<   2012年 04月 ( 2 )   > この月の画像一覧

誇大広告



広辞苑によると,誇大広告とは

商品の長所だけを実際より大げさに示した広告

とある。

ある大学病院の地下の食堂の一つで 昼食をとった。見本が並んでいるガラス張りの棚から一品を選んだ。デザートの見本があった。560円。大きなどんぶりのような容器に,メロン,オレンジ,などが盛り合されていた。果物好きの筆者は注文した。一人に分としてはチョッと大きい過ぎると思ったが,それは杞憂であった。

フルーツですと運ばれてきた実物を目にして,言葉を失った。小さな湯飲み茶碗のような容器に,フルーツが入っていた。確かに,面子は揃っていた。それぞれのフルーツのかけらは,1センチ四方,体積にして実物の2,3%程度だろうか。この食堂の見本を並べた棚は,究極の誇大広告である。

色々聞いてみると,新聞広告は,新聞の編集の管轄の外にあるようだ。

1994年,筆者が大学を定年になった後,機能水研究所 (農水省,つくば)で 6年間所長を務めた。今でもそうであるが,どんな水が身体に良いとか,我が社のこの水を飲むと長生きするなど,およそサイエンスといえない説が世間を騒がせていた。ある大新聞の巨大な広告が目に留まった。いつもと変わらないいい加減な記事のため,新聞社に直接連絡した。答えは,広告は新聞の編集部の管理の外にあるので,広告担当の部署を訪ねてくれとのことであった。

訪ねた先は,駒込の小さなオフィッスビルの2階だった。想像したとおり,広告はこちらの管轄で,いわば,新聞社の一部に間借りして独立に仕事をしているとのこと,アパートの間借り人が何をしようと新聞社の編集部はあずかり知らぬとのことであった。大新聞の広告がこうして作られていることを知り愕然とした。

このところ,新聞も景気が悪いとみえて,全ての大新聞に,連日,巨大な広告が掲載される。

我々高齢者を標的にしたものが多い。例えば,

首・肩に! 腰・背中に! 脚・ひざに!
つらいコリ,ハリに 貼るだけで効く!

目を凝らして見ると,小さな文字で書かれている次の一行が入っている。

あくまで個人の感想であり,効果効能を保証するものではありません

ひどいじゃありませんか。要するに,自分の巨大なアパートの一室を広告屋に貸し出し,極端に言えば,その部屋の中で大暴れしても,火事を出すとか,社会問題になるような事件を起さない限り,見てみぬふりをするというのである。

大新聞といえども,マスメディアの多様化もあって,経済的にピンチのようである。事情は理解できるものの,とくに高齢者を標的にした誇大広告は何とかならないものでしょうか。

厚生労働省も黙っているわけにはいかなくなって,少しずつ動き始めたようである。しかし,例の如く延々と書いてある退屈な法律の文章をよく読んでみると,印刷物に関するもので,大新聞などの”本丸”に手が伸びるのは何時のことかわからない。多分これ以上は無理なような気がする。

健康の保持増進効果等の虚偽・誇大広告等の表示の禁止(健康増進法第32条の2、3)関係

時代が変わる。時代とともに,「誇大広告」の定義に関する辞書の記述も変えなければならない時がきている。
by yojiarata | 2012-04-03 23:39 | Comments(0)



さまざまの事思ひ出す櫻かな  芭蕉 笈日記 貞亨五年

芭蕉ならずとも,櫻はさまざまな事を思い出させる。

昭和27 (1952)年,五味康祐は『喪神』で,松本清張 『ある小倉日記伝』 で,とともに芥川賞を受賞した。最近の意味不明の芥川賞と違って,いずれも新鮮な発想で時代を切り開く作品であった。

五味康祐の描く剣の世界に魅了された。その一例。

五味康祐 『櫻を斬る』


将軍家光の御前試合 満開の櫻の枝を花を散らさずに斬る紀八郎と清十郎

紀八郎 の場合

庭の櫻の下へ歩み寄って,しずかに立停った。そして頭上の,手頃枝を仰いだ。・・・ 一瞬白い虹が枝に懸ったと見る間に,爛漫の花をつけた枝が,紀八郎の足許は落ちた。彼はゆっくり,その枝を拾い上げ,こちらは戻ってくる。無論,花一つ散らない。

清十郎 の場合

これも櫻の下に佇むと,手頃の枝を見上げていた。・・・ やがて,清十郎は,しずかに太刀を抜くと,八双の身構えから,まるで高速度写真をみるようにゆるく一枝を斬った。枝は音もなく落ちた。清十郎は太刀を鞘に収めると,これも枝を拾い上げて,ゆっくりこちらに歩みだした。二,三歩来たとき,一斉に,泣くが如く降るが如く全木の花びらはハラハラと散った ―。

肅然として,思わず嘆声を洩らす一同の耳に,

「油下清十郎の勝ち。」

凛とした審判の声が響いた ―。

五味康祐 『秘剣,柳生連也斎』 (新潮文庫,1958)


千鳥が渕 とフェアモント・ホテル


櫻といえば,東京都内でいえば,千鳥が渕の櫻が素晴らしい。スイスの友人のW氏は,千鳥が渕の見下ろすフェアモント・ホテルが気に入っていて,日本に来るとよく利用していた。流石に,千鳥が渕に直接面した部屋は,櫻の時期には予約が取れなかった。どうも,常連がいるようであった。そのフェアモント・ホテルが,十年近く前に店じまいしてしまい,彼氏は大変残念がっていた。フェアモント・ホテルのあとには,どこにもにもありそうな巨大なアパートが建っている。


上野公園 の ”岡晴夫さん”


上野公園は,櫻もさることながら, ”岡晴夫さん”の歌を聴くのが楽しみだった。岡晴夫の古いポスター(本物)を2,3枚木に貼り付け,「憧れのハワイ航路」,「東京の花売娘」,「啼くな小鳩よ」などを次々に歌う。岡晴夫そっくりで,素晴らしい歌唱力,いつも大勢の人垣が出来ていた。しかし,何時の頃か,”岡晴夫さん”の姿を見かけなくなった。何とか条例で歌が禁止になったとのことだった。

”岡晴夫さん” は今,どこでどうしておられるのだろうか。
by yojiarata | 2012-04-03 23:30 | Comments(0)