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Charlie Brown に学ぶ



大学で助手(現在は,助教とよばれている)になりたての頃,所属していた研究室に,カナダからの留学生が来ていた。彼氏からは,実に様々なことを学んだが,その一つがチャーリー・ブラウンと仲間たちが登場するPEANUTS である。

すっかりファンになった筆者は,シリーズの最初から収集し,その後,仕事でアメリカに滞在していた頃,見つけるとすぐに購入し,かなりのコレクションとなった。

次に掲げるには,我が家の本箱から取り出した「シリーズの第1作(1950年)」と「第2作(1952年)」の表紙である。今となっては,入手困難,希少価値がある。

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その頃,研究室の装置(アメリカ製)の修理に時々やってくるアメリカ人のエンジニアー A.G. さんのことをふと思い出す。

毎日デイリーニュースをいつも持って歩いているのを見て,なぜ,毎日デイリーニュースを読むのかの筆者の問いに答えて,PEANUTS が載っている新聞は日本では毎日デーリーニュースだけだと言った後,

That's the only reason why I read Mainichi everyday.

と付け加えたのを,今でも,懐かしくも可笑しく思い出す。あれから50年近くが経つ。

筆者も,PEANUTS から多くのことを学んだ。回を重ねるたびに,ユーモアの質が上がり,Charles M. Schulz 亡きあとの今も書き継がれている。

学んだことの一つが,claustropobia なる表現である。狭いところに押し込められると,動悸がして耐えられなくなる ”閉所恐怖症” である。高所恐怖症 はacrophobia。pantophobia (作中の造語,panto とは何でも彼でもの意)。

malpractice lawsuit

医師による,誤診,手術の失敗などを訴える,日本では今ではごく普通になったが,アメリカでは50年近く前,すでに深刻な社会問題になっていた。

友達が転んだのを手を取って助け起こそうとするライナスを, 「malpractice lawsuit に巻き込まれるから,よしなさい」と姉のルーシーが止める場面が可笑しい。


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突然話題を変え,横溝 正史(よこみぞ せいし,1902年(明治35年)5月24日-1981年(昭和56年)12月28日)について書く。何故横溝正史かは,続きを読んでいただければすぐわかる。

「本陣殺人事件」,「獄門島」,「八つ墓村」,「犬神家の一族」,「女王蜂」,「悪魔が来りて笛を吹く」

などの作品を,我が家で購入していたキングなどの連載に胸を躍らせていたのは,中学に入りたての頃である。何にでもすぐに感動し,夢中になる筆者の性格はすでに当時からあったようである。

本陣殺人事件は,『三本指の男』の題名で映画になった。金田一耕助を演じたのは,時代劇の王様・片岡千惠藏(明治36年(1903年)3月30日-昭和 58年(1983年)3月31日,本名は植木 正義)。

血染めの手形をじっと見た彼が口の中で呟くように発するあの声。

”この手形には指紋がありませんね”

の一言を,まるで昨日のように覚えている。

『三本指の男』 (1947年)
東横映画
監督:松田定次

金田一耕助:片岡千恵,一柳賢蔵:小堀影男,一柳隆二:水原洋一,一柳三郎:青山健吉,一柳鈴子:八汐路恵子,一柳糸子:杉村春子,一柳良介:上代勇吉,久保克子:風見章子,久保銀造:三津田健,久保お徳:松浦築枝,白木静子:原節子,三本指の男:片岡千恵蔵。


その後,横溝作品は一時ブームになり,様々な俳優が金田一を演じたが,筆者は,いまでも,片岡知恵蔵がベストだと思っている。


***


横溝正史は薬剤師の資格を持っていたが,小説では,それが生かされたという記憶がない。彼は,江戸川乱歩とともに,戦前,戦後の探偵小説界のリーダーであった。

突如,チャーリー・ブラウンから横溝に話題を転じたのは,彼が重度の閉所恐怖症だったからである。

一人では外出できず,どうしてもというときは,酒入りの水筒を抱きかかえ,奥方としっかりと手をつないで自動車で出かけたという。

結核にも苦しめられたが,戦後輸入されたストレプトマイシンのお蔭で命をつないだ。1981年結腸ガンのため死去。享年79。

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片岡知恵蔵は,1946年(昭和21年),現代劇 『七つの顔』 で「多羅尾伴内」を演じる。「多羅尾伴内探偵シリーズ」は,第1作 『七つの顔』 につづき,『十三の眼』, 『二十一の指紋』, 『三十三の足跡』まで大映で,そのあと,東映で1960年(昭和35年)まで,計11本製作された。

次の作品をドキドキと心待ちにし,結局全作品を観た。第1作 『七つの顔』 がDVDになっているのを知り,直ちに購入した。今見ても,映画作品として全く古くない。


付記

日本航空(JAL)は2012年1月15日,臨時取締役会を開き、植木義晴専務執行役員(59)を社長に昇格させる人事を発表した。植木新社長は,片岡千恵蔵のご子息である。
by yojiarata | 2013-04-24 14:56
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