ご隠居さん 今日は何の話 ブラームスがどうかしたの。 先週の11月14日,午前2時から,NHKラジオ深夜便で,イブ・モンタンの特集が放送されたんだ。良い番組だったよ。 イブ・モンタンはイタリア生まれ(1921(大正9)年)。幼少時,一家はフランス・マルセーユに移住し,ほそぼそと暮らしていたんだけど,歌の上手さを評価されて,1944年,23歳でパリのムーラン・ルージュにデビュー。そこで,当時,すでに自他ともに認める大スターだったエディット・ピアフと知り合い,一緒に暮らすようになる。彼女の徹底的な指導,後押しによって,もともと大変な才能の持ち主だったイブ・モンタンは,たちまち人気歌手となったんだ。 次々にヒットを飛ばし,フランス政府から,栄誉あるディスク大賞を4回も贈られているよ。第1回は,歌ではなく,ジャック・プレベールの詩『バルバラ』の朗読。フランス語の美しさが評価されたんだね。 深夜便の番組で,私がそれまで知らなかったイブ・モンタンの側面も聴きました。 100年以上も前のフランスの古謡を歌っていたよ。 16世紀に作られたとされる現存する最古のシャンソンもその一つで,曲名は,「ルノー王が戦争から帰還した」。 私がイブ・モンタンに強く惹かれるのは,彼の美しいフランス語です。フランス語は大学の頃,勉強し始めたけど,途中で挫折したしてしまったよ。だけど,イブ・モンタンのフランス語の発音,とくに,「 R の 響き」 に魅了されたんだ。何を言っているのか全く分からなくても,言葉の美しさは分るよ。いわば感覚の問題だからね。注意して聴いてごらん。真似しようとしても,どうしても真似が出来ないんだよ。 『ブラームスはお好き?』は,1959年にフランソワーズ・サガンがデビュー作 『悲しみよこんにちは』 から 5年後の22歳の時に書いた作品。ストーリーはパリを舞台に3人の男女が織りなす恋物語。映画の題名と配役。 『さよならをもう一度』 監督:アナトール・リトバァク 出演:イングリッド・バーグマン(ポーラ),イブ・モンタン(ロジャー),アンソニー・パーキンス(フィリップ) 美しい一人の中年女性が,長年交際している中年男性と,突然出現した15歳も年下の若い男性との間で揺れ動く。円熟期にあったバーグマンが繊細に,情感豊かに演じています。 ブラームスはお好きですか?若い男 (アンソニー・パーキンス) がバーグマンに問いかける。それでこの映画の主題歌が,「ブラームスはお好き」になったんだ。作詞は,サガンその人だよ。 ブラームスの合唱曲「運命の女神の歌」 作品89 の,1882年の初演に参加したひとりに,アルト歌手のヘルミーネ・シュピースがいました。天賦の音楽の才能にも、太陽のような快活さにも恵まれた,この輝くような26歳に,ブラームス(50歳)の内気な屈折した心が占領されてしまうんだ。 ブラームスの4つの交響曲の中で,最も知られている(と私が思う)のは,交響曲第3番,第3楽章,チェロが奏でるあのメロディー。 イブ・モンタンは,このメロディーをバックに,「ブラームスはお好き」を歌っているんだけど,これが素晴らしいんだ。 「枯葉」は,映画「夜の門」の主題歌として,モンタンが25歳のときに歌った作品だけど,ここでは,42歳になった時の「枯葉」が「放送されたよ。味があって実にいいね。 イブ・モンタンは,シモーヌ・シニョレと結婚。映画でも共演。 「恐怖の報酬」(アンリ・ジョルジュ・クルーソー監督作品,1953)の恐ろしさは,今も記憶に残っているよ。 シモーヌ・シニョレは,やはり,アンリ・ジョルジュ・クルーソー演出の怖い映画に出演しています。 「悪魔のような女」(1955)は,宣伝の割には,怖くなかったので,”残念でした” と記憶しています。 「嘆きのテレーズ」(シモーヌ・シニョレ,エミールゾラ原作,1952) の ラストシーン は忘れがたいね。 ところで,ヒッチコックのサイコ (1960) 覚えているかい。『さよならをもう一度』で若い男を演じたアンソニー・パーキンスの眼の底の動き。マザコンの極致。こわかったね。恐ろしかったね。 イブ・モンタンは,1991年,70歳で心臓発作により他界しました。だけど,20年以上たった今でも,ファンが大勢いるよ。私もその一人だけど。 66歳の時,初めて子供を授かったんだ。すごいでしょ。ところが,親子関係を巡ってもめごとが起き,裁判になったよ。結局,お墓の中の彼氏を掘り出して,DNA鑑定をやったそうだよ。どんな結末だったか,記憶にないんだけれど,さすがはフランス,日本では考えられないことだね。第一,ご遺体は日本では火葬されますから。 そういえば,パレスチナのアラファト議長も,毒殺の疑いを確かめるため,同じように墓堀が行われたそうだよ。最終結論がどうなったか知りません。
by yojiarata
| 2013-11-18 19:47
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