ご隠居さん。また,いつもの話ですか。 残念ながら。だけど,今の世の中,呑気なことを言っていられないよ。 例えば,8月27日の朝刊1面のトップに,次のように書かれているよ。 米艦保護 昨年の首相 「日本人の命守る」 防衛相 「邦人乗船,絶対でない」 他にも,色々,ごちゃごちゃと報じられています。 現政権は,9月の前半までに,安保法制の成立を図りたい考えのようですね。 この問題を考えていくとき,キーワードは,次の3点です。これで,すべてが尽くされているんじゃありませんかね。 ① 日本国家は,アメリカの下部 しもべ である この点については,何度も書いたけど,次の記事の主役は,現総理の祖父の岸信介です。東条英機と組んで,満州の関東軍を操り,なぜか,A級戦犯で絞首刑になることを逃れ,1960年の安保改定の主役を演じ,我が日本をアメリカの下部 になることを決定づけた張本人です。 満州の妖怪 と その末裔 安倍一族 巻の1- 巻の6 気が付いてみると,いつの間にか,中東の大火の中にいて,いつの間にか,犠牲者が出ているなんてこともありうるよ。何しろ,後ろには,怖いアメリカさんが 見張っているからね。 沖縄基地問題にしても,官房長官は,記者会見で,1ヶ月の冷却期間を入れて,それから先に進みたいなんて,とぼけたことを言っているけど,ご主人様には,必ず問題を突破することを誓いますので,今しばらくご猶予を,と土下座して謝っているに違いないと思います。 アメリカの歴史家 ジョン・ダワー氏 が,2015年8月4日の朝日新聞 (15ページ全面) に極めて重要な記事を寄稿しています。 同氏は,『敗北を抱きしめて』 で,ピュリツァ-賞を受賞しています。ちなみに,ピュリツァー賞 (Pulitzer Prize )は,新聞等の印刷報道,文学,作曲に与えられる米国で最も権威ある賞です。 1917年発足。 Embracing Defeat: Japan in the Wake of World War II, (W. W. Norton, 1999). 三浦陽一・高杉忠明・田代泰子訳 『敗北を抱きしめて ― 第二次大戦後の日本人 (上・下)』 (岩波書店, 2001年/増補版2004年) ジョン・ダワー氏が朝日新聞に寄稿した記事の一部をここに引用しておきます。 【 ・・・・・ 核戦略を含め,米国の政策を何でも支持するのが日本政府です。その意味で,戦後日本の姿勢は,いわば 『従属的独立』 だと考えます。独立はしているものの,決して米国と対等でない」 「過去を振り返れば,安倍晋三首相がよく引き合いに出す,祖父の岸信介首相が思い浮かびます。岸首相は確かに有能な政治家ではありましたが,従属的な日米関係を固定化する土台を作った人だと私は考えています」 「同様に,孫の安倍首相が進める安全保障政策や憲法改正によって,日本が対米自立を高めることはないと思います。逆に,ますます日本は米国に従属するようになる。その意味で,安倍首相をナショナリストと呼ぶことには矛盾を感じます」 ・・・・・ 】 驚くほど,核心を突いた記事です。 ぜひ, 記事の全文(巻末に掲載)を読んでほしいと思います。 関連の問題について,ブログに次の記事を書きましたので,併せて読んでいただきたいですね。 アメリカ国家の素顔 と 安倍政権 の 『戦争法案』 ➁ 日本人の国民性 我々日本民族は,世界的にみても,素直で人柄の良い人々の集まりだと思います。我々が世界に誇る雅な文化がそれを示しています。そのためかどうかわかりませんが,先月は,デモで盛り上がったかと思うと,もう忘れ始め,新聞によると,低下をはじめた内閣支持率が持ち直しているというじゃありませんか。 何度も引用したけど,伊丹万作が戦後すぐの1946年 (昭和21年) に書いた次の言葉をまた引用します。 きけ 伊丹万作の こえ 多くの人が,今度の戦争でだまされていたという。 いくらだますものがいても,だれ一人騙されるものがいなかったとしたら,今度のような戦争は成り立たなかったにちがいないのである。 「だまされていた」 といつて平気でいられる国民なら, おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや,現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいないのである。 ③ 戦争を商売にする 「死の商人」 の 存在 怖ろしいよね。お互いを殺しあっている武器が,一体どこから来たのか分らないんだよ。日本も大量の武器を作って,輸出しているからね。法律の上では,色々条件が付いているみたいだけど,何がどうなっているか,分ったものじゃないからね。日本で作られた武器が,現在,中東で使われている可能性だってあるし,中東に派遣された自衛隊員が中東で,日本製の武器で命を落とすなんて悲劇がおこるかもしれませんよ。 太平洋戦争の折も,大財閥が武器で大儲けをしてのは,よく知られているからね。その系列の連中が,今でも,死の商人として,同じことをしているんですよ。 世界平和とか何とか,きれいごとをいっているけど,世の中,所詮,これらの連中が動かしているお金ではないか思うよ。 岡倉古志郎 『死の商人』 (岩波新書)を読んでみてほしいです。絶版ですが,アマゾンの古書に入っていて,1円-150円で入手できます。こんな重要な本が,この値段というのは,いささか淋しい気がします。 日本が誇るソフトパワーとは ジョン・ダワー氏に聞く ニューヨーク支局長・真鍋弘樹 2015年8月4日10時19分 あの戦争が終わって70年,日本は立つべき場所を見失いかけているようにみえる。私たちは何を誇りにし,どのように過去を受け止めるべきなのか。国を愛するとは,どういうことなのか。名著「敗北を抱きしめて」で,敗戦直後の日本人の姿を活写した米国の歴史家の声に,耳をすませてみる。 • 特集:戦後70年 ― 戦後70年を振り返り,日本が成したこと,評価できることは何だと考えますか。 「以前,外務省の高官から『日本はソフトパワーを重視している』と聞かされたことがあります。日本車,和食,漫画やアニメ,ポップカルチャー。世界が賛美するものは確かに多い。しかし,例えばハロー・キティーが外交上の力になるかといえば,違うでしょう。世界中が知っている日本の本当のソフトパワーは,現憲法下で反軍事的な政策を守り続けてきたことです」 「1946年に日本国憲法の草案を作ったのは米国です。しかし,現在まで憲法が変えられなかったのは,日本人が反軍事の理念を尊重してきたからであり,決して米国の意向ではなかった。これは称賛に値するソフトパワーです。変えたいというのなら変えられたのだから,米国に押しつけられたと考えるのは間違っている。憲法は,日本をどんな国とも違う国にしました」 ― その理念は,どこから生まれたと考えますか。 「このソフトパワー,反軍事の精神は,政府の主導ではなく,国民の側から生まれ育ったものです。敗戦直後は極めて苦しい時代でしたが,多くの理想主義と根源的な問いがありました。平和と民主主義という言葉は,疲れ果て,困窮した多くの日本人にとって,とても大きな意味を持った。これは,戦争に勝った米国が持ち得なかった経験です」 「幅広い民衆による平和と民主主義への共感は,高度成長を経ても続きました。敗戦直後に加えて,もう一つの重要な時期は,60年代の市民運動の盛り上がりでしょう。反公害運動やベトナム反戦,沖縄返還など,この時期,日本国民は民主主義を自らの手につかみとり,声を上げなければならないと考えました。女性たちも発言を始め,戦後の歴史で大切な役割を果たしていきます」 ― 政治は何をしたでしょう。 「私の最初の著書は吉田茂首相についてのものですが,彼の存在は大きかった。朝鮮戦争の頃,国務長官になるジョン・ダレスは,憲法改正を要求してきました。吉田首相は,こう言い返した。女性たちが必ず反対するから,改憲は不可能だ。女性に投票権を与えたのはあなた方ですよ,と」 「その決断はたいへん賢明だったと思います。もし改憲に踏み込めば,米国はきっと日本に朝鮮半島への派兵を求めるだろうと彼は思った。終戦のわずか5年後に,日本人が海外に出て行って戦うようなことがあれば,国の破滅につながると考えたのです」 「その決断の後,今にいたるまで憲法は変えられていません。結果,朝鮮半島やベトナムに部隊を送らずに済んだ。もし9条がなければ,イラクやアフガニスタンでも実戦に参加していたでしょう。米国の戦争に巻き込まれ,日本が海外派兵するような事態を憲法が防ぎました」 ■ ■ ― 現政権が進める安保法制で,何が変わるでしょうか。 「日本のソフトパワーが試練にさらされています。集団的自衛権の行使に踏み込み,日本を『普通の国』にするというのが保守政治家らの考えですが,普通とは何を指すのか,私には分かりません。国際的な平和維持に貢献するといいつつ,念頭にあるのは米軍とのさらなる協力でしょう。米国は軍事政策が圧倒的な影響力を持っている特殊な国であり,核兵器も持っている。そんな国の軍隊と密接につながるのが,果たして普通なのでしょうか」 ― 戦後の日本外交は,米国との関係を軸にしてきました。 「日本の外交防衛政策を知りたければ,東京でなくワシントンを見ろとよく言われます。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加しかり,アジアインフラ投資銀行(AIIB)加盟についての判断しかり。核戦略を含め,米国の政策を何でも支持するのが日本政府です。その意味で,戦後日本の姿は,いわば『従属的独立』だと考えます。独立はしているものの,決して米国と対等ではない」 「過去を振り返れば,安倍晋三首相がよく引き合いに出す,祖父の岸信介首相が思い浮かびます。岸首相は確かに有能な政治家ではありましたが,従属的な日米関係を固定化する土台を作った人だと私は考えています」 「同様に,孫の安倍首相が進める安全保障政策や憲法改正によって,日本が対米自立を高めることはないと私は思います。逆に,ますます日本は米国に従属するようになる。その意味で,安倍首相をナショナリストと呼ぶことには矛盾を感じます」 ― 現在のアジア情勢を見れば,米軍とのさらなる協力が不可欠だという意見もあります。 「尖閣諸島や南シナ海をめぐる中国の振る舞いに緊張が高まっている今,アジアにおける安全保障政策は確かに難題です。民主党の鳩山政権は『東アジア共同体』構想を唱えましたが,それに見合う力量はなく,米国によって完全につぶされました」 「だからといって,米軍と一体化するのが最善とは思えません。冷戦後の米国は,世界のどんな地域でも米軍が優位に立ち続けるべきだと考えています。中国近海を含んだすべての沿岸海域を米国が管理するという考えです。これを米国は防衛と呼び,中国は挑発と見なす。この米中のパワーゲームに日本が取り込まれています。ここから抜け出すのは難しいですが,日本のソフトパワーによって解決策を見いだすべきです」 ■ ■ ― 対外的な強硬姿勢を支持する人も増えています。 「今,世界のいたるところで排外主義的な思想がはびこり,右派政治の出現とつながっています。ナショナリズムの隆盛は世界的な文脈で考えるべきで,日本だけの問題ではありません。グローバル化による格差が緊張と不安定を生み,混乱と不安が広がる。そんな時,他国,他宗教,他の集団と比べて,自分が属する国や集まりこそが優れており,絶対に正しいのだという考えは,心の平穏をもたらします。そしてソーシャルメディアが一部の声をさらに増殖して広める。これは,20年前にはなかった現象です」 「北朝鮮や中国は脅威のように映りますが,本当に恐ろしいのはナショナリズムの連鎖です。国内の動きが他国を刺激し,さらに緊張を高める。日本にはぜひ,この熱を冷まして欲しいのです」 ― では,日本のソフトパワーで何ができるでしょうか。 「福島で原発事故が起き,さらに憲法がひねり潰されそうになっている今,過去のように国民から大きな声が上がるかどうかが問題でしょう。今の政策に,国民は疑問を感じています。安倍首相は自らの信念を貫くために法治主義をゆがめ,解釈によって憲法違反を続けている。そこで,多くの国民が『ちょっと待った』と言い始めたように見えます」 「繰り返しますが,戦後日本で私が最も称賛したいのは,下から沸き上がった動きです。国民は70年の長きにわたって,平和と民主主義の理念を守り続けてきた。このことこそ,日本人は誇るべきでしょう。一部の人たちは戦前や戦時の日本の誇りを重視し,歴史認識を変えようとしていますが,それは間違っている」 「本当に偉大な国は,自分たちの過去も批判しなければなりません。日本も,そして米国も,戦争中に多くの恥ずべき行為をしており,それは自ら批判しなければならない。郷土を愛することを英語でパトリオティズムと言います。狭量で不寛容なナショナリズムとは異なり,これは正当な思いです。すべての国は称賛され,尊敬されるべきものを持っている。そして自国を愛するからこそ,人々は過去を反省し,変革を起こそうとするのです」 ◇ John Dower 38年生まれ。マサチューセッツ工科大学名誉教授。著作に「吉田茂とその時代」,ピュリツァー賞受賞の「敗北を抱きしめて」など。 ■ 取材を終えて とても大切なものなのに,思いのほか,本人は気づいていない。外から言われて,かけがえのなさを知る。よくあることだ。敗戦後に日本が手にしたものこそ世界に誇りうる,という指摘にはっとした。そうか,自分たちの手元を見つめればいいんだ。 戦後の日本人は立場を問わず,自らの国を愛することに不器用になっていたのだろう。反発したり,逆に突っ走ったり,どこかの国に依存したり。愛国という言葉に素直になれない。70年前,形容しがたいほど惨めで痛ましい敗戦を経験し,国家への信頼を一度,完全に失ったのだから,それも当然なのだが。 戦後70年の夏は,この宿題に向き合う好機かもしれない。国家という抽象的なものではなく,戦後を生き抜いた一人ひとりの道程にこそ,よって立つ足場がある。(ニューヨーク支局長・真鍋弘樹)
by yojiarata
| 2015-08-31 20:51
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