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MRI 第8話


2.13 移動可能な MRI 装置の開発


荒田

巨瀬さんは,移動可能なMRI 装置の開発にも力を入れておられると理解していますが,どのような場面に応用できるのでしょうか。脳梗塞などの緊急医療にも利用できる可能性がありますか。

巨瀬

屋外における植物計測(果実や樹木)が,今のところ一番有効だと思っています。一方,脳梗塞をMRI などで,発症後数時間以内に早期診断できれば,血栓溶解術により治癒できる可能性がありますが,このために使用する患者さんのところまで運べるMRI は,必ずしも必要ではありません。というのは,重い磁石を運ぶよりも,患者さんを運んだ方が,遙かに速いことと,脳梗塞の確定診断には,エコープラナー法という超高速撮像法と,拡散強調イメージング手法が必要であり,小型で移動型の装置で実現するのは難しいからです。

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果実計測用モバイルMRI


荒田

スポーツ医学への応用なども可能なような気がするのですが,いかがですか。

巨瀬

トップアスリートをどのように強化していくかというテーマなどには使いにくいかも知れませんが,スポーツに伴う障害の早期発見などには,役に立つと思います。すなわち,野球の投手などは,痛くなってからではなく,普段から,肘や肩のMRI 検査は,定期的にやっておくべきだと思います。放射線被曝もありませんし,検査コストも決して高くないので,プロ野球の投手は,日頃から,健康管理の一環として,そのような検査を受けておくといいと思います。一流投手が,肘や肩を痛めると,1年で10億円くらいの年俸が,全く無駄になってしまいますので,もっとこまめにMRI を撮像しておけばいいのに,と思ったりします。

一流の競走馬が,しばしば屈腱炎という病気で引退し,競馬界の大きな損失になるので,それを予防するために,競走馬用のMRI を開発して欲しいという依頼もありました。さまざまな理由で実現はしませんでしたが,海外では,馬の脚用の専用のMRIが販売されており,既に50台以上売られたと聞いています。

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つづく

by yojiarata | 2012-05-27 14:00
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