南方熊楠  巻の八  十二支考を読む  





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何しろ,熊楠の知識の広がり,それを「これぞ熊楠」という独特の文章力で縦横無尽に書くんだから,すごいよね。 「南方熊楠全集 全12巻」 に盛り込まれた極めて質の高い文章の一字一句は,比類がないよ。世の中に,全集なるものは,山のように出版されているけれど,熊楠の全集は,” この世に二つという珍品” と言い切りたいと思うね。


『十二支考』 は,熊楠の代表作だよ。読んでいて,余りの広範さに圧倒されるよ。平凡社版の編集にあたった岩村忍は,次のように書いているよ。

・・・・・ 南方の思想と学問の全貌を把握することは決して容易ではない。しかし読むにしたがって,その特異な文体は人をひきつけずにはおかない。またその鋭い発想法は,ものの見方に対して貴重な示唆をあたえるにちがいない。


付け加えれば,十二支のうち,何故か 【丑】 は,未完で,掲載されていないんだ。


この点について,熊楠の苦労話が,上松蓊宛の書簡に書いてあるよ。


「全集 別巻1」
書簡補遺
上松蓊宛書簡

102ページ

ただこまるのは牛にて,これは全然出来おらず。しかして,この牛というもの西洋で人民の主食たること東洋稲米のごとく,それにインドではことほか牛を神視するゆえ,その話すこぶる多く,グベルナチス伯の『動物譚原』などは大著述なるに,その前巻(後巻より三頁多し)は全く四百三十二頁を牛のみに費やし,さて後巻四百二十九頁を豕(ぶた)を始め諸動物に費やしおれり。

かく材料多ければグ氏の書を丸取り抜抄したらよいようなものなれども,日本の武士は名を惜しみ小生もまたあまりなことも出来ず。他の諸話と釣り合いをとり,例の和漢印蘭諸方の材料を精選して組み合わさねばならず。なるべく先人未発のことを述べたいから,まずその材料から集めにかからざるべからず。




「全集 1」 の 『十二支考』 を精読すれば,南方熊楠全集の全巻にわたって,どのようなスタイルで,何を書いているのかがわかるよ。

これから先,特に印象深く読んだ部分に焦点をあてて書くつもりです。なにしろ,全集には熊楠の膨大な世界が詰まっているから,どうしても,私個人の取捨選択ということになるけれど。

君も読んでみてよ。『十二支考』 だけではなく,「全集」のなかのどの一冊でもいいから。読みだしたら,面白くて止められないよ。



つづく

by yojiarata | 2014-07-17 17:03 | Comments(0)
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