態が失われ,いくらNMRで解析するためとはいえ,解析結果が意味不明のモノになります。

つまり,タンパク質の場合には,

1 + 1 は 2 とは限らないのです。

これが,機能をもったタンパク質の特徴ですから。


④ 別の言い方をすれば,タンパク質は生きているのです。


⑤ それに,鯛には鯛の事情があります。2本のヒゲもあれば,鱗もあります。タンパク質化学の言葉でいえば,転写後修飾です。タンパク質には,糖鎖が付いているものが少なくありません。糖鎖が無くなると,機能が失われることが多いのです。タンパク 3000 の時点では,大腸菌の発現系が用いられています。この場合には,糖鎖をもつタンパク質が発現されることはありません。


⑥ 理研のグループが発表したデータは,報告書(現在は消滅,読めません。上述。)によりますと4500,そのうち,タンパク質構造のデータベースであるPDBに登録された数は3000以上です。しかし,その中に,生化学的に意味のあるタンパク質がどれくらい含まれているのか,全く不明です。

大きなタンパク質の場合(タンパク 3000 の頃には,分子量 2-3万以上というのが常識的な数字でした)には, 鯛の喩えに書いたように,切り刻まれた結果として得られた断片の構造です。”創薬” に関しては,役に立つ成果は全く無いといってよいのではないでしょうか。


⑦ ある高名な日本の研究者が,理研のグループの研究成果は,ほとんどジャンクだと言ったして,一時,物議を醸したことがあります。Nature のオフィッスからの電話に答えたコメントです。私は,このコメントは,見当違いとは思いません。理研のグループの” 数合わせ” の理屈に全く賛同できないからです。



*




今のところ,私に言えるのはここまでです。ともあれ,プロジェクトは,2007年に終わりました。

「人の噂も七十五日」と言いますが,月日の経つのは早いもので,あれから10年近くが経過しました。現在の大学院生は,小学生 だったんです。「タンパク 3000」 なんて,何も知らない学生ばかりじゃないでしょうか。


まさに,あの恐ろしい太平洋戦争を,言葉でしか知らない現代の青少年のように。この連中に,いくら言ってもわからないのです。実感がないんですから。そのうち,自分の父,親類縁者が海外で命を落とすような事態になって初めて気が付くんでしょうけど,「時すでに遅し」なのです。


とにかく,評論家の言葉ではなく,自分自身の頭で,よく考えてもらいたいですね。



*




話が少々横道にそれるようですが,信州大学の山沢清人学長が,8学部の新入生約 2千人を前にして, スマホやめるか,大学やめるか と演説されたそうです。


山沢学長は,昨今の若者世代がスマートフォン偏重や依存症になっている風潮を憂慮し,「スイッチを切って本を読み,友だちと話し,自分で考える習慣をつけ,物事を根本から考えて全力で行動することが独創性豊かな学生を育てる」と語りかけたとのことです。


” 麻薬中毒 ” になる人々が世界中で増える今,よくぞ言ってくださったと,感銘を受けました。電車の中で見る,中毒患者の目は異常で,怖いですよ。


*



「天災は忘れた頃にやって来る」 といいますが,まさに忘れた頃,STAP細胞はあります 騒動が起きたのです。タンパク 3000 は横浜で,STAP騒動 は神戸で。要するに,理研は,タンパク 3000 の教訓をケロッと忘れているんです。何の反省もなく。困ったことです。





つづく

by yojiarata | 2015-04-18 23:54 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像  巻の四






理事長の交代と理研の改革



今のままでは,いくら理事長が交代しても,理研が抱えている問題の根本的な解決にはならないと思います。何故か。私の考えを以下に述べます。


理化学研究所の理事長に 4月1日付で,松本紘(ひろし)前京都大学総長(72)が就任されました。


さらに,4月10日の新聞に,小保方事件の舞台となった神戸市の理化学研究所多細胞システム形成研究センター(CDB)のセンター長に,4月1日付で,浜田博司 はまだ ひろし 博士が就任されたとあります。


「研究者採用では幹部だけではなく若手の意見も聞いていく。不正が二度と起こらないようにし,すばらしい研究成果を発信したい」

 
期待しましょう。


*



松本新理事長のお言葉が新聞に掲載されています。重要な点を拾ってみます。


大きな見出し


STAP幕引き

「新法人」に視線

理研・松本理事長就任 政府と共同歩調




*



政府と共同歩調というのは,何でしょうね?

日本で唯一の国立研究開発法人にしていただいた文部科学省に, 借りを返す ということなんでしょうか?





続いて,新聞によると,こうなっています。



松本氏はSTAP論文問題を受けた理研改革の道筋はついたとし,世界的な研究機関にする意欲を示した。科学技術の成長戦略への活用を狙う政府も,研究力を高めるため理研を優遇する制度の導入に動き,STAP問題の幕引きが急速に進む。


論文問題については,外部有識者委員会による「改革の道筋がついた」との評価書を引き合いに,真相究明はこれ以上しない姿勢を示し「粛々と対応したい」 と繰り返した。



粛々だなんて,菅官房長官じゃないけど,政治家が好んで使う滑稽な表現ですよ。噴飯ものですね。この部分を読んだだけで,コリャダメだと思いました。直観的に。その内,粛々が流行語になって,中学の学芸会なんかに使われ始めるかも知れませんよ。その時は,大爆笑間違いなしですね。




新聞記事は次のように続きます。




政府が,世界最高水準の研究機関作りに欠かせないと考えるのが,理研と産業技術総合研究所の新法人への移行。トップの判断で,研究者の給与を厚遇して国内外の優秀な研究者を集め,厳しい成果主義も導入できるようになる。


何を根拠に,こんなことを仰るんでしょうね。

 
ただ,STAP論文問題は行きすぎた成果主義が背景とも指摘される。松本氏は「研究者の豊かな発想は重要だ。成果主義でなく好奇心。そこが重要だ」と語った。



組織を運営する側が常に念頭におくべき,哲学の徹底的な議論がこれまでに全くなかったなど,問題の根深さの認識が欠如していますね。





どうして,こんなことになったのか



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野依良治・理研・前理事長 (平成27年3月23日)



ひとことで言えば,理研所内でのサイエンスに関する情報のやりとりが不十分だったという点に注目すべきですね。理事長をお殿様だとすれば,” よきに計らえ ” では困るでしょう。


前・理事長が有機化学,新・理事長は超高層電波の専門家だから,ご両人とも,例えば,タンパク 質にしても,STAP細胞にしても, 我が指の感触 が皆無なのです。耳学問の知識 だけしかないのですからね。


そうなると,理事長の仰る世界的な業績を上げるためには,組織の長たるもの,指揮系統を明確にしなければまずいのではないでしょうか。


理研なら理事長,企業なら社長だけではありません。組織内に点在する,いわば一里塚で仕事をしている人などが重要な役割を果たすことが多いのです。



組織の中の重要拠点を網の目のようにつなぐ柔軟でダイナミックなネットワーク を構築することが必須ですよ。組織を高いレベルで動かすでは,聞く耳をもたない,感度不良のメンバーは役に立ちません。


「巻の一」に掲載した理研の資料の中の7枚目の図  理研 の 統治体制 をみながら,もう一度,私がすぐ上に述べた部分を読み直してください。

統治体制 なんて,日中戦争から太平洋戦争にかけての嫌な出来事がふと頭に浮かぶ気持ちの悪い言葉ですね。詞は怖ろしいけど,理研の最大の問題点は,まさにこの部分が全く機能していないことだと,私は思っています。


スポーツでいえば,現場を広い視点で取り仕切る監督,コーチの存在が重要です。


アメリカン・フットボールのテレビ中継を見ていてすぐに気が付くことがあります。グランドにいて指揮を執るヘッド・コーチがヘッド・ホーンを付けて,つねに,上の方を見ているでしょう。あれは,競技場のはるかに上に設置された席から,オフェンス,ディフェンス全選手の動きをヘッド・コーチに,間断なく伝えられています。つまり,試合に関する情報がつねにチーム全員に流れているのです。


要は,大きな組織をまともに動かすためには,十分に広い視点に立った判断が必須なのです。


ここで強調しておきたいことがあります。それは,いま議論している問題は,理研にだけ当てはまるもの
ではないということです。


企業では,利益を上げないと倒産してしまいますから,社長以下全社員が必死に働いています。ところが,官庁の職員の場合は,必ずしもそうではありません。親方日の丸 というではありませんか。

蛇足ながら,広辞苑には,

(親方は国家であるの意) つぶれる心配がないということから,公共企業体などの経営が,ともすると安易になりがちであることにいう。


と書いてあります。


*



以上の点に関連して,次のエピソードについて書いておかなければなりません。


その昔,阪神タイガースのあるピッチャーが,チームの連敗が続いているとき,


”上がアホなチーム” では,まともな野球はやっていられないと言ってクビになりました。どうも,これはマスコミがでっち上げた作り話らしいんですけど,”上がアホ” なチームでは,まともな野球はできない” というのは,言い得て妙 と感心したものです。



上に立つ人に要求される資質については, 勝海舟 がこんなこと言ったと記録は伝えています。



【ここにおかしな話がある。何も時事を諷するわけではないが,おれが始めて亜米利加へ行って帰朝した時に,御老中から,「その方は一種の眼光を具えた人物であるから,さだめて異国へ渡りてから,何か目をつけたことあろう。つまびらかに言上せよ」とのことであった。そこでおれは,「人間のすることは,古今東西同じもので,亜米利加とて別に変わったことはありません」と言って,再三再四問われるから,おれも,「さよう,少し目につきましたのは,亜米利加では,政府でも民間でも,およそ人の上に立つものは,皆その地位相応に怜悧でございます。この点ばかりは,全くわが国と反対のように思いまする」と言ったら,御老中が目を丸くして,「この無礼者控えおろう」と叱ったっけ。ハハハハハ。】


高野澄(編訳)『勝海舟文言抄』 (徳間書店,1974,238ページ)




ところで,前・理事長は,辞任にあたって,つぎのように仰ったそうです。



「(研究不正が原因で) 組織の長が引責辞任した例は皆無だ」 と述べ,STAP 論文問題での引責辞任を暗に否定した。


野依氏は研究不正の最大の責任者を 「現場の研究者たち」 と指摘。理研としての対応の遅れや説明不足が批判された点は 「最善を尽くしてきた。ただ,科学的な検証に(必要な時間) と一般社会の求めるスピード感に乖離 かいり があった」と釈明した。当初の不正調査が不十分で,再調査に追い込まれたことについては 「もっと早く(本格調査を)やった方がよかった」 と述べた。



こんなことを,公の場で言っていいのでしょうかね。現場の優秀な研究者たちは気分を害すると思いますよ。研究者には,プライドというものがあることくらい,理事長自身がよく御存じのはずですからね。理事長には,指揮官たる者の哲学が欠如しているんじゃないでしょうか。上に立つ管理者の責任。これは,中学生,高校生でも理解できる世の中の常識ですよ。



野依氏はさらに続けて,こう言っておられます。


これまでの調査で,STAP 細胞とされたものは 別の万能細胞である ES 細胞が混入した可能性が高いことがわかっている。詳しい経緯は未解明のままだが,さらなる調査などはしない。この点については 「詳細をつまびらかにするのも大事だが,全貌 ぜんぼう がどうだったのかが大事だ」 と説明した。


*



余計なことかもしれませんが,「巻の一」に収載した理研の最初の図 【 歴史と伝統 】 に,野依良治・前理事長が入っていません?というより,本年度版の理研のウェッブ・ページのどこを探しても,前理事長のお名前も写真も見当たらないのです。

官僚というのは,冷たいものですね。何だか,怖い気がします。ものごとには,善くも悪くも,礼儀というものがあるんじゃありませんかね。



*



次も,新聞記事からの引用です。


下村博文文部科学相は23日,野依氏の会見に先立って理研本部を視察し,新設された研究倫理教育の責任者らと意見交換。終了後,「理研改革については一定のメ ド がたった」と評価した。ただ,予算などをより自由に使えるよう優遇する新制度 「特定国立研究開発法人」 への指定については,「関係省庁や与党関係とのトータル的な判断。いつまでに,と言えない」 と述べた。


*



すでに,「巻の一」の冒頭に明記したように,下村氏の発言の1週間後の4月1日付けで,理研は新制度「特定国立研究開発法人」に指定されました。すべての筋書きがとっくに出来ていたちょうどその頃,小保方事件が起きて世間の注目を集めて大騒ぎになりました。



私が週に2回通っている 後期高齢者のためのリハビリ施設 でも,小保方事件の話題で持切りでした。



理研って何なの。

私たちの懐から出て行った税金を使っているんでしょう。

小保方さんは,可愛いけど,どんな悪いことをしたの。一生懸命に研究所に尽くしていたのに,追放するなんて可哀相じゃありませんか。

あの先生(偉いんでしょう)が亡くなったことと,小保方さんはどんな関係があるのかしら,もしかしたら,・・・・・ ? ・・・・・  

 

おば様方(全員,推定年齢80歳以上,肩,足,腰 などに問題をかかえておられますが,頭の方は,皆さん,シャープです)の仰ることは,世間で広まっている「うわさ話」を代表するものではないかと感じた次第です。なお,おじ様方は全員,黙って聞いておられるだけでした。男性は,年齢を重ねると,優しくなるというか,人間が練れてくるというか,ということでしょうか。



文科省も理研も,大いに慌てたことは容易に想像されます。

「火の無い所に煙は立たぬ」といいますが,何らかの力学が働いたとみえて,” 事件 ” は 闇の中に葬られました。「大山鳴動して鼠一匹」のたとえ通りでした。



ともあれ,全ては終わりました。


世の中の人々は,何が何だか分らず,ただ唖然としました。

文科省でも,理研でも,一同,やれやれと胸を撫で下ろしました。




*




STAP細胞事件というのは,一体何だったのか。


実験化学の分野にあって,物理化学を専攻して 50年余りの私は,細胞生物学に関する 我が指の感触 が全くありません。したがって,小保方事件のサイエンスについては論評するなど到底できません。


次の著書は,大学で物理学を専攻した毎日新聞の記者・須田桃子さんが執筆されたものです。須田さんにも,「我が指の感触」 はないと思いますが,新聞記者として,物凄い勢いで走り回って取材されています。小保方さんの ” 研究 ” がどのように進められるについて知る上で,非常に参考になります。


須田桃子〖捏造の科学者 STAP 細胞事件〗(文藝春秋,2015年3月10日,第5刷)



しかし,須田さんの著書によって,研究の経緯は分りますが,STAP 細胞事件とは一体何だったのかについては,全てが 闇の中です。


地底で何かが不気味にゴソゴソ動いているのか,否,何もないなど,事件直後には,様々な憶測が飛び交いました。


例えば,昨年 (2014年),「新潮45」に連載されていた記事が,本にまとめられて出版されました。

小畑 峰太郎〖STAP細胞に群がった悪いヤツら〗 (新潮社,2014年11月27日)

あまり穏やかでない題名ですけど,事件に関心のある方はサッと目を通しておいても無駄にはならないのではないでしょうか。


なお,理研は所外宛に,次の二つのウェブ・サイトを公開しています。


STAP細胞に関する一連の対応等について


昨年度(2014年)の理研所内で行なわれた対応,とくに,
運営・改革モニタリング委員会による評価の結果について






*



また,安倍内閣のことを話題にします。国立大学は,如何なる分野であれ,基礎,応用研究を行い,将来を担う研究者を養成するという重要な使命をもっているからです。


今日(4月10日)の朝刊に,大きな字で


国旗国歌 国立大に要請へ
首相答弁受け文科省



と書いてあります。


下村氏は,「国旗国歌法が施行されたことを踏まえ,各大学で適切な対応がとられるよう要請したい」と記者団に話したそうです。安倍総理大臣が,国会で,「国立大学の入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱について,「正しく実施されるべきだ」 と述べたことによるそうです。


総理大臣の言葉をそれをそのまま,鸚鵡返し おうむ‐がえし に記者団に喋る文部科学大臣をみるのも悲しいですよ。これは,「言うことを聞かないと,予算などの不利益が貴殿の大学に降り掛かるぞ」 という脅しですからね。


それに,今日観たテレビのニュースによると,国立大学を大改革するそうですね。なんでも,大学を 3種類 に分類するとか ・・・・・ 現時点 (平成27年4月15日 夜10時)では,詳細不明。


追記( 4月16日 午後4時 )


ウェブに,4月15日の新聞記事から引用されています。


政府が成長戦略の柱として,国立大学の改革を進めるための「経営力戦略」を策定。


全国86大学は,それぞれの目指す姿を 「世界と戦う」 「特定分野で差別化」 「地域貢献」 の三つから選び,運営する。国が各大学の取り組みを評価し,交付金の配分にメリハリをつけることで競争を促す。


15日の政府の産業競争力会議で原案が示され(筆者注 私が見たのは,この時の記者会見だったようです),今夏にまとめる成長戦略に盛り込む。2016年度からの実施を目指す。



*



産業競争力会議のメンバー は,ウェブに掲載されています。総理大臣が指名した閣僚,官僚のほかは,「有識者」の集まりです。大会社の会長,社長などのほか,大学の先生がお一人,それと,大学の先生で 元・閣僚 (つまり,身内の先生) お一人が,お刺身のつまのように加わっておられます。

国立大学を改革するなんて。軽はずみな行動には賛成できません。こんな大事なことに手をつけるために,今の内閣で委員会を作るとすれば,しばしば利用される「有識者」ばかりが委員に選ばれるのは必定です。


総理大臣も調子に乗りすぎているんじゃありませんかね。



嫌な時代になって来ましたね。





つづく













































































by yojiarata | 2015-04-18 23:53 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像  巻の五






タンパク 3000プロジェクト  遺産と戦後処理




2007年のプロジェクト終了と共に,私が蛋白質 核酸 酵素 (2008年 4月号)の特集号に書いたように,このプロジェクトに雇われていた多くの優秀な研究者が,路頭に彷徨うホームレスになってしまいました。


理事長やプロジェクトのリーダーは,職がないのは,貴殿の才能が無いからだと開き直ることは容易に想像できます。だけど,職探しがいかに大変か。大学などの公募では,1件当たり 最低100人の応募があるといいますからね。

  

NMR御殿は,プロジェクトの進行当時は,門外不出,関係者以外の者が手を出しそうになると,装置に触るなとすごまれていました。装置の部屋に行ってみると,何もしていない装置も少なくなかった記憶があります。


インドなどの発展途上国なども,共同研究に強い興味をもっていましたけれど,みんな断わられたようです。そのため,理研の御殿は,外国では,ジョークの材料にされました。私も,この場にいて,恥ずかしい思いをした記憶があります。



ついでに言うと,最近,日本版 N I H なる詞を新聞で見かけるようになりました。創薬について研究すると言えば,役人への殺し文句になります。こんなことを言いだした役人,官僚たちは,あの世界に冠たる N I H のことを何も知らないんじゃないでしょうか。


創薬のための研究所は,四,五年前に,名古屋大学の附置研究所としてスタートしています。それに,今度のN I Hの一件はどうつながっているんでしょうね。管轄の省庁が違うのでしょうか?


創薬,創薬と言うけど,言うこととそれを実行することは,全く別物ですからね。


以前, 大手製薬会社の元・副社長との対談記事 をこのブログに書きましたから,よかったら読んでください。


とにかく,如何にも,旧態依然としたわが日本に起こっている珍事の一つではないでしょうか。



湯水のように金を使う もったいないの概念の欠如


汲々として研究費を集めなくてよいぶん,お金の有難さが分らないんですよ。オフィッスを移転する時,家具でもなんでも廃棄処分にするんです。これには驚きましたね。無論,理事長以下の理研の重鎮方は何もご存じないことです。

だけど あれもこれもれも国民の税金ですからね。怒り心頭です。



ノア の箱舟・症候群


終りに付け加えておきたいことがあります。最近の若手研究者は,Nature などの有名国際誌に論文を載せることに熱中しているね。これこそが,自分を世界で認めさせる道だと信じきっているんです。つまり,切磋琢磨して自分を磨くのではなく,有名誌こそが, ノア の 箱舟 だと信じているんでしょうね。[ ⇒ 旧約聖書 創世記 第6章 ]


発想の順序が逆なんですよ。良い仕事だから Nature に載るのであって,載ったからといって良い仕事は限らないのです。小保方事件がよい例ですよ。


ちなみに,南方熊楠は,Nature に50件iを超える数の論文を掲載しています。100年も前のことですけどね。南方熊楠が遺した著作を読むと,真の国際化とは何かが分りますよ。南方熊楠 のことは,以前,このブログに詳しく書きましたから,ぜひ読んで下さい。



夢のあとに



タンパク 3000プロジェクトは,その後,どうなったか


現在,次のような組織に生まれ変わっています。



国立研究開発法人 理化学研究所


ライフサイエンス技術基盤研究センター

構造・合成生物学部門 NMR施設

施設長 前田秀明




国立研究開発法人 理化学研究所(理研)横浜キャンパスのNMR施設は,平成9年に稼働を開始した大型放射光施設 SPring-8 との連携による,我が国における構造生物学研究の中核的研究拠点(COE)としての「構造生物学研究センター」 構築のもとに建設・整備が進められ,平成12年に開設されました。現在では,900MHz をはじめとした高性能NMR装置10台を共用する世界最大規模のNMR 集積施設となっています。


本施設では,これらのNMR装置群と関連機器・設備を有機的に連携させ,タンパク質の試料の調製から立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン」を整備してきました。


平成19年度からは,これらの成果とそれを達成する過程で蓄積された経験・知識・ノウハウを広く社会に還元していくため,理化学研究所以外の利用者にも本施設を開放し,利用していただくことになりました。


*



よかったですね。あの頃は門外不出であった” 箱入り娘 ” は,今や,使用料さえ払えば,だれでも利用できるようになり,大変,役に立っているようです。多少なりとも,日本の研究者に恩返しが出来ますからね。



追記

「大型放射光施設 SPring-8」  に関しては,2011年7月のブログに,宮野雅司さんとの対談記事を掲載しましたので,興味のある方は参照して下さい。SPring-8 は,国内外の研究者に広く利用されています。



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2011年の秋に,横浜で国際会議が開かれました。私は,その冒頭で,それまでに日本のNMR研究の要約する講演をするよう,招待を受けました。

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その時,この話題を抜きにしては,講演を終わることが出来ないと述べ,次の画像を使いました。NMRのセンターは,外観が何とも美しいので,私は ” NMR御殿 ” とよんでいました。ご覧いただければ,私の意図を理解していただけると思います。


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NMR御殿 と 松尾芭蕉







つづく

by yojiarata | 2015-04-18 23:52 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像  巻の六



ご隠居さん この「巻の六」は,何が載っているのでしょうか。


野依良治・理化学研究所・理事長(当時)宛ての書簡です。簡易書留で送りましたので,ゴミ箱に行く前に,チラッとは眺めていただいたんじゃないでしょうか。勿論,お返事は戴いていません。

いま讀みかえしてみても,数字の間違いなど散見されるものの,私の考えは現在も全く変わりません。

ここでは,基本的には,原文のまま再現します。ただし,読みやすいように,何か所かを青色・太字にしました。



野依良治・理化学研究所・理事長 宛ての書簡

2014年3月25日





理化学研究所理事長
野依良治先生




和田昭允・ゲノム科学センター所長の「アドバイザー」を務めていました荒田洋治です。


タンパク3000プロジェクト


タンパク3000プロジェクトの最中に,先生のオフィッスを訪れ,私見を述べさせていただきました。お忙しい先生は,きっと迷惑されたことと,今になって反省しています。

タンパク3000については,小生は次のように理解しています。


1) 10年以上に亘って,1000億円近い予算が投じられたこと。


2) 新しい成果は,何も出なかったこと。


3) 和田所長に,何度もこの点を指摘いたしましたが,答えはいつも 同じでした。和田所長はこうおっしゃいました。


自分は,タンパク質のNMRが全くわからない。

横山の運転する自動車が,

壁に激突して止まるのを見ているしかないのだよ。



*****

筆者後記 (平成27年4月16日)

赤木圭一郎やジェームズ・ディーンみたいですねと,茶茶を入れまししたが,話は通じませんでした。下下のことには,無関心のようでした,

*****





小生は,7年に亘って 和田昭允先生のアドバイザーを勤めましたので,理研における研究体制について,つぶさに観察することができました。


タンパク3000は,プロジェクトリーダー(横山博士),何人かの何人かのチームリーダーにすべてを任せるという形で研究が進行していました。形の上では,ノーベル賞受賞者であるビュートリッヒ博士を委員長とする「国際審査委員会」なるものをおいて,一年に一度,討論していました。小生も委員として出席して意見を述べる立場にいました。


ところが,ビュートリッヒ博士は,良くも悪くも,日本人の心情に通じ,また,和田所長との親交もあり,この委員会で,多くの委員が否定的な意見を述べたにもかかわらず,和田所長は,タンパク3000プロジェクトを可としました。あとで,個人的にビュートリッヒ博士に,どうして,思っていることを率直に話してくれなかったのだといったところ,和田のことも,理研の内部事情もよくわかっているからと,ニヤッと笑っていました。


このセンターには,当時最新鋭の装置が10台以上稼働し,高磁場装置を持たない国内外の研究者の垂涎の的でしたが,横山・プロジェクト・リーダーは,プロジェクトを最優先したいと全ての外部依頼を断ってしまいました。


鶴見のNMRセンターを訪れていただければ,巨費を投じた「兵どもが夢の跡」を御覧になれます。文科省から,適正に活用するように迫られているようですが,進歩の速いNMRのことですので,十年を経たNMRの利用に苦労しているようです。



ゲノム科学研究センター会議


週に一回,和田所長を議長とするGSC会議(小生も出席しました)では,研究とは無縁の,例えば,キャンパス内の自動車の制限速度を守るなど,サイエンスとは無関係のことが主な議題でした。


よく言えば,研究の独立性の重視,悪くいえば,暴走を止められないという体質の一端をつぶさに経験しました。


予算があまりにも潤沢でした。椅子でも何でも,オフィッスが引っ越すときなどには,廃棄するのには驚きました。



理研の研究体制に関する私見


結論を率直に申し上げます。個々の研究者がグループリーダー単位で,行動している研究の内容が,周りには,全くといってよいほど伝わっていません。多額の金額を投じて研究を行うには,組織の成り立ちがあまりにも脆弱です。それは,タンパク3000プロジェクトも含めて,その他の超高額の投資を伴う巨大プロジェクトに共通に言えるのではないでしょうか。STAP細胞のプロジェクトの場合には,世の中の大学などでは,常識的には,到底考えられない,億の単位の予算を使っておられたと理解しています。



*




STAP細胞に関する理研の中間報告のテレビで,理事長自ら出席され,深々と頭を下げておられるのを拝見し,いささか悲しくなりました。その時,理事長がおっしゃった言葉,「すべてを徹底的に鍛え直す」 をうかがい,光明を見出す思いがしました


ここまで書いてくると,思い出されるのは 勝海舟 の言葉です。


【・・・ おれが始めて亜米利加へ行って帰朝した時に,御老中から,「その方は一種の眼光を具えた人物であるから,さだめて異国へ渡りてから,何か目をつけたことあろう。つまびらかに言上せよ」 とのことであった。・・・・・ 再三再四問われるから,おれも,「さよう,少し目につきましたのは,亜米利加では,政府でも民間でも,およそ人の上に立つものは,皆その地位相応に怜悧でございます。この点ばかりは,全くわが国と反対のように思いまする」と言ったら,御老中が目を丸くして,「この無礼者控えおろう」 と叱ったっけ。ハハハハハ。】

高野澄(編訳)『勝海舟文言抄』(徳間書店,1974,238ページ)



個々の研究者,グループリーダー,チームリーダー,そして事務部の官僚に受け止めてほしい言葉です。


お忙しい先生と知りつつ,つい書いてしまいました。つまらない戯言とお感じの場合は,どうかご放念ください。


頓首再拝





荒田洋治



2008年,共立出版より,蛋白質 核酸 酵素 『タンパク 3000 プロジェクトの産んだもの』 と題する特集号が出版されました。小生は,第Ⅱ部 「プロジェクトに対するコメント」 に執筆を依頼されました。その部分のコ ピーを同封させていただきます。お読みいただけますと幸いです。







つづく
















































































by yojiarata | 2015-04-18 23:51 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像   巻の七



ご隠居さん。ここでは,何を話題にされるのでしょうか。


***



現在では,情報開示法 (行政機関の保有する情報の公開に関する法律及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律) によって,正当な理由があれば,誰にでも,情報が公開されます。



すべての点で,超近代的な理研のことだから,いつでも準備 OK だろうと推測して,理研のウェブに掲載されている「総務部総務課情報公開窓口」に,タンパク 3000 プロジェクトに関するすべての情報を公開してくださいと,平成27年4月1日付で申請書を提出しました。



何らかの情報を入手次第,その結果を,そのまま,ここに掲載します。必要に応じて,筆者の連絡事項も掲載します。


*



平成27年4月10日

理化学研究所 総務部総務課より,平成27年4月9日付で,法人文書開示請求 開示請求手数料 ¥ 300 の領収書(No.03002)が送られてきました。


以下に,理研から送られてメモをそのまま掲載します。


平成27年4月20日

また,STAP 細胞に関する一連の対応等につきましては,所外ホームページにて公表している部分がございますので,御案内申し上げます。

http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140327_1/


その中でも,昨年度行った対応につきまして,運営・改革モニタリング委員会による評価を受けており,その結果も以下により公表しております。

http://www.riken.jp/pr/topics/2015/20150320_1/


筆者注  以上の情報は,「巻の四」 に追加しました。



理研に残っている文書は,以下の30枚です。

・応募時の理事会議資料抜粋6枚

・平成15年度研究年報17枚

・平成16年度研究年報7枚


*


筆者注

同日,開示の申請をしました。
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平成27年4月20日

お電話でおっしゃっていた報告書ですが,文部科学省のターゲットタンパクのホームページに

「終了した関連プロジェクト」

として以下のものが掲載されています。

http://www.tanpaku.org/about/old_project_protein02a.php


筆者注  以上の情報は,「巻の二」 に追加しました。








つづく









































































 
by yojiarata | 2015-04-18 23:50 | Comments(0)

理化学研究所  その実像と虚像  巻の八





あ~ 理研 古き良き時代の科学者たちの自由な楽園



私の手元に,宮田親平 『科学者たちの自由な楽園 ― 栄光の理化学研究所』 (文藝春秋,1994年,第6刷)があります。



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宮田さん[元・文藝春秋社(週刊文春・編集長)]のこの著作には,古き良き時代の理研が描かれています。ぜひ,一読してください。





未完

by yojiarata | 2015-04-18 23:48 | Comments(0)