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播磨の森にある大型放射光施設スプリング-8  Ⅵ


第Ⅵ話 つくばのPhoton factory (PF) との比較


荒田

ところで,SPring-8はつくばのフォトンファクトリー(Photon Factory,以下PFと略称)とどこがどう違うのでしょうか。

宮野

造った時代が違う。

エネルギーが違う。

エミッタンスが違う(細い)。これによって,膜タンパク質など,結晶が大きくなりにくく,回折しにくい結晶ほど差が歴然とします。

強さ(光の密度)が違う。

安定性が違う。

タンパク質結晶解析についていえば,日本の技術でできているSPring-8と国際標準ということでできているPFと極論できるかもしれません。

荒田

私が,1970代のはじめ,スタンフォードにいた頃,なんだかやたらに大きな物を山の方に作っていたのを記憶しています。あれは,SPring-8の昔版でしょうか

宮野

スタンフォード大学の西隣にあるSLAC(Stanford Linear Acceralater Center)のことですね。昔版という表現は言い得て妙です。SLACは歴史的に高エネルギー物理の中心の一つで,放射光施設というのはその出自から発展においていつも高エネルギー物理の恩恵から発展しています。そして,このSLACにもSSRL (Stanford Synchrotron Radiation Lightsource) というれっきとした伝統ある放射光施設があり,今も活躍しています。

そして,その先進性ということでいえば,X線レーザーを世界で初めて一昨年の春に成功したのは,ここSLACにあるLCLSです。日本のSACLAもドイツに建設中の
European XFEL
も原理は同じです。SSRLは,やはり第2世代とよばれ,フォトンファクトリー同様,生命科学の先端のターゲットであるGPCRの膜タンパク質,リボソームのような巨大タンパク質複合体結晶のスクリーニングに使われて,構造決定に使う回折データを取ろうという実験の本番は,マイクフォーカスビームラインとよばれる,より強く細いビームが使える第3世代の放射光施設のAPSとかESRFにいくようです。

マイクフォーカスビームラインは,スイスのポールシェラ−研究所(Paul Scherrer Institut PSI)にあるSLS(Swiss Light Source)とか,イギリスのラザフォードアップルトン研究所(Rutherford Appleton Laboratory RAL)にあるDLS(Diamond Light Source)にも建設されています。これらの放射光施設は,新しく、SLSはSPring-8と協力して真空封止アンジュレーターを開発しており,エネルギーは3GeV程度ですが,すべての光学性能が上がっていますので3.5世代とよばれることがあります。


つづく

by yojiarata | 2011-07-28 17:30
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